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惜しくもサイヤング賞を逃したダルビッシュ有 記者1人だけが彼を5位以内に選ばなかった謎

菊地慶剛スポーツライター/近畿大学・大阪国際大学非常勤講師
3人の1位票を獲得したもののサイヤング賞受賞を逃したダルビッシュ有投手(写真:USA TODAY Sports/ロイター/アフロ)

【2度目の2位に終わったダルビッシュ投手】

 全米野球記者協会(BBWAA)は現地時間の11月11日、両リーグのサイヤング賞受賞者を発表し、ア・リーグはインディアンズのシェーン・ビーバー投手、ナ・リーグはレッズのトレバー・バウアー投手がそれぞれ初受賞した。

 同賞の最終3候補に入っていたツインズの前田健太投手、カブスのダルビッシュ有投手の日本人初受賞は叶わなかったが、いずれも2位に入った。

 日本人投手として初の最多勝タイトルを獲得したダルビッシュ投手は、バウアー投手とともに同賞の有力候補と言われていたが、2013年に続いての2位となった。

【3人の記者がダルビッシュ投手を1位に】

 サイヤング賞の選考方法は、BBWAAに所属する30人の記者による投票によって決まる。

 各投票者は1位から5位までを記入でき、1位票は7ポイントで、以下2位票4ポイント、3位票3ポイント、4位票2ポイント、5位票1ポイントが与えられ、総得点が一番高かった選手が受賞者となる。

 ア・リーグに関してはビーバー投手が満票で1位票を獲得し、堂々の受賞となったが、ナ・リーグは1位票が割れ、バウアー投手が27人、ダルビッシュ投手が3人の1位票を得ている。

 1位票が割れていたとはいえ、やはりバウアー投手により多くの1位票が集まったことが、両者の分かれ目になってしまった。

 ただ2013年の際には、ダルビッシュ投手は1位票を得ることができず、受賞者のマックス・シャーザー投手と110ポイント差をつけられていたが、今回はバウアー投手と78ポイント差に詰め寄っており、前回以上の評価を受けていたことが理解できるだろう。

【得票率で3位のデグロム投手を下回る】

 ただ今回の投票結果に、ちょっと気になる点がある。ダルビッシュ投手の得票率だ。

 バウアー投手は1位票27人、2位票3人を獲得し、全30人の記者から票を得ており、得票率は100%だった。さらに総得点で3位に入ったジェイコブ・デグロム投手も、2位票3人、3位票23人、4位票4人を得て、得票率100%になっている。

 だがダルビッシュ投手は、1位票3人、2位票24人、3位票2人で、29人の記者からの得票に留まっているのだ。つまり今シーズンのダルビッシュ投手の活躍を持ってしても、ナ・リーグ内の5人に入らないと判断した記者が1人いたというわけだ。

 もちろん投票者は自分の考えで自由に投票できる。だがダルビッシュ投手は最多勝タイトル以外でも、防御率は2.01でバウアー投手に次いでリーグ2位、奪三振数が93で同4位タイ、さらに投球イニング数が76.0で同3位と、投手の主要部門ですべてリーグ5位以内に入っている。なぜ彼が5人の中に入れなかったのか、どうしても疑問が生じてしまう。

 ダルビッシュ投手に投票しなかった記者の名前をこの場で公表するつもりはないが、誰もが彼の説明を聞きたいところだろう。

スポーツライター/近畿大学・大阪国際大学非常勤講師

1993年から米国を拠点にライター活動を開始。95年の野茂投手のドジャース入りで本格的なスポーツ取材を始め、20年以上に渡り米国の4大プロスポーツをはじめ様々な競技のスポーツ取材を経験する。また取材を通じて多くの一流アスリートと交流しながらスポーツが持つ魅力、可能性を認識し、社会におけるスポーツが果たすべき役割を研究テーマにする。2017年から日本に拠点を移し取材活動を続ける傍ら、非常勤講師として近畿大学で教壇に立ち大学アスリートを対象にスポーツについて論じる。在米中は取材や個人旅行で全50州に足を運び、各地事情にも精通している。

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