長友佑都が成し遂げた偉業…「あなたは愛された」 伊記者の手紙にみる敬意と愛情
最終選考に漏れる可能性もささやかれていた。起用の是非を巡る議論は尽きなかった。だが、ふたを開けてみれば、長友佑都はカタールの地で見事な存在感を発揮した。ピッチでのパフォーマンスに加え、ロッカールームの中でチームに及ぼした影響は、多くの人が認めるところだ。
インテルのサポーターには、おなじみの光景だったのではないだろうか。2010-11シーズン途中にチェゼーナから移籍し、2017-18シーズン途中にガラタサライへ移籍するまでの7年間、長友は世界的名門クラブでじつに210試合もの公式戦に出場した。
決して順風満帆な7年ではなかった。地位を高めては、監督交代を機に序列が下がった。放出の可能性を報じられたのも一度や二度ではない。それでも、崖っぷちに立たされるたびに、彼は自らの努力で周囲に力を認めさせた。
時に激しい批判を浴びせられ、何度となく苦境に追いやられ、それでもインテル愛を強調し、多くの同僚とファンに愛された長友。8年にわたってカルチョの国で戦い、特にビッグクラブで7年という実績は、偉業と呼ぶにふさわしい。
12月3日の『Gazzetta dello Sport』紙の別冊『Sportweek』に掲載された、同紙のルイジ・ガルランド記者の手紙は、あらためてそう感じさせてくれる。
日付は11月28日。日本がドイツを下すもコスタリカに敗れ、ワールドカップの決勝トーナメントに駒を進められるか分からなかったときだ。ガルランド記者は、どのような結果になろうと、ドイツ戦勝利の偉業は変わらないとし、次のように記した。以下、拙訳・抄訳ながらご紹介したい。
日本がスペインも下し、2大会連続の決勝トーナメント進出を果たしたことを、ガルランド記者は喜んでくれただろう。クロアチア戦当日の『Gazzetta dello Sport』紙の動画記事でも、同記者は日本に賛辞を寄せていた。
2010年にイタリアのクラブとして初となる3冠を達成したインテルだが、その後は苦しんだ。2012-13シーズンからは6シーズンにわたり、チャンピオンズリーグの舞台にも出られず。長友がインテルで欧州最高峰の大会を戦ったのは、最初の2シーズンだけで、出場10試合にとどまった。
長友がインテルで獲得したタイトルは、シーズン途中に加入した1年目のコッパ・イタリアだけだ。在籍期間中のインテルが、黄金期を過ぎて下り坂にあったことは否めない。それだけに、インテルでの長友の実績を偉業と呼ぶことに否定的な声もあるかもしれない。
だが、『Gazzetta dello Sport』紙のフランチェスコ・セッサ記者は、クロアチア戦を前にした記事で、「インテルで210試合出場は、偶然ではない」「時にその存在を軽んじられながら、いつも彼はいた」と、長友の実績を過小評価すべきでないと記した。
大きな敬意と愛情がうかがえるガルランド記者の手紙は、長友が日本人選手として有数の実績を残し、カルチョの歴史の1ページを刻んだことを表している。
そんな偉業を成し遂げた選手が、精魂込めて戦ったワールドカップを終え、今後についてゆっくり考えたいと話した。心から、本人が納得できる答えが見つかるのを願うばかりだ。