約2kmの海中散歩!日本最長の歩行者用の海底トンネルが川崎にあった
海のなかを通る「海底トンネル」。
なかでも、歩行者や自転車が通れる専用通路「人道(じんどう)」は日本に5つしかないことを知っていますか?
【日本の海底トンネル人道】
・関門トンネル人道
・衣浦トンネル人道
・黒部漁港 海底地下道
・新潟みなとトンネル
・川崎港海底トンネル人道
門司港と下関港を結ぶ「関門トンネル人道」は、「壇ノ浦の戦い」があった関門海峡をまたぐトンネルとして有名です。観光ついでに歩いたことがあるという人も多いかもしれません。私も歩いたことがあります。
一方、今回注目したいのは「川崎港海底トンネル人道」。日本の海底トンネル人道のなかで最も都心に近く、最も長いのがこのトンネルなんです。
関門トンネル人道が780mに対して、川崎港海底トンネル人道はなんと、約2.5倍の1,965m。約2kmにもおよぶ海底トンネルなんて、想像もつきません……。歩きに行ってみることにしました。
海底トンネル人道の入口、「ちどり公園」へ
川崎駅からバスに揺られて約20分。臨海部の工場地帯にある「JERA川崎火力発電所前」で降りると、さっそく海底トンネル人道への案内板がありました。ここから歩いてトンネルを渡る人も多いのでしょうか。
道なりに進むと、車道のまんなかに「川崎港海底トンネル」の看板が。車はこの少し先から海底に潜っていきます。
人間はもう少し、地上を歩きます。
公園に入る道中、このあたりで車の走行音がぴたっと止まりました。どうやら隣の車道はすでに海底に沈んだようです。
トラックの大きな走行音が聞こえない工場地帯は新鮮です。鳥のさえずりがどんどん大きくなっていきます。しかし、雑木林の反対側は有刺鉄線。自然と人工が拮抗している感じがしました。
海底トンネル人道への案内板はあちこちに細かく設置されているので、迷うことはないでしょう。
ちどり公園に到着しました。
入口をいったん通過してみます。
公園の奥には、ひらけた海が!
だばだばと強く波が打ち付けられていました。工場地帯の運河らしい、深く、力強い海です。ほとんど人が来ないので、海を眺めたい人の穴場スポットかもしれません。
いざ、海底トンネル人道へ!
少し戻って、いよいよ海底へ。
……と、ここから先は撮影禁止エリアとなります!
本当は人道内の景色をお見せしたいところですが、ぜひみなさんも直接行って体感してみてください。
人道内の様子はテキストで実況します。
●まず最初に気になったのは、構内に鳴り響く「ここは歩行者専用通路です。自転車は降りて歩行してください。」のアナウンス。1分に1回くらい大きな放送が2kmのトンネルに鳴り響きます。それでも、爆走する2台ほどの自転車に追い抜かれました……。降りずに走行する人が絶えないようです。
●人道のすぐ隣には車道があります。30mに1つくらいの間隔で、「この先車道」と書かれた扉がありました。防音されているようで、車の走行音はうるさくないですが、ドドドと腹に響くような音は感じました。
●さすが海底トンネル、安全対策は万全です。これまた30mに1つくらい、火災報知器がありました。一酸化炭素検出装置、非常電話、防犯カメラ、土嚢袋などもあります。そうは言っても、海中の1本道。ここで火事があったら、浸水したら、犯罪があったら、どう逃げようか、どう助かろうか……。ついそんなことを考え、シミュレーションしながら歩いてしまいます。
●トンネル内は緩やかな下り→上りのV字構造になっています。赤い地面に、黄土色の壁と天井。単調で永遠に続きそうな四角形の空間を進みます。
●海のなかですが、地上よりむしろカラッとしていて、乾燥している空気に感じました。
そして、歩くこと15分……
東扇島側の人道出口に到着しました!
地上へとつながる階段を上っていきましょう。
川崎港海底トンネル人道の東扇島側の出入口、「東扇島北公園」に到着です!
トンネルを抜けた先にあるものとは
出口のすぐそばには海が広がります。近づいてのんびりしたいですが、目の前はトラックがびゅんびゅん通る工場前の車道ですので、十分に注意しましょう。
人道入口には隣接する建物がありました。津波避難施設に指定されているようですが、外も中も朽ちていて、廃墟になっていそうな雰囲気。災害時には活躍するのでしょうか。
東扇島はほとんどが工場地帯。普段あまり工場に縁のない人にとっては、物珍しいダイナミックな光景があちこちに広がっていたり、コンビニでは工場地帯ならではの軍手や靴がたくさん販売されていたりと、非日常な散歩ができる場所です。
また、東扇島には「川崎マリエン」という展望台を有するコミュニティー施設もあります。ここから川崎駅までのバスも出ているので、川崎マリエンをゴールに散歩してみるのもいいかもしれません。
今回は気軽に行ける日本一のスポット、「川崎港海底トンネル人道」を紹介しました。あなたもさくっと、日本最長の海中散歩を体験しにいってみてはいかがでしょうか。
逃げも隠れもできない海中の1本道、「何かが起こったらどうしよう」と考えながら歩くのも、案外楽しいものですよ。
マニアックなスポットへの散歩や旅に興味のある方は、ぜひフォローしてくださると嬉しいです! ではまた次の旅で。