中高校生がサイバー犯罪に手を染める!?【第二報】
前回、高度な技術力が必要なように思える、不正アクセス手法を駆使し、サイバー攻撃を行うことが、実はごく普通の中高校生でも可能な事を説明し、犯罪者とならない情報通信やコンピュータに関する倫理教育の必要性を説きました。今回、上記記事を書くキッカケとなった兵庫県相生市在住の高校生について述べましょう。先日、産經新聞にて、この高校生が書類送検されるまでのいきさつが掲載されました。
私は直接、この少年に会った事はなく、供述を取る事も出来ませんでしたが、直接捜査を担当した警察部局、および取材を行った新聞、テレビの記者たちからの情報を元にして、さらにこの書類送検された高校生の一連の投稿内容から、この記事を書いています。
まず、上記新聞記事の「公安を震撼させた少年ハッカー」というタイトルは、「震撼」が「恐れ戦く」というニュアンスであれば、正確ではなく、「単に(怒り)震えた」というニュアンスであれば、あながち間違いではないようです。当初、「自分がアノニマスと同じように振る舞うことができる!」というような、あまりにも無邪気な内容の書き込みから、「マルウェアを自在に扱う事が出来る」というような内容で、事実か否かは不明ですが、不特定多数への攻撃を示唆するような書き込みがあることから監視対象になり、書き込みだけを信じれば、マルウェアをダウンロードし、自身のサーバに保有していることが確実視されるようになって、掲示板やツイッター等の書き込みも過激さを増したことから、監視対象から1年半経った、すでに高校生になっている容疑者の自宅を捜査し、パソコン類を押収したのです。その半年後に書類送検されましたが、兵庫県警公安部が書類送検に至った目的と、なぜ自宅捜査直後ではなく、半年も経った後に書類送検となったのかということです。
まず、なぜ「公安」なのかということです。一般にサイバー犯罪とよばれる対象に対しては、県警等では、「生活安全課」あるいは「サイバー犯罪対策課」と呼ばれる部署が対応します。特に青少年犯罪であれば凶悪犯でない限り、「生活安全課」が対応します。今回は「公安部」が担当しています。これは「サイバーテロ」に属するような犯罪に至る可能性が高いと判断されたからです。正確には「サイバーテロ」を起こそうとしていると判断したのではなく、「アノニマス」という言葉も頻出し、多種のマルウェアを使用目的不明のまま所持している可能性が高いゆえに「公安部」が対応したのです。なぜ書類送検をしたのかということですが、最大の理由はマルウェアの使用等による社会混乱を未然に防ぐ事が最大の目的です。もちろん、直接的にはマルウェアを所持していた事ですが、それ以上に、不正な利用の可能性が高まったと判断したため、未然に食い止め、容疑者への猛省と犯罪行為である事の自覚を促すために、検挙に至ったのです。
次に家宅捜査による証拠保全、つまり保持していたマルウェアや不正アクセスツール、それに通信記録(ログ)を確保したにもかかわらず、書類送検までに半年かかっているのかということですが、簡単に言えば、それらの証拠の解析に時間が必要だったのです。たとえば、容疑者がマルウェアらしきものを保持していたとしても、それが実際に動作するものであるか否かを解析しなければなりません。これが、それほど簡単ではないのです。通信記録も含めて、必要十分な解析を行う時間が半年だったのです。