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大谷翔平を巡るポスティング改定交渉 強硬なMLBへの「特例逆提案」はもっと強気で良い

豊浦彰太郎Baseball Writer
(写真:ロイター/アフロ)

大谷翔平のメジャー移籍を背景に、日米間でポスティング制度改定に向けた交渉が行われている。MLB側は二つの案を提示し「その中から選択せよ」と例によって高飛車なスタンスを取っているが、それに対しNPBは「大谷特例」の逆提案を視野に入れるなどしたたかさも見せているようだ。良いことだと思う。

日本が強気提示か ハム大谷にポスティング“専用ルール”案(9月24日 日刊ゲンダイ Digital))

MLBの二案とは、旧所属球団への譲渡金を対象選手の契約総額の15%をとする案と、契約総額が1億ドル未満か否かで定率(15%)か定額(2000万ドル)か変動するというものだ。MLBにとっては、NPB球団へのポスティングフィーは本質的にムダ金だ。現状ルールだとサイレントオークション形式なので、ちょっと有望な選手なら交渉のテーブルに付くためにまずは2000万ドルを提示しなければならない。対象が大谷翔平なら2000万ドルは当然だが、これが菊池雄星あたりだとやや微妙だ。しかし、それでもスタートラインに立つには2000万ドルを指さねばならない。これが、新案だとどっちにしても、あくまで選手との契約総額がベースで、ポスティングフィーはそれに応じ変動するだけだ。選手との契約条件と球団に支払うポスティングフィー、この主従の関係に関して言えば、彼らにとっては二つの新案の方が理にかなっていると言えるだろう。

また、これを今回の大谷のケースに当てはめると、「25歳以上&プロ経験6年以上」の規制に引っかかるため、彼が手にすることができる条件は最大でも約1000万ドル(MLB内の各種規制により、これが提示できる球団も限られている)だ。それだと、どっちに転んでも日本ハムが手にできる金額は「雀の涙」だ。

しかし、二者間(この場合はMLBとNPB)で運用される制度とは、両者の合意があって始めて成立するものだ。改定を希望する側が「(自分たちの提示する)二案のどちらかから選べ」というのは随分横柄だと思う。日本は野球界に限らずアメリカにはからきし弱い。交渉の要である大谷という「商品」をしっかり握っているはずのNPBが、前回(2013年オフ)の改定時同様に、終始MLBペースで押し切られるというシナリオを懸念していたぼくとしては、一安心だ。

NPBは「大谷特例」を主張するなら、「大谷に関しては2000万ドル」ではなく、そこを落としどころとするなら「大谷に関しては(前回の改定以前の)まずは上限なしでポスティングフィーの入札で、最高額の球団のみが交渉権を得る」くらいを吹っ掛けた方が良いと思う。

Baseball Writer

福岡県出身で、少年時代は太平洋クラブ~クラウンライターのファン。1971年のオリオールズ来日以来のMLBマニアで、本業の合間を縫って北米48球場を訪れた。北京、台北、台中、シドニーでもメジャーを観戦。近年は渡米時に球場跡地や野球博物館巡りにも精を出す。『SLUGGER』『J SPORTS』『まぐまぐ』のポータルサイト『mine』でも執筆中で、03-08年はスカパー!で、16年からはDAZNでMLB中継の解説を担当。著書に『ビジネスマンの視点で見たMLBとNPB』(彩流社)

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