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11歳が大統領選を斬る! 候補者の単独取材で「その辺の記者より冴えている」と賞賛の声

安部かすみニューヨーク在住ジャーナリスト、編集者
CNNに生出演したレポーターのジェイデンくん。(出典:cnn.com)

今アメリカで一番話題のジャーナリストはこの人。デトロイト在住のジェイデン・ジェファーソンくん(Jaden Jefferson)。年齢は11歳(9月から6年生)!

2020年の大統領選に向け各メディアの報道が徐々にヒートアップする中、11歳の男の子が、民主党の有力候補者エリザベス・ウォーレン上院議員(マサチューセッツ州選出)に単独取材を敢行し、「すごいジャーナリストが誕生した」と話題になっている。

ウォーレン氏は、「被害者である中流階級層」に寄り添う人物として知られ、昨年12月31日、自身のウェブサイトで次期大統領に立候補したことを発表した。大統領選に向けた野党・民主党の候補者によるテレビ討論会のために7月30日、デトロイトを訪れていた。

参照:

2020年の米大統領選を目指す、候補者一覧

一方ジェイデンくんは、YouTubeで『Jaden Reports NOW』を運営していて、Twitterでは2万人以上のフォロワーがいるスーパーキッズ。

大統領候補、ウォーレン上院議員に単独取材!

ジェイデンくんの「現政権で最悪の政策は何だと思いますか?」との質問に「(たくさんありすぎて)難しいわね。でも一番は、国境の親子引き離しの政策だわね」とウォーレン氏。

「人種間における機会均等についてあなたの政策は?」との質問に、「すばらしい質問ね」と前置きしながら、「連邦政府からの住宅購入の助成金は、公民権運動のときまで黒人層はその恩恵を受けられていなかった」といった歴史を詳細に説明しながら、「中流階級層でも住宅が購入しやすいように、ギャップを埋めたい。経済の発展につながるから」と自身の政策について熱意を語った。

このやりとりに対して、「すばらしいインタビューだった」「引き続きがんばって」「いつか大物になるのを楽しみにしているよ」と、オーディエンスから賞賛の声が次々に上がった。

大人の記者に混じってこの通り。「行け!ジェイデン」「未来はきみの手に」とフォロワーから次々に応援コメントが殺到。

その噂は日本にも。東京在住のアメリカ人記者も、ジェイデンくんの活躍を讃えている。

各メディアが今度はジェイデンくんを取材

TV生出演にも貫禄の受け答え

CNNニュースにも生出演。(見よ、この堂々たる受け答えを!)

ジャーナリズムに興味が湧いたきっかけは、幼少時に遡る。4歳のころ旅行中にNBC4レポーターと一緒に記念撮影をしたのが最初の記憶で、その後地元でお天気キャスターと出会ったことでテレビ業界にピンときたと言う。そして11歳になり、バスケットボールの試合をレポートし、本格始動したそうだ。

アナウンサーから「ところでサマーキャンプの季節だけど、あなたにとっては物足りないかな?」との問いに、「参加したことないね。僕は興味があることしかしないタイプだから。いつも大抵自宅でくつろいで、ニュースを観てるよ」と、子どもらしからぬ肝が据わった物言いのジェイデンくん。

取材をしたウォーレン氏の印象を問われると、「通常のジャーナリストとして向かい合ってくれて、僕のことを子ども扱いしなかったのがよかった」と高評価した。

出典:MSNBC
出典:MSNBC

MSNBCにも生出演。

大統領候補者へのインタビューの意義について問われると、「僕はただ候補者の紹介と啓蒙をしたいだけ」と、候補者に投票を仕向けるようなプロパガンダになってはならないなど、自身のジャーナリズムポリシーを明確にした。「政治トピックは難しいけれど、いつも僕にとっては新しく大きなイシューだから興味は尽きない」とのこと。

世の中では、子どもユーチューバーの良し悪しについてさまざまな意見が飛び交うが、学業との両立については、「来月学校が始まってしまうけど、バランスの問題だと思う。このような取材される側の活動も夏休みの間に集中している」と、特に問題はなさそう。

番組出演中にアナウンサーから「今日はご両親もスタジオに来ています」と紹介されたときに一瞬、子どもらしい表情に戻ったが、そのほかは、物言いも、話す内容も、そして見た目まで良識のある大人に見えてしまうほど、ジェイデンくんは落ち着きと自信、貫禄がある。

「未来はきみの手に!」

(Text by Kasumi Abe) 無断転載禁止

ニューヨーク在住ジャーナリスト、編集者

米国務省外国記者組織所属のジャーナリスト。雑誌、ラジオ、テレビ、オンラインメディアを通し、米最新事情やトレンドを「現地発」で届けている。日本の出版社で雑誌編集者、有名アーティストのインタビュアー、ガイドブック編集長を経て、2002年活動拠点をN.Y.に移す。N.Y.の出版社でシニアエディターとして街ネタ、トレンド、環境・社会問題を取材。日米で計13年半の正社員編集者・記者経験を経て、2014年アメリカで独立。著書「NYのクリエイティブ地区ブルックリンへ」イカロス出版。福岡県生まれ

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