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【F1日本グランプリ】鈴鹿・最速男ベッテルは週末のキーマン!

辻野ヒロシモータースポーツ実況アナウンサー/ジャーナリスト
セバスチャン・ベッテル 【写真:PIRELLI】

27回目の鈴鹿に日本のティフォシたちが集結?

9月27日(日)に三重県・鈴鹿サーキットで決勝を迎える「F1日本グランプリ」がいよいよ始まる。今年で鈴鹿の開催も27回目となり、成熟したファンたちによって鈴鹿は熱気に包まれるであろう。

そんな今年の日本グランプリで多くのファンが応援するのが名門「フェラーリ」だ。元々「フェラーリ」のイタリアンレッドのウェアに身を包んだファンは鈴鹿の観客席に多く見られるが、今年はキミ・ライコネンに加えて4度のワールドチャンピオンを獲得しているセバスチャン・ベッテルが加入したことから、フェラーリファン=「ティフォシ」の増加が見込まれている。

そんな中、前戦シンガポールGPではセバスチャン・ベッテルがポールポジションから堂々の優勝。キミ・ライコネンも3位表彰台を獲得するなど、「フェラーリ」が復調を見せての鈴鹿入りとなるため、ファンや関係者のトーンも非常に高い。やはり、フェラーリが強いとF1は盛り上がるというのはF1の歴史上の定説であり、フェラーリの2人のドライバーが作り出すペースに金曜日のフリー走行から注目が集まるだろう。

前戦シンガポールで3勝目をあげたベッテル

2014年のパワーユニット(PU)新規定をリードし続けてきた「メルセデス」の勢いが初めて大きな陰りを見せた前戦シンガポールGP。市街地サーキットであり、F1の全19戦の中でも中低速コースになる同サーキットでは「メルセデス」が誇ってきた圧倒的なパワーはアドバンテージとならなかった。

それどころか、ルノーとの不協和音でチームの今後について様々なゴシップが流れる「レッドブル」の先行を許し、さらに進化を続ける「フェラーリ」にも先を行かれ、予選では3列目からのスタート。決勝でもさほど目立つところがなく、表彰台は第10戦ハンガリーGPに続いて再び「メルセデス」の2人(ハミルトン、ロズベルグ)が居ない光景になった。今回ばかりは潮目が変わったと言われてもおかしくない象徴的な表彰台だったと言える。

シンガポールGPの表彰台。中央がベッテル 【写真:PIRELLI】
シンガポールGPの表彰台。中央がベッテル 【写真:PIRELLI】

「フェラーリ」は今季、マレーシアとハンガリー、そして前戦シンガポールでセバスチャン・ベッテルが優勝を飾っているが、特に第12戦イタリアGP(モンツァ)から復調の兆しが鮮明になっている。新開発のパーツを加えるトークンを使用して、F1カレンダーの中でも屈指の高速コースでも「メルセデス」との差を詰めたと言うことは、同じく高速コースの部類に入る鈴鹿サーキットでの速さに期待が膨らむ。

ベッテルは「レッドブル」時代に鈴鹿で開催された6回のレース中、優勝4回。さらに優勝できなかった2011年、2014年も3位に入賞し、今のところ表彰台の皆勤賞。ポールポジションも4回獲得している、まさに「鈴鹿・最速男」なのだ。そのおかげで、近年はベッテルを応援するファンが鈴鹿に急増。今年は真紅の跳ね馬に乗る彼を応援する日本のティフォシの声援が大きな後押しとなるはずだ。

負けられないハミルトンとロズベルグ

ベッテルに注目が集まるとはいえ、今季のシーズン全体を通して言えば、やはり主役は「メルセデス」のルイス・ハミルトンとニコ・ロズベルグになるだろう。

シンガポールGPを終えて、ランキング首位はハミルトンの252点。2位にロズベルグの211点(首位から41点差)、3位に「フェラーリ」のベッテルが203点(首位から49点差)となり、6戦を残してチャンピオン争いはこの3人に絞られた。シンガポールGPでパワーユニットのトラブルにより今季初のリタイアを強いられたルイス・ハミルトンがノーポイントに終わったことで、ベッテルが大きく詰め寄ってきた。

これからアブダビGPまで続くフライアウェイ戦は気候も異なり、今季から復活するメキシコGPもあることから難しい条件が続く。それだけに、ルイス・ハミルトンはチャンピオン争いを有利に進めるために鈴鹿は是が非でも勝利しなければならない。また、条件的には難しいが、ロズベルグは残り6戦で全て勝利することでハミルトンを逆転できる計算になるので、自力でチャンピオン争いに残るには鈴鹿の勝利はロズベルグにとって必須条件だ。「メルセデス」の2人は優勢にシーズンを進めてきたものの、鈴鹿でも「フェラーリ」の脅威にさらされることになれば、黄色信号。負けられない1戦となる。

依然厳しい状況のマクラーレン・ホンダ

地元、日本への凱旋レースということもあり、ホンダがパワーユニットを供給する「マクラーレン・ホンダ」の活躍にも当然注目が集まる。前戦シンガポールGPではダブル入賞の可能性もあったが、フェルナンド・アロンソ、ジェンソン・バトンの2人共にギアボックスにトラブルが発生してリタイア。低速サーキットでは自力でポイント争いができるところまで来たが、パワーが重要な高速サーキットの鈴鹿では厳しい戦いを強いられると予想されている。

マクラーレン・ホンダは地元でどんな活躍を見せるか 【写真:PIRELLI】
マクラーレン・ホンダは地元でどんな活躍を見せるか 【写真:PIRELLI】

「熱エネルギー回生システム」で蓄電したエネルギーをどこで放出しパワーアシストとして使うか(デプロイメントという)にまだまだ研究開発の余地があり、今季はその部分がディスアドバンテージとなってしまっているホンダ。鈴鹿はアクセル全開率も高いので、かなり苦戦する可能性が高く、なんとか粘り強く完走を目指して来年につなげて欲しい。過度の期待は禁物だが、天候が崩れるという予報もあり、ホンダの地の利とドライバーの頑張りでポイント獲得に全力をあげて欲しい。また、現状に寂しさを感じるファンも多いと思うが、善良なファンならば後発ながら参戦したホンダの今後に期待し、日本人スタッフに温かい声援を送って欲しいものだ。

うごめくストーブリーグと今後

昨年はセバスチャン・ベッテルが突如、衝撃的な「レッドブル」からの離脱を発表したのが鈴鹿の日本グランプリだった。シンガポールGPから始まったフライアウェイ戦では、チーム首脳、ドライバー、そしてメディアが集結するパドックこそが噂の真相を整理する現場となる。

「レッドブル」の来季以降のPUサプライヤー、来季の「マクラーレン・ホンダ」のラインナップ、「ルノー」のチーム買収など今後のF1の気になる情報が明らかになってくる可能性がある。噂が噂を呼び、様々な情報がうごめくパドックの雑音に左右されず、大好きな鈴鹿を伸び伸びと走れるのは、やはりシンガポールの勝利でご機嫌さんのセバスチャン・ベッテルか?

F1日本グランプリの自由席となる「西エリア」チケットは既に完売。9月24日(木)はピットウォーク&サイン会が開催され、9月25日(金)から走行がスタートする。

準備が進められている日本グランプリの表彰台 【写真:MOBILITYLAND】
準備が進められている日本グランプリの表彰台 【写真:MOBILITYLAND】
モータースポーツ実況アナウンサー/ジャーナリスト

鈴鹿市出身。エキゾーストノートを聞いて育つ。鈴鹿サーキットを中心に実況、ピットリポートを担当するアナウンサー。「J SPORTS」「BS日テレ」などレース中継でも実況を務める。2018年は2輪と4輪両方の「ル・マン24時間レース」に携わった。また、取材を通じ、F1から底辺レース、2輪、カートに至るまで幅広く精通する。またライター、ジャーナリストとしてF1バルセロナテスト、イギリスGP、マレーシアGPなどF1、インディカー、F3マカオGPなど海外取材歴も多数。

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