Yahoo!ニュース

過去3年連続最下位のアスレチックスが快進撃、フラッグディールでは買い手に回る!

豊浦彰太郎Baseball Writer
オールスターにも選出されたブレイク・トライネンは今季躍進の象徴だ。(写真:USA TODAY Sports/ロイター/アフロ)

オールスターゲームも終わり、MLBは後半戦に入る。「後半戦」と記したが、実際には各球団とも162試合中100試合弱をこなしている。あくまで「区切り」としての後半戦だ。毎年球宴によるブレイク時の消化試合数は90試合くらいだが、今季はチト多い。これは、オールスターが例年7月の第2火曜日であるのに対し、今季は第3火曜日にセットされていたからだ。このことは、今季のスケジュールが発表された昨年9月の段階から不思議だなあと感じていたが、ぼくよりもメジャーに関し造詣が深い昔からの友人がその理由を教えてくれた。それはテレビの都合らしい。オールスターを放送したFOXは先日終了したばかりのサッカーのワールドカップのアメリカでの放映権も握っており、両ビッグイベントが被らないように、日程を調整させたのだというのだ。ナルホド!Tさん、ありがとう。

それはともかく、球宴が終わることは7月末のウェーバーを経由しないトレードデッドラインを控えたいわゆるフラッグディールがクライマックスに向かうことを意味している。すでに、最大の目玉だったオリオールズのマニー・マチャドをドジャースが釣り上げたというビッグニュースも流れている。

しかし、今季のフラッグディールで個人的に最も注目しているのは、マチャド以上にオークランド・アスレチックスの動向だ。昨季まで3年連続地区最下位で、今季開幕時点での年俸総額も全球団中最下位という弱小球団だが、6月中旬から絶好調。球宴前28試合は21勝7敗という全球団中トップのハイペースだった。その結果、ワイルドカード2位のマリナーズに3ゲーム差で、直接対決は10試合も残っている。4年ぶりポストシーズン進出の可能性は十分だ。ここ数年、フラッグディール(とストーブリーグ)では売り手に廻っていたが、ビリー・ビーン副社長は「今回は補強を図る」と明言している。

アスレチックスの躍進は突然変異ではない。中期的視点では、ここ数年取り組んで来た再建が身を結んで来たと言える。レギュラークラスを続々と放出したが、このことは若手の出場機会を創出し成長を促した。実は昨季も球宴以降の「後半戦」はほぼ5割で、17勝7敗でシーズンを終えている。

そして、今季の戦力的には、パワーヒッティングと強力ブルペンに負うところ大だ。球宴ブレイク前でのチーム本塁打数127本はメジャー全体でも6位で、二桁本塁打の選手がこの段階で7人もいる。リリーフ陣に関しては、ブルペン全体というより8回担当のセットアッパーであるルーキーのルー・トリビーノとクローザーのブレイク・トライネンの磐石ぶりゆえ、と形容したほうが良いかもしれない。なにせ、今季のA’sは7回終了時点でリードしていれば、38勝無敗と完璧なのだから(7回終了時リードなら無敗は、全球団中A’sのみだ)。

あと、足りないのは先発投手の駒数だけ。ただし、ビーンは貧乏球団の責任者らしく「エース級を狙うつもりなし」とハッキリとコメントしている。先発3〜4番手クラスの獲得を狙っていくようだ。

今季のアスレチックスは、2012年の同球団を彷彿とさせる。2011年のオフにトレバー・ケイヒルやジオ・ゴンザレスらのエース級先発投手やクローザーのアンドリュー・ベイリーを次々と放出しビーンは厳しい非難に晒されたが、開幕してみるとその交換相手のジャレッド・パーカーやトミー・ミローン、デレク・ノリス、ジョシュ・レディックらの若手が予想以上の活躍を見せ、見事に2006年以来の地区優勝を手にしたのだ。かと言って、この時も開幕から飛ばした訳ではない。本領発揮は夏場からで、シーズン最後の9日間で5ゲーム差をひっくり返しての大逆転劇だった。

ぼくには、今季のオークランドはそんな2012年の姿がダブってならない。その再現なるか否かは、残り10日あまりのフラッグディールでの成否に掛かっているように思える。

1世紀を超えるこの球団の歴史は、安住の地追求と栄枯盛衰の輪廻だった。黄金期を迎えサラリーが上昇するとスター選手を切り売りする、それを幾度となく繰り返した。そして、本拠地はフィラデルフィア、カンザスシティ、オークランドと移り変わり、今やオークランドでの存続も苦しい状況にある。今季は正にその球団史を象徴している。オークランド移転50周年は、新球場問題が閉塞状態にある中での転機の年となるだろうか。

Baseball Writer

福岡県出身で、少年時代は太平洋クラブ~クラウンライターのファン。1971年のオリオールズ来日以来のMLBマニアで、本業の合間を縫って北米48球場を訪れた。北京、台北、台中、シドニーでもメジャーを観戦。近年は渡米時に球場跡地や野球博物館巡りにも精を出す。『SLUGGER』『J SPORTS』『まぐまぐ』のポータルサイト『mine』でも執筆中で、03-08年はスカパー!で、16年からはDAZNでMLB中継の解説を担当。著書に『ビジネスマンの視点で見たMLBとNPB』(彩流社)

豊浦彰太郎の最近の記事