【茅ヶ崎市美術館】「アンクルトリス」生みの親・柳原良平氏の展覧会「柳原 良平 ごきげんな船旅」開催中
柳原良平氏(1931年~2015年)の世界観にどっぷり浸かれる「茅ヶ崎市×ホノルル市・郡姉妹都市友好協定締結10周年記念『柳原 良平 ごきげんな船旅』」が、茅ヶ崎市美術館で開催中です(~11/10<日>まで)。
柳原氏は、寿屋(現・サントリー HD)宣伝部でアンクルトリス(※)をはじめとする数々の広告イラストレーションを担当しました。また、船に対する造詣が深いことでも知られ、船旅や船そのものにまつわる絵や文章を多く残した多才な人物でもあります。
※アンクルトリス…広告内で使用されているとがった鼻が特徴的なキャラクター
同氏にスポットを当てた展覧会は公立の美術館では、実はこれまであまり実施されておりません。同展は氏の貴重な作品や仕事の数々、影響を与えた人物に至るまで、一堂に見ることができるまたとない機会となっており、“柳原流”のハワイをはじめとする海外旅行の楽しみ方を「船旅」にちなんだ作品から全3章のテーマに沿って紹介しています。
「トリスを飲んでHawaiiへ行こう!」。
この広告が発表された当時(1961年)は、まだ海外渡航の自由化前で、政府や会社の仕事、留学など、特別な理由がないと海外に行くことはできませんでした。そのため、この先進的なキャンペーンは、日本人のハワイへの憧れと期待を大きく膨らませました。
柳原氏といえば、切絵の作品が有名ですが、初期はポスターカラーで制作されていたそうです。こちらはトリスウイスキーのコンクールに出品して日本宣伝美術協会奨励賞を受賞した作品です。
のちに、上司のアドバイスで切絵手法に方向転換されたとか。
宣伝にはかなり力を入れていたという寿屋。
戦後の高度経済成長の時代、ウイスキーやバーは庶民にとっては敷居の高い存在でした。それを解消し、トリスウイスキーを広めるために、安価で利用しやすい「トリスバー」という酒場を全国各地に作られたそうです。
1章では、このように寿屋時代の作品の他、茅ヶ崎ではおなじみの開高健さん、山口瞳さん、山崎隆夫さんなど、柳原氏に影響を与えた人物を中心に作品を紹介しています。
「海外旅行」をテーマにした第2章「ボン・ボヤージュ! 柳原が見た船と港風景」。
同氏が初めて海外旅行に行ったのは1961年、海外渡航自由化前です。
その時に乗船したアメリカの客船「ラーリン号」での5日間の航海は、幼い頃から船への関心が高く、見るのも乗るのも大好きで無類の船好きである同氏にとって、特別な思い出となりました。
「船旅ではのんびりすることが最大の楽しみ。ゆっくり何もせず、気が向いたらスケッチをしたり、気ままに過ごすこと」が同氏にとっての船旅の醍醐味だといいます。
船での出来事や、船旅をのんびりと楽しむ様子が、作品には鮮明に描かれています。
1964年〜は海外渡航が自由化となりましたが、当初は富裕層中心の団体旅行が主流でした。そこから徐々にバリエーションが増えていき、多くの方が海外旅行へ行くことができるようになりました。そんな日本人の海外旅行の歴史や移り変わりも、展示で見ることができます。
第3章のテーマは「船に対する深い眼差し」。
実際に同氏が部屋に飾っていた船の模型や、それをモチーフにした絵画、客船だけではなく戦前の船やタンカーなどを描いた作品の他、同氏が出版した船に関する本や文章の一部など、「船」そのものにまつわる様々な作品を楽しむことができます。
「館内にはご機嫌な作品がたくさんあります。ご自身も船旅を楽しむような気持ちで展示を見ていただけたらと思います」(茅ヶ崎市美術館学芸員・小澤由季さん)
柳原さんの世界観を堪能した後、どうしても彼の作品を手元に置いておきたくなった私は、彼のイラストが描かれたハーバー(2個入り、ミニブック付き)と、アンクルトリスのピンバッチを購入しました。
芸術の秋、茅ヶ崎市美術館でゆかいで“ご機嫌な船旅”へ、出航してみてはいかがでしょうか?
<概要>
【開催期間】2024年9月3日(火)~11月10日(日)
【時間】10時~17時 ※入館は16時半まで
【休館日】月曜日(ただし9/16、9/23、10/14、11/4は開館)、9/17(火)、9/24(火)、10/15(火)、11/5(火)
【場所】茅ヶ崎市美術館
【料金】一般 800円(700円)、大学生 600円(500円) 市内在住65歳以上 400円(300円)
※高校生以下、障がい者およびその介護者は無料
※( )内は20名以上の団体料金
【主催】公益財団法人茅ヶ崎市文化・スポーツ振興財団
【展示協力】横浜みなと博物館、大阪市立中央図書館
【特別協力】(株)美術著作権センター
【後援】ハワイ州観光局
【問い合わせ】TEL0467-88-1177 茅ヶ崎市美術館