来春発売予定の「NT1100」、ライバルはずばり!?
アフリカツイン由来のクロスオーバーが誕生
ホンダが新型クロスオーバーツアラーの「NT1100」を欧州で発表した。クロスオーバータイプの長距離ツアラーでベースはCRF1100Lアフリカツイン。
最高出力102ps/7500rpmを発揮する水冷並列2気筒OHC4バルブ1084ccのエンジン(マニュアルミッションとDCTの2タイプを用意)やスチール製セミダブルクレードルフレームなどの基本骨格はほぼ共通で、オンロード用に最適化されたサスペンションと前後17インチキャストホイールに可変式ウインドスクリーンを備えた大型カウルを装備。
電子制御スロットルによる3種類のライディングモード(+2種類のカスタムモード)とABS、調整式のHSTC(トラコン)、タッチスクリーンタイプのフルカラーTFTディスプレイを通じたスマホとのコネクティッド機能などが搭載されたハイテクツアラーに仕上げられている。
またグリップヒーターやパニアケースを標準装備する他、オプションで大容量トップケースも用意されるなど、快適な旅の装備が充実していることも魅力だ。
NT1100は日本でも来春には発売予定とのことで、早くも2022モデルの台風の目となりそうだ。そこで今回はライバルと思わしき他モデルとの対決をシミュレーションしてみた。
【ホンダ NT1100 欧州仕様】
エンジン:水冷並列2気筒OHC4バルブ1084cc
最高出力:102ps/7,500rpm
最大トルク:10.61kg-m/6250rpm
車重:238kg(MT)/248kg(DCT)
ホイールベース:1535mm
シート高:820mm
筆頭は3気筒ファイター譲りの新型トレーサーか
筆頭はヤマハの「TRACER9 GT」だろう。元々はヤマハ十八番のクロスプレーンコンセプトの3気筒エンジンを搭載するスポーツネイキッド「MT-09」がベースのスポーツツアラーとして登場したが、マイナーチェンジを繰り返して長距離ツアラーとして進化。
その最新盤として2021年にデビューしたTRACER9 GTは同じく新型MT-09ベースの水冷並列3気筒DOHC4バルブ888ccエンジンから最高出力120ps/10,000rpmを発揮。車重220kgの軽量な車体と相まってツアラーらしからぬ俊敏なフットワークが持ち味となっている。
また、4種類の走行モードの他、6軸「IMU」によるコーナリング対応のABSやトラコンに加えKYB製電子制御サスペンションを採用するなど電制も最新だ。
スペックでNT1100と比べると、3気筒の高回転型エンジンでパワーでも大幅に上回るが、排気量が少ない分トルクでは104Nm/6,250rpmに対して93Nm/7000rpmとやや低め。ヤマハでは“Multirole fighter of the Motorcycle”(多用途戦闘機のような二輪車)をコンセプトとしていることからも、MT-09譲りの高いスポーツ性能を持った多用途ツアラーという位置づけであり、NT1100よりもよりアグレッシブな走りを強調した尖がったキャラと言えるかもしれない。
【ヤマハ TRACER9 GT】
エンジン:水冷並列3気筒DOHC4バルブ888cc
最高出力:120ps/10,000rpm
最大トルク:9.5Kgf-m/7000rpm
車重:220kg
ホイールベース:1500mm
シート高:810/825mm
4気筒パワーとスカイフックで圧倒するヴェルシス
もう一台がカワサキの「VERSYS 1000 SE」だ。「ANY ROAD ANY TIME」がコンセプトの長距離スポーツツアラーで、Ninja1000(Z1000)由来の直4エンジンによる強力な動力性能とSHOWA製スカイフックテクノロジーを搭載したロングストローク電子制御サスペンションが与えられ、ボッシュ製IMUによる電子制御ファンクションをフル搭載。
ワインディングから高速クルーズまであらゆる路面状況でパワフルかつ快適な走りを約束してくれる。エンジンは水冷並列4気筒DOHC4バルブ1043ccから最高出力120ps/9,000rpm、最大トルク102Nm/7500rpmを発揮。
スペック的にはパワーではTRACER9 GT、トルクではNT1100と同等レベルと3台中トップの動力性能を誇るが、一方で車重は257kgとけっこうなヘビー級。昨年SHOWAのテストコースで試乗したが、路面のギャップを何事もなかったかのようにいなしていくスカイフックの滑らかな乗り心地とカワサキらしい重厚な走りが印象的だった。
車両本体価格181万円の設定も含め、NT1100よりもワンランク上のポジションにあるモデルと言えるかもしれない。ちなみにTRACER9 GT は同132万円と高いポテンシャルの割に値頃感があり、NT1100の日本での予想価格は170万円を切る模様だ。
【カワサキVERSYS 1000 SE 】
エンジン:水冷並列4気筒DOHC4バルブ1043cc
最高出力:120ps/9,000rpm
最大トルク:10.4.kgf-m/7,500rpm
車重:257kg
ホイールベース:1520mm
シート高:820mm
意外な伏兵あり。ライバルを突き放す決め手はDCT
並列2気筒のNT1100に対し並列3気筒のTRACER9GT、そして並列4気筒のVERSYS 1000 SEときれいにシリンダーの数も分かれたが、同じ並列2気筒で見渡してみるとこのクラスには意外とライバルは少ない。
スズキ「Vストローム1050」やトライアンフ「タイガー850スポーツ」、KTM「890アドベンチャー」などオンロード寄りのアドベンチャーツアラーもあるにはあるが、いずれもオフロード色の強い冒険マシンからの派生モデルであって、最初からオンロードのみを狙ったクロスオーバーモデルとは出自が異なっている。
その中でアドベンチャーに特徴的なビーク(クチバシ)を持たず、前後17インチのキャストホイールを履いたクロスオーバーモデルとして思い当たるのはBMWの「F900XR」辺りだろうか。こちらはベースがネイキッドのF900Rなので完全なオンロード仕様。
エンジンはF850GSベースの水冷並列2気筒で最高出力105ps/8500rpmとNTと同等レベルで車重は223kgと軽量だ。走りの方向性としてはかなりスポーツ寄りではあるが、扱いやすさと高速巡行性能では定評があし、電子制御フル搭載の最上級プレミアムラインでも税込で140万円台とコスパ的にもかなり強力なライバルになり得る。
意外なところに伏兵ありかもしれない。
【BMW F900XR】
エンジン:水冷並列2気筒DOHC4バルブ894cc
最高出力:105ps/8,500rpm
最大トルク:9.38kg-m/6500rpm
車重:223kg
ホイールベース:1530mm
シート高:825mm
来春国内デビューする「NT1100」の走りは想像の域を出ないが、DCTによるオートマ感覚の走りは唯一無二のもの。その快適性が他のライバルを引き離すメリットになることは十分考えられる。2022年はクロスオーバーモデルに注目が集まりそうだ。
※原文より筆者自身が加筆修正しています。