安倍首相「消費税上げても大企業・富裕層に増税はダメ」443万回再生の動画が暴露、年金の「国家的詐欺」
金融庁のワーキンググループが「平均的な高齢者が退職後の30年間を生きる場合、年金収入だけでは2000万円不足する」「自助の充実が必要」との報告書をまとめた問題で、小池晃参議院議員(共産)が、安倍晋三首相を追及する動画がネット上で話題となっている。この動画は、大企業や富裕層への税率を上げ、それを財源に年金制度を立て直そうという国会でのやり取りを紹介したもので、今月10日にツイッターに投稿されてから、既に443万回以上、再生されている。
○443万回再生動画の中身
動画が紹介したのは、今月10日の参議院決算委員会での小池議員と安倍首相のやり取り。同委員会で、小池議員は、金融庁ワーキンググループ報告書について、「百年安心だと言っていたのが、いつの間にか人生百年の時代だから年金当てにするなと、自己責任で貯金せよと。国家的詐欺に等しいやり方ですよ」「この貧しい年金制度をどうするのかを真剣に考えるのが政府の責任なんじゃないですか」と追及。これに対し、安倍首相から「小池さんは、それをどうすればいいとおっしゃっているんでしょうか」と聞かれた小池議員が対案を述べるところから動画は始まる。
小池議員:
「だから、私たちはこれをしっかり底上げしようではないかと言っている。財源も、法人税について、大企業にせめて中小企業並みの基準で法人税の負担を求めれば、これ4兆円出てまいります。それから、株で大変なもうけを上げている富裕層の皆さんに平等に所得税を払ってもらう、そして所得税の最高税率を上げていく。これで3兆円の財源出てまいります。こういった財源を私ども示して、年金の底上げをやろうじゃないかということを提案していますから」
安倍首相:
「それは全く馬鹿げた、政策なんだろうと、こう言わざるを得ない。間違った政策だと思いますよ、それは。日本の経済自体が相当のダメージを私ははっきり言って受けると思います」
小池議員:
「実際、安倍政権になってから6%年金削っているんですよ。何を胸張って言っているんですか。さらに、これからだって、今、はっきり増えないと言ったけど、減るわけでしょう。マクロ経済スライドで。明らかに減るんですよ。それをこの報告書では正直に言ったのに、慌ててまた隠している。私はこういう姿勢こそが年金不安をあおっていくんだと思いますよ。やっぱり正直に認めるべきですよ。これから年金はどんどんどんどん目減りしていきますと。今の生活水準は保障できなくなりますと」
「私は、そういったことを正面から問うて、じゃ、F35に1兆円使うとか、そういったことが許されるのか。笑っている場合じゃないでしょう、菅さん。やっぱり税金の使い方見直さなきゃいけないでしょう。こんな貧しい年金で」
「何を平然とこれが将来世代のためだなんて言えるんですか」
「こんな年金の問題をそのままにしておいたら、それこそ将来不安をあおり、内需を冷え込ませ、消費を抑えていく。で、消費税を更に増税する。こんなことをやったら、日本の経済、大破綻になりますよ。私は、今必要なのは、税金の使い方、集め方を根本から切り替えて、大企業にもちゃんと物を言って、内部留保400兆円もあるんだから、しっかり負担をしてもらうべきじゃないですか。そして、株で大もうけをしている人たちには、所得1億円を超えるとどんどんどんどん所得税の負担が下がっていく、こんな逆転現象やめようじゃないですか。今回の金融庁のこの報告を機に私は真剣に考えるべきだと思いますよ」
○大企業・富裕層優遇の安倍政権
実際の国会中継を観てみると、安倍首相が「馬鹿げたこと」と言っているのは、マクロ経済スライド*をやめることについてであり、ツイッター上にあげられた動画のこの部分については、実際のやり取りを歪めた恣意的な編集だと言えよう。ただ、小池議員の「富裕層や大企業にかける税率を上げて年金の財源とすべき」という主張に対し、安倍首相は以下のように反論している。
「ただいまの財源については、それは全く私は信憑性がはっきり言ってないと思いますね、全然、それは。日本の経済自体が相当のダメージを私ははっきり言って受けると思います。言わば、経済は成長どころかマイナス成長になるかもしれないし、それによって税収はこれは逆に減っていくだろうし、これ、収入が減れば保険料収入は減っていくことにつながっていくんだろうと思います」
つまり、全体の文脈からすれば、ほぼツイッター上の動画の通りだとも言えるだろう。安倍首相は、大企業や富裕層への増税に対しては「日本の経済自体が相当のダメージを受ける」と否定的であるが、安倍政権が参院選後に行う消費税の税率引き上げは、GDPの6割を占める個人消費の落ちこみにつながり、日本経済に深刻な悪影響が及ぶと、多くのメディアや専門家から指摘されている。アベノミクスでの円安誘導の下、トヨタのように輸出の多い大企業は過去最高益を叩き出すものの、報道各社の世論調査では「景気の実感を感じない」との声が大多数、むしろ原材料費のコスト増などによる物価上昇の中で、実質賃金は低下し格差は拡大している。また、今回の金融庁ワークグループの報告書にも書かれているように、高齢者が年金だけでは生活できなくなること自体は、経産省の審議会など政府の他の報告からも明らかだ。安倍首相の姿勢が、「大企業・富裕層を優遇」「庶民に対しては冷淡」と受け取られているからこそ、小池議員とのやり取り動画に、注目が集まっているのだろう。
(了)
*マクロ経済スライド:
年金給付額の伸びを物価上昇率より0・9%分抑える仕組み。少子高齢化が進んでも年金財政を維持することが目的であるが、年金給付額は実質目減りする。