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“マッスル美女”の次は“ピラティス美女”へ!?中身も問われる韓国フィットネス市場

慎武宏ライター/スポーツソウル日本版編集長
レイヤンの指導のもとでダイエットに汗する韓国の女性たち(写真:ロイター/アフロ)

昨日、日本テレビで放映されていた『ダイエット・ヴィレッジ』。8人の一般参加者たちが計100キロのダイエットに挑戦するリアリティーショーは、ゴールデンタイムの放映だったのでご覧になった方も多いことだろう。韓国でもこの手のダイエットバラエティ番組は人気で、番組内に登場したスポーツトレーナーや栄養士が人気者になるケースが多い。

古くは番組内で100人のダイエットを成功に導いたショーン・リーが“韓流ダイエットキング”として一世を風靡したし、最近では地方局のスポーツトレーナーに過ぎなかったイェ・ジョンファがそのルックスで人気者となり、そのエクササイズ方法を紹介する番組まで持つようになったこともあった。以前、本欄でも紹介したが、韓国では“マッスル美女”やスポーツトレーナーたちが一夜にして人気タレント化してしまう土壌があるのだ。

そんな韓国で今、大きな脚光を浴びているのはヤン・ジョンウォンだ。韓国メディアの『毎日経済』などは、「ユ・スンオク→レイヤン→ヤン・ジョンウォン、超高速の世代交代」という見出しをつけて、2016年夏はヤン・ジョンウォンの夏になるとしている。“マッスル美女”ブームの火つけ役となったユ・スンオクや、上の写真で紹介している“脱アジア級スタイル”のレイヤンを押しのけて一躍注目株になっているヤン・ジョンウォンは、その経歴も“マッスル美女”たちと一線を画するから面白い。

ヤン・ジョンウォンは国際ピラティス教育協会のインストラクターの資格を持ち、韓国の名門・延世(ヨンセ)大学の大学院でスポーツ心理学も専攻。“才色兼備の美人ピラティス・インストラクター”とされており、韓国の大手ポータルサイトのリアルタイム検索ランキングで1位になったこともあるほど。今月は有名成人誌で大胆なグラビア写真も公開し、「ロマンティックすぎるセクシー美」と大絶賛されている。

(参考記事:マッスル美女と一線を画する才色兼備の美肌ピラティス伝道師

一介のインストラクターに過ぎなかった彼女がテレビや雑誌に引っ張りダコになっている状況は、そのまま韓国のピラティス人気を物語っていると言っても過言ではないだろう。

■急成長する韓国のピラティス市場

マッスルブームと合わせて、近年、韓国ではピラティスが急速なスピードで普及している。韓国メディアによると、2012年は200未満しかなかったピラティス・スタジオが、2015年には1322まで増えているらしい。実に3年間で660%も増えているというのだ。

そんなピラティスの普及と合わせてヤン・ジョンウォンも人気を集めているわけだが、ピラティス人気に乗って注目を集めているのは彼女だけではない。「国宝級ヒップラインのビキニ女神」と呼ばれるシム・ウトゥクも、ピラティス・インストラクターとしても活動している。もともとはフィッネスジムのトレーナーで、あのアーノルド・シュワルツェネッガーなども輩出したNABBA(全米アマチュアボディビルディング協会)の韓国支社が主管した大会で受賞歴もある彼女だが、ピラティス・インストラクターとしての顔も持つ。

(参考記事:“国宝級ヒップライン”のビキニ女神、シム・ウトゥム

そんなこともあって、今、韓国ではピラティス・インストラクターが急増しているらしい。ピラティス・インストラクターだけではない。マンツーマンでトレーニングやダイエットを指導するパーソナルトレーナーも急増しているらしい。ピラティスやダイエットのためのパーソナルトレーニングの需要があるため、それを指導するインストラクターやトレーナーも増えていると見ることもできるが、問題も多いらしい。

というのも、インストラクターやパーソナルトレーナーの資格証を発給する民間機関が雨後の竹の子のように急増中で、わずか2〜3か月という短期間の履修で資格証をほいほいと渡してしまうので教える側としての知識と経験を備えていない者が多いという。

なかには資格証を持たないインストラクターを雇うピラティス・スタジオやフィットネスジムもあるらしい。フィットネス激戦区の江南(カンナム)地区では、インストラクターやトレーナーに、資質や知識、経験が問われるのではなく、ルックスだけが採用基準になっているケースもあるとか。それが集客にも繋がるのだから仕方がないと関係者は言い訳するが、「実力よりも外見」がインストラクターたちの必須事項になっているのは危険だ。

無理をすればケガや命にかかわることもある。実際、韓国では2013年にテレビ番組のダイエット企画に出演したことがある女性が、無理なダイエットで死亡した事件も起きているのだ。

ピラティスにしてもダイエットにしても、誤った方法ではなく正しく無理がない動作や方法で行なうことが肝心で大切。夏の到来の前にダイエット熱が高まるのは良いが、外見だけてはなく中身も充実させることが、韓国フィットネス市場の一番の課題なのかもしれない。

ライター/スポーツソウル日本版編集長

1971年4月16日東京都生まれの在日コリアン3世。早稲田大学・大学院スポーツ科学科修了。著書『ヒディンク・コリアの真実』で02年度ミズノ・スポーツライター賞最優秀賞受賞。著書・訳書に『祖国と母国とフットボール』『パク・チソン自伝』『韓流スターたちの真実』など多数。KFA(韓国サッカー協会)、KLPGA(韓国女子プロゴルフ協会)、Kリーグなどの登録メディア。韓国のスポーツ新聞『スポーツソウル』日本版編集長も務めている。

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