『シティーハンター』で槇村香が振るう100tハンマー。叩かれたらどうなるか、真剣に計算してみた!
こんにちは、空想科学研究所の柳田理科雄です。
マンガやアニメ、特撮番組などを、空想科学の視点から、楽しく考察しています。
さて、今回の研究レポートは……。
『シティーハンター』は、カッコよさとマヌケさが同居した、ヒジョ~に楽しいマンガであった。
主人公の冴羽獠(さえば りょう)は、東京・新宿を根城にする「始末屋(スイーパー)」だ。裏の世界では「ヤツにねらわれて生きのびた野郎はいねえよ」と恐れられていて、ついた異名が「シティーハンター」。
その相棒を務めるのが槇村香(まきむら かおり)。麻薬密売組織に殺された、かつての相棒の義妹だった。
――と、こんなハードな世界にあって、獠は無類の女好きでもある。
基本的に女性の依頼しか受けず、やたらと股間をもっこりさせる。そんな獠に、香は「100tハンマー」を振り下ろす。
ハードボイルドとギャグが絶妙に融合した世界であった。
◆射撃の腕がすごい!
獠の射撃の腕前はモノスゴイ。
相手の銃を撃ち落とすくらいは朝メシ前で、コーヒーを飲んでいる敵のカップを撃ち砕いて警告を与えたこともある。
なかでも驚いたのは、ムチをピストルで撃って破断させたことだ。
現実の世界でムチを振り回している人はあまり見かけないが、マンガのなかではよく悪人が使っている。その脅威はバカにならず、振り回すと遠心力で引っ張られるため、先端のスピードは相当なものになる。
作中のムチは、長さ5mほどもあり、獠が撃ったのは、ムチの根元から2mほどの場所だった。先端からは遠いが、それでも全力で振るうとき、その場所は時速150km前後で動くと考えられる。
一方、獠が愛用するコルト357マグナムの初速は、秒速400m=時速1440km。
獠は5mくらい離れた場所から撃ったが、弾丸がこの距離を飛ぶあいだに、ムチのその場所は50cmほど動く。
つまり獠は「時速150kmで動く標的の位置を見定めて、その50cm先を狙って撃った」というわけだ。
しかも、ムチの直径は2cm程度。この細さでは、発砲のタイミングが0.00024秒ズレても外れてしまう。恐るべき腕と驚くほかはない。
◆オソロシイ100tハンマー
この凄腕の始末屋が、ことあるごとに股間をもっこりさせるわけである。
そのもっこり力は侮りがたく、椅子に座った状態で、テーブルを持ち上げたこともある。
ドアをもっこりでこじ開けたこともある。
天井を崩壊させたことすらある。
そんな獠の不埒な行為に天誅を加えるのが、香の100tハンマーだ。
初めのうちは「10t」と書かれていたが、やがて「100t」がスタンダードになり、果ては「10万t」「無量大数t」「10万馬力」「ICBM」といったスゴイものも現れた。
オソロシすぎるハンマーだ。
あの大きさで重量100tもあるとしたら、何でできているのか?
また、そんなモノで殴られた獠はどうなってしまうのか?
マンガを観察すると、「100t」と書かれているハンマーでも、大きさはさまざまだ。
小さなものだと、ヘッド部分が直径20cm、長さ40cmくらい。
巨大なものだと、直径が85cm、長さが1m7cmほどもある。
一見、大きいほうが威力はありそうに見えるが、重さは同じ100tなのだから、狭い面積にエネルギーが集中する分だけ、小さなほうが破壊力は上回る。100tハンマーは見かけによらないのだ。
この場合、密度は「大ハンマー」が1Lあたり165kg。金の8.5倍であり、もっとも密度の高いオスミウム(金属)と比べても7.3倍。
そんな物質は、地球上に存在しません!
「小ハンマー」でも1Lあたり8tで、オスミウムの350倍。
いよいよ存在しません!
……香さんは、こんなすごいハンマーをどこから持ってきたのだろう?
こんなモノで殴られるとは、獠の安否が心配である。
ある回では、香は病院のベッドに座った状態から、大型100tハンマーを振り下ろした。ヘッドの落差は2mほどと思われた。
これはオソロシイ!
100tハンマーで落差2m上から叩かれるとは、獠の体重を70kgと仮定するなら、高度2860m(富士山の7合目くらい)から、アタマを下にして落ちるのと同じなのだ!
なぜ生きていられるか、全然わかりません。
「100tハンマー」ですら、この破壊力なのだ。
これが「無量大数tハンマー」になると、どうなるのか。
「無量大数t」をアラビア数字で書くと
「100000000000000000000000000000000000000000000000000000000000000000000t」で、これは宇宙の全質量より10000000000000000倍も重い。
これなハンマーがあったら、完全にブラックホールとなり、獠はもちろん、地球も太陽も、いずれは全宇宙さえ飲み込まれる。
獠が不埒なばっかりに、宇宙が滅亡してしまうのだ。なんとオソロシイ!
『シティーハンター』は、ハードボイルドのなかに、こんな楽しい要素が同居していた。ヒジョ~に面白いマンガであった。