マダニに咬まれて肉アレルギーに!? アルファーガル症候群の治療法と予防策
最近、マダニ刺咬が原因で起こる新しいタイプの食物アレルギー「アルファーガル症候群」が世界中で問題になっています。アルファーガル症候群は、マダニの唾液に含まれるアルファーガルという糖鎖に対する抗体が引き金になって、遅れて肉アレルギーの症状が出るのが特徴です。
アルファーガル症候群の症状は、マダニに刺されてから2~6時間後に現れることが多いです。具体的には、じんましんやアナフィラキシーショックなどのアレルギー反応が起こります。アルファーガルは哺乳類の肉だけでなく、内臓、乳製品、ゼラチンなどさまざまな食品に含まれているため、いろいろな食べ物でアレルギーが出る可能性があります。
【マダニ刺咬がアルファーガル症候群を引き起こすメカニズム】
アルファーガル症候群は、マダニの刺咬によってアルファーガルに対する抗体ができることで発症します。マダニの唾液の中にアルファーガルが含まれていて、マダニに刺されると体の中にアルファーガルが入ってきます。すると、体の防衛システムが過剰に反応して、アルファーガルを異物だと認識して攻撃し始めるのです。
アメリカではヒトスジシマカやタネガタマダニ、オーストラリアではオーストラリアキララマダニ、ヨーロッパではヨーロッパヤマトマダニなど、特定の種類のマダニとアルファーガル症候群との関係が指摘されています。日本でも、フタトゲチマダニやタカサゴキララマダニが原因と考えられる症例が報告されています。
【アルファーガル症候群ではどのような症状が出るの?】
アルファーガル症候群の代表的な症状は、マダニに刺されてから2~6時間後に起こるじんましんやアナフィラキシーショックです。じんましんは、皮膚が赤く盛り上がって、強いかゆみを伴います。アナフィラキシーショックは、じんましんに加えて、吐き気や嘔吐、下痢などの消化器症状や、息苦しさ、血圧の低下などの全身の症状が現れる、危険な状態です。
ほかにも、皮膚の腫れやかぶれ、呼吸困難、意識障害など、さまざまな症状が報告されています。アルファーガル症候群は、症状が出るまでに時間がかかるため、原因となった食べ物に気づきにくいことが問題です。診断するには、血液検査でアルファーガルに対する抗体を調べたり、皮膚テストや食物負荷試験を行ったりします。
【アルファーガル症候群の治療と予防は?】
現時点では、アルファーガル症候群を完治させる治療法はありません。症状を引き起こす食品を避けることが大切です。もしアレルギー症状が出た場合は、抗ヒスタミン薬やステロイド薬、エピネフリン自己注射薬などを使って、症状を抑えます。
アルファーガル症候群は新しいタイプの食物アレルギーで、まだ解明されていないことが多いです。マダニ刺咬との関係について、さらなる研究が必要だと考えます。予防としては、山や森など、マダニが多い場所に行く際は、肌の露出を避け、虫除け剤を使うことが大切です。
また、アルファーガル症候群では、皮膚の症状も見られることがあります。マダニ刺咬によるかゆみやじんましん、皮膚の腫れなどに気づいたら、早めに病院で診てもらいましょう。皮膚の症状は、重いアレルギー反応の前兆かもしれません。
アルファーガル症候群に限らず、食物アレルギーが疑われる場合は、専門医に相談することをおすすめします。原因となるアレルゲンを特定し、適切な食事管理を行うことが大切です。また、万が一のアレルギー症状に備えて、緊急時の薬の処方や使い方について、しっかり確認しておくことも重要です。
参考文献:
・Wilson, J. M., et al. (2024). Tick bites, IgE to galactose-alpha-1,3-galactose and urticarial or anaphylactic reactions to mammalian meat: The alpha-gal syndrome. Allergy, 00, 1–15. https://doi.org/10.1111/all.16003