【大人の社会科見学】グローバル企業 Booking.comの本社に行って感じた”理想の世界”
オランダ屈指の大手企業
先日、仕事でオランダへ行ったついでに、アムステルダムにあるBooking.comの本社に寄らせてもらいました。
Booking.comはオンラインでフライトやホテル、レンタカーなどを予約できるOTA(Online Travel Agency=オンライン旅行代理店)で、会員登録すると利用頻度に応じてランクが上がっていき、ランクごとに割引率も上がっていくという特典があります。
日本語を含む世界44か国語で展開し、GoogleやAmazonなどとも比肩するほどのグローバル企業なのですが、オランダの会社であるということは意外と知られていないのではないでしょうか。
そんなBooking.com、昨年本社をお引越しして自社ビルを構えたというので見学させてもらったのです。
新しい社屋は中央駅にも徒歩圏。といっても、平坦なオランダでは道路にアップダウンが少ないためか、自転車通勤する人が多いので本社にも2500台以上の駐輪スペースがあるそう。さすがオランダ。
セキュリティゲートを通って、ロビーへ向かうとそこはおよそオフィスとは思えない空間。広々とした吹き抜けがあり、明るく開放的で、おしゃれなホテルかと錯覚するほど。グリーンが多いのが印象的です。
最先端技術と福利厚生
このビルのなにがすごいって、全体に環境にやさしいエコシステム的な機能が備わっていて、たとえばこの吹き抜けも自然光を取り入れることで日中使う電力を抑えるため。部屋の仕切りの多くはガラスなので、解放感があるだけでなくどこからでも自然光が入ります。屋上にびっしりと敷き詰められたソーラーパネルにより電力を補っているほか、空調にはTES(熱エネルギー貯蔵)技術を用いているとのことで、徹底した省エネルギー構造。
また、建築素材もサステナブルなものを用いていて、デスクや椅子などの家具類の多くは旧オフィスの”お古”を使用しているそうで、エコフレンドリーでもあります。
驚いたのは、社員の働き方をサポートする福祉。いまや自分の席を定めないフリーアドレスを取り入れている企業は日本にも増えていますが、こちらももちろんフリーアドレス。セクションごとにある程度はエリアが決まっているものの、自分の好きな場所――自宅も含め――で仕事ができるよう、さまざまなワークスペースが設けられています。
気分転換用にお茶やコーヒーがフリーで、というのも当然ながら、チョイスが多く、フルーツなどの軽食もちょろっとおいてあったりします。社員食堂も完備され、グルテンフリーやヴィーガンメニューまでも取りそろえる充実ぶり。こちらも無料での提供と、まさに至れり尽くせり。
社員それぞれにあるであろう、事情や文化的背景、好みを考えつつ働きやすい環境を整えているのは、多国籍の人々が働くグローバル企業だからこそ、にほかなりません。
Social Good Companyの一面も
さらに、セキュリティゾーンの外には一般の人も利用できるレストラン『A Beautiful Mess(美しい混乱)』が入居しており、こちらは難民支援を目的とした施設です。働いているのは難民の背景を持つ人々。中東とアフリカ――シェフの出身国――のエキゾチックなフュージョン料理が楽しめ、カジュアルでいい雰囲気です。オープンキッチンなので働いている人の様子も見えますが、みなさんとても楽しそう。
この施設は難民の就労機会を均等化するため、就労に必要なスキルを身に着けることを目的に活動するRefugee Companyとテックグラウンドと提携。レストランの奥はオランダ語や料理、IT技術などのトレーニングを受けられる施設になっていて、難民申請中で就労許可がまだない人も、許可が下りればすぐに仕事ができるよう、大きな手助けになっているそう。
改めて平和産業を考える
環境や多様性への配慮は企業にとって社会的責任としてなすべきことではありますが、なによりも同社は「すべての人が楽しめる旅行体験を提供すること」を目標としているだけに、個人が自分らしくいられることに力を入れています。つまり、その世界観の実現に向けて社内環境から実践しているということ。そう考えると、トラベル界に従事する者としてはただ働きやすそうな企業という以上の感慨深さがあります。
旅行は平和産業。古くから言われている言葉で、ざっくりいえば「平和のうえに成り立つ産業」といった意味なのですが、平和というのはただ表面的に戦争をしていない状態というわけではありません。
健康的な環境
多様性の理解・尊重
他者への思いやり
こうした要素があって初めて成り立つもので、理想的な社会の姿といえます。Booking.comは旅行業者としてそうした世界を築く一助となるよう努めているのだな……。そして、それは旅行者ひとりひとりにも求められている行動でもあり、改めて自らも引き締めていこうと思ったのでした。