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パンサラッサがサウジCを制覇!1着賞金は約13億6千万円で世界最高/日本調教馬はサウジで重賞3勝

花岡貴子ライター、脚本&漫画原作、競馬評論家
サウジカップを逃げ切って優勝したパンサラッサ。鞍上は吉田豊騎手(写真:ロイター/アフロ)

 現地時間25日、サウジアラビアのキングアブドゥルアジーズ競馬場で行われたサウジカップ(G1、ダート1800m)を日本調教馬のパンサラッサが制した。勝ち時計は1分50秒795。

 パンサラッサだけでなく、この日のサウジでは日本調教馬が計3頭、重賞を勝つというJAPANデーとなった。

ダート克服で安定した逃げ切りを見せたパンサラッサ

 パンサラッサの果敢な逃げには心が揺さぶられる。

 昨2021年3月、初の海外遠征だったドバイターフでは、最後の直線で後続に差を詰められながらも二の脚を使って粘り込みをはかり、結果は追い込んだロードノースと同着での優勝を決めた。

 さらに、天皇賞(秋)では1000m通過タイムが57秒4という1998年の天皇賞(秋)でサイレンススズカが刻んだ超ハイペースで逃げながらも2着に粘るという好走で多くのファンを魅了した。

 しかし、このサウジカップの舞台はダートだ。距離は合うが、馬場はどうか。それが懸念材料だった。過去、パンサラッサはダートで1戦したが11着に惨敗している。それでも、矢作師は「ダートといっても日本のダートはまるで違う馬場なので、こなしてくれそう」と希望的観測を口にしていた。そして、師のその読みどおり、サウジカップのゲートを出たパンサラッサはスッと先手を奪うと芝のレースと同じようにマイペースで単騎で逃げた。

 すんなり逃げたときのパンサラッサは強い。後続も伸びているのだが、パンサラッサとの差はなかなか詰まらない。外から昨年2着でフランキー・デットーリ騎手が操るアメリカのカントリーグラマーがやってくるが、ゴールでは4分の3馬身まで詰め寄るのが精いっぱいだった。

 1着賞金1000万ドル。世界の競馬の中で現在の最高賞金レースである。円換算すると、約13億6千万円だ。わずか2分弱のあいだにこれだけの大金が動くのである。

 さらに、円安の影響もあり、日本勢の海外遠征は過去の同レースよりも円で貰える賞金額が増えていることも書き加えておく。

■過去記事

天皇賞(秋) パンサラッサが魅せた、サイレンススズカの"夢の続き"

■2023年サウジカップ(G1) 優勝馬 パンサラッサ

サウジカップを制しトロフィーを掲げるパンサラッサ騎乗の吉田豊騎手
サウジカップを制しトロフィーを掲げるパンサラッサ騎乗の吉田豊騎手写真:ロイター/アフロ

バスラットレオンと坂井瑠星、人馬ともに成長著しい

 この日、パンサラッサを管理する矢作芳人厩舎は、1351ターフスプリント(G3,

芝1351m)もバスラットレオンで制している。騎乗したのは矢作厩舎所属のある坂井瑠星騎手だ。25歳。昨2022年の秋華賞をスタニングローズで制した後、JRAのGIでの勝ち星を一気に伸ばし、すでに3勝。若手騎手の第一人者であり、海外重賞もこれが2勝目だ。

 実に落ち着いた騎乗で外から追い込んできた昨年2着のカサクリードをアタマ差おさえての勝利だった。バスラットレオンも芝、ダートを問わずに重賞を勝てるようになり、成長著しい。

 矢作厩舎の管理馬に坂井瑠星騎手が乗って海外G1を制する日はそう遠くないのではないか。

■1351ターフスプリント(G3) 優勝馬 バスラットレオン

池江師「異国の地でオルフェーヴルの血で優勝できてうれしい」

 レッドシーターフH(G3)は芝の3000m戦。日本調教馬のシルヴァーソニックが好位から抜け出しての完勝で優勝。海外初挑戦ながら前走のステイヤーズS(GII)に続いて重賞を連覇した。

■2023年 レッドシーターフH(G3) 優勝馬 シルヴァーソニック

 池江泰寿調教師は自身が管理していた2011年の牡馬クラシック三冠馬・オルフェーヴルの産駒で海外重賞を制し、とても嬉しそうにインタビューに答えていた。

「シルヴァーソニックの父はオルフェーヴルですが、オルフェーヴルは凱旋門賞へ2回挑戦したけれど勝てなかった。国は違いますが、異国の地でオルフェーヴルの血で勝ててとても嬉しく思っています。」(池江泰寿師)

 ちなみに、インタビュアーからはオルフェーヴルの父であるステイゴールドについても聞かれていた。ステイゴールドは2001年にドバイシーマクラシック(G2)と香港ヴァース(G1)を勝っており、中東でもなじみがあるのだろう。当時、池江泰寿師は父である池江泰郎師のもとで調教助手としてステイゴールドに携わっていた。このゆかりの血統を、ステイゴールドと同じ勝負服で勝つというのも感慨深いものがあった。

レッドシーフタ―フHを勝ったシルヴァーソニック。鞍上はダミアン・レーン騎手
レッドシーフタ―フHを勝ったシルヴァーソニック。鞍上はダミアン・レーン騎手写真:ロイター/アフロ

 2020年、サウジアラビアジョッキークラブが創設したキングアブドゥルアジーズ競馬場で行われるサウジカップデーは今年で4回目を迎えた。

 ついにメインレースのサウジカップを日本調教馬が制する日が来たが、2020年は1勝、2021年は2勝、2022年は4勝と順調に活躍の幅を広げ、2023年は3勝でメインのサウジカップ制覇を成し遂げた。特にサウジカップの上位5頭のうち、4頭を日本調教馬が占めるという快挙だった。

 はじめは情報も少なく手探りの感が否めないサウジ遠征だったが、すっかり特徴を把握して対策を進められるようになった。そして、今年の好成績はその成果が実った遠征だったといえるだろう。

 おめでとうございました!

ライター、脚本&漫画原作、競馬評論家

競馬の主役は競走馬ですが、彼らは言葉を話せない。だからこそ、競走馬の知られぬ努力、ふと見せる優しさ、そして並外れた心身の強靭さなどの素晴らしさを伝えてたいです。ディープインパクト、ブエナビスタ、アグネスタキオン等数々の名馬に密着。栗東・美浦トレセン、海外等にいます。競艇・オートレースも含めた執筆歴:Number/夕刊フジ/週刊競馬ブック等。ライターの前職は汎用機SEだった縁で「Evernoteを使いこなす」等IT単行本を執筆。創作はドラマ脚本「史上最悪のデート(NTV)」、漫画原作「おっぱいジョッキー(PN:チャーリー☆正)」等も書くマルチライター。グッズのデザインやプロデュースもしてます。

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