平均時間は男女ともに6時間強…睡眠時間の現状を探る
日常生活の営みの中で欠かせない生理的行動の一つが睡眠。寝不足は確実に心身へのダメージを与え、回復を遅らせることになる。その実情を厚生労働省が2016年11月に発表した「平成27年国民健康・栄養調査結果の概要」(調査時期は2015年11月。今回調査分では調査実施世帯数は3507世帯で、調査方法は調査票方式)から探る。
体質や生活習慣、労働環境など多種多彩な要素により、一人ひとりの適切な睡眠時間は異なる。当然、同じ睡眠時間を確保して寝ても、すべての人が等しい健康状態となるわけではない。疲れている時は通常時よりも長い睡眠時間を取りたくなるのが好例。よって、睡眠時間が長ければ良いわけではない。
さらには本人が睡眠時間と認識している時間(今件設問は「ここ1ヶ月間、あなたの1日の平均睡眠時間はどのくらいでしたか」であり、それに回答者が自分の実情を答えてもらったまでの話。専用の機器で回答者の睡眠時間を計測したわけではない)のうち、心身ともに睡眠として計上できる状態と、それに至らない状態の時間の関係もある。また睡眠時無呼吸症候群のように、睡眠時に身体上のトラブルを生じている(本人が気が付いている・いないを問わず)場合は睡眠時間そのものが長くとも、心身の休まり度合いは通常時の同時間における睡眠と比べて大きく減退することになる。
それらを念頭においた上で。一日の平均睡眠時間を時間区分毎に比率で示したのが次のグラフ。男女ともに50代ぐらいまでが赤系統(=睡眠時間が短い)の面積が増え、それ以降は減少していくことから(女性は30代でイレギュラーが生じているが)、その年代までは睡眠時間が減少傾向にあり、それ以降は再び増加していくのが分かる。
一番短い仕切り分けとなる、もっとも濃い赤色の「5時間未満」の部分をだけを見ると、男性・女性共に50代が最多数値であるのが確認できる。
とはいえ、このグラフからは「どの睡眠時間帯層にどれだけの人がいるのか、またその変移」は把握できても、全体的な睡眠時間の動向は多少把握しにくい。そこで各時間区分の中央値(両端はそれぞれ他の階層と同じ時間の足し引きとなるように。具体的には4.5時間・5.5時間・6.5時間……)を用い、概算的な平均値を算出したのが次のグラフ。
縦軸の下限がゼロでは無く5.4時間であることに注意してほしい。この限りにおいては、男性は40代、女性は50代で睡眠時間が一番短くなり、それ以降は漸増する動きを見せている。「お年寄りほど睡眠時間が長い」(朝は早いが)との経験則は間違いではないようだ。
また「国民健康・栄養調査」では不定期に睡眠時間に関する計測を行っており、前回の値は2014年分、その前は2011年分となる。そこで今回の2015年分と合わせ、同様の計算方法で算出した平均睡眠時間について、性別・年齢階層別に並べたのが次のグラフ。
一部の属性で例外が出ているが、男女の総数を合わせ、ほぼすべてで睡眠時間が短縮されている。違いはごくわずかではあるが、減っていることに変わりはない。これが中長期的なものか、今後の計測結果を追う必要はあるが、特定の年齢階層だけならともかく、ほぼすべての階層で起きている点には、大いに留意を払いたいところではある。
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