新型コロナワクチン3回目接種が前倒し 高齢者は最短で1月から開始 接種ワクチンは選べる?
3回目の接種対象は?
日本では、「2回目接種から8か月以上が経過した18歳以上のすべての人」に対してファイザー社製あるいはモデルナ社製ワクチンの3回目接種を受けることが可能です。3回目接種の概要は図1のようになります。
接種間隔については原則「8か月」だったのですが、医療従事者、高齢者施設入所者・デイサービス利用者とその職員、病院に入院している患者さんなどは、「6か月」とされました。65歳以上の高齢者についても、「7か月」の間隔で3回目接種が可能です(1)(表1)。
さらに、12月24日の自治体向けの説明(2)において、「高齢者施設等の入所者等について一定の接種完了が見込まれた段階で、その他の高齢者の接種の現行より前倒しを行うこととして差し支えない」とされ、65歳以上の高齢者について、実質「6か月」の接種間隔が容認されたことから、早ければ2022年1月中に65歳以上の高齢者の接種を始める自治体が出てくると思われます。
また、職域接種も前倒しするという話も出ているので、基本的には全体的にスケジュールを前倒しにする形に落ち着くのではないかと思います。
なお、18歳未満については現時点では追加接種の対象となっていません。18歳の誕生日が来れば3回目の接種を受けることが可能です。
3回目接種ばかりが話題になっていますが、まだ1回目すら接種できていない人も、2022年(令和4年)9月30日までは1・2回目の接種が可能です。
接種券はいつ送付される?
2回目の接種が終わってから、原則3回目接種の前月に届きます。8か月の間隔であれば7か月後に、7か月の間隔であれば6か月後に郵送されるはずです。ただ、上述した間隔が前倒しになった人に対して、確実に郵送されるのかどうかは自治体次第です。2回目接種後8か月が経過しても接種券が届かない場合は、自治体に問い合わせるようにしましょう。
ワクチンごとの3回目接種の有効性の違いは?
新型コロナワクチンを接種した18歳以上を対象に、交互接種を含んだ追加接種の安全性や抗体価を調べると短期間であればかなり抗体価が上昇します(3-5)。ただし、これも経時的に減衰することが示されています(6)。高齢者では重症化予防効果も徐々に低下していきます。
中和抗体価の上昇以外にも、細胞性免疫など数値では見えない恩恵があるため、オミクロン株と対峙するにあたって、迅速に3回目まで接種しておくことが一番強固な鎧になると思います。
ワクチンごとの3回目接種の副反応の違いは?
ファイザー社製と武田/モデルナ社製のワクチンのいずれも、3回目接種後の副反応は、2回目にみられたものと同様とされています。唯一、リンパ節の腫れ(首やわきの下)の頻度がやや高かったとする報告があるくらいです(7,8)。これは、自然に治るので心配いりません。
極めて低い頻度ではあるものの、武田モデルナ社製ワクチンのほうが心筋炎の超過発生が多いとされています。しかし、当該ワクチンの3回目接種は、1・2回目接種で用いた量の半量です。 2回目接種後と比較して、副反応が少なくなることが期待されます。
3回目接種のワクチンは自由に選択できる?
初回接種に用いたワクチンの種類にかかわらず、ファイザー社製ワクチンあるいは武田/モデルナ社製ワクチンのいずれも使用することができます。感染予防・重症化予防・副反応という観点については臨床的にインパクトがあるほどの差はないため、どちらを選んでも問題ありません。ただ、抗体価の数値だけみると、メッセンジャーRNAの量が多い武田/モデルナ社製に軍配があがるかもしれません。
個人的には、早く接種できるものを接種するというスタンスでよいと思います。
さて、気になるのは、希望するワクチンが本当に接種できるかどうかです。厚生労働省は、ファイザー社から2022年中に1億2000万回分、モデルナ社からは9300万回分の供給を受けることが決まっています(表3)。これまでより、モデルナ社製ワクチンの割合が高くなっています。
ゆえに、「自由に選べる」とは言いつつも、武田/モデルナ社製ワクチン接種が基本となるケースが増えるでしょう。厚労省も「ワクチンが不足した場合、3回目もファイザーを希望する人はすぐに接種できない可能性もある。モデルナに切り替えても問題はないので、3回目ではモデルナの接種を検討してほしい」と述べています。実際、ファイザー社製ワクチンの集団接種会場が、年明けから武田/モデルナ社製ワクチンの接種会場に変わってしまう自治体もあります。
モデルナ社製ワクチンの3回目接種では、1瓶あたり15人程度集めないと残薬が発生してしまうため、クリニックなどの医療機関もファイザー社製を希望しがちという課題もあります。
まとめ
2022年1月以降、国内ではオミクロン株の感染拡大と3回目接種のせめぎ合いになると思われます。3回目接種後、どのくらいワクチンの感染予防効果が続くかはまだデータが不足していますが、終生免疫が得られるようなウイルスではありませんので、短期的な感染予防・長期的な重症化予防のために接種をすすめていくことが重要と考えられます。
(参考)
(1) 第64回新型コロナウイルス感染症対策アドバイザリーボード(令和3年12月22日)資料2-5 追加接種の前倒しについて(URL:https://www.mhlw.go.jp/content/10900000/000871724.pdf)
(2) 第10回 新型コロナウイルスワクチンの接種体制確保に係る自治体向け説明会 資料(URL:https://www.mhlw.go.jp/stf/newpage_23013.html)
(3) Atmar RL, et al. medRxiv preprint doi: 10.1101/2021.10.10.21264827.(査読前論文)
(4) 追加接種における交互接種について(免疫原性)(URL:https://www.cov19-vaccine.mhlw.go.jp/qa/uploads/11-5%20%281%29.pdf)
(5) MODERNA ANNOUNCES PRELIMINARY BOOSTER DATA AND UPDATES STRATEGY TO ADDRESS OMICRON VARIANT(URL:https://investors.modernatx.com/news/news-details/2021/Moderna-Announces-Preliminary-Booster-Data-and-Updates-Strategy-to-Address-Omicron-Variant/default.aspx)
(6) SARS-CoV-2 variants of concern and variants under investigation in England(URL:https://assets.publishing.service.gov.uk/government/uploads/system/uploads/attachment_data/file/1043680/technical-briefing-33.pdf)
(7) 追加接種でファイザー社ワクチンを用いることの安全性(審査報告書)(URL:https://www.cov19-vaccine.mhlw.go.jp/qa/uploads/11-6.pdf)
(8) 追加接種でモデルナ社ワクチンを用いることの有効性・安全性(特例承認に係る報告書)(URL:https://www.cov19-vaccine.mhlw.go.jp/qa/uploads/052c185163506560d49d2242b76c217ea61925c9.pdf)