周期表に存在しない「未知の原子」が新発見される!?
どうも!科学ヤバイch中の人のキャベチです。
今回は「周期表にない!?仮想的な原子が存在する可能性」というテーマで動画をお送りしていきます。
●周期表にない原子からなる物質
日本の愛媛大学の内藤教授を代表とする研究グループが、周期表にない仮想的な原子を発見したと報告し、2022年に学術雑誌に掲載されました。
研究グループによると、周期表にない原子の発見は、物質の根幹に関連する重要な内容だそうです。
そもそも宇宙創成以来、すべての物質は原子から構成されていて、原子の種類も決まっています。
原子の種類は周期表という一覧表にまとまっていて、現在までに知られている原子は、全部で118種類です。
研究グループが発見した周期表にない原子は、既存の2種類の原子の中間のような性質を示す原子だと述べられています。
この仮想的な原子から構成された物質は、これまでの物質には見られない画期的な特徴を持っているようです。
実際に仮想的な原子で構成された物質中には、質量がゼロの特殊な電子が、光速に近い速度で
動き回っていることも明らかになっています。
この特徴を今後応用することで、超高速かつ超低消費電力のコンピューターなどが期待できるそうです。
●周期表にない原子とは!?
では具体的に、周期表にない原子とは、一体どのような原子なのでしょうか。
原子は現在までに、原子番号が1番の水素から118番のオガネソンまで、118種類が発見されてきました。
そして、この世の中に存在するすべての物質は、これら原子の組み合わせによって構成されています。
原子の世界を音楽に例えると、ドレミファソラシドのような音階から成り立っているのと同じです。
つまり原子の世界には、118種類の音階が見つかっていると、言い換えることもできます。
このような原子の世界において、原子の一覧表に当たるのが周期表です。
そんな中、内藤教授の研究グループによって、周期表のどれにも相当しない架空の原子が発見されました。
音楽の世界で言うと、半音に相当する原子が見つかったそうです。
もう少し具体的には、周期表における硫黄とセレンの中間の性質を示す原子が見つかったと、論文で発表されています。
硫黄は元素記号がS、原子番号が16番の元素です。
それに対して、セレンの元素記号はSe、原子番号が34で、セレンは周期表において硫黄のすぐ下に位置しています。
音楽の世界では半音は存在しますが、原子の世界において今までの常識では、中間の原子は通常あり得ません。
内藤教授の研究グループが、実験と理論の両面から詳しく調べた結果、現在の量子化学でも説明がつかないそうです。
したがって、中間の性質を示す原子について説明するためには、概念を拡張する必要があります。
現在までに内藤教授を中心とする研究グループは、長年さまざまな分子からなる伝導性物質や磁性体などを、研究してきました。
それに加えて今までに、世界に先駆けて、紫外線を照射したときにだけ金属に変わる有機物などを発見し、論文で発表しています。
それ以外にも、ほかの物質には見られない機能を持つ、多種多様な新しい物質を報告してきました。
このような研究の一連の流れとして、仮想的な原子からなる物質の発見の際にも、新しい物質として調べていたそうです。
内藤教授の研究グループが合成した物質は、X線を用いて詳細に解析されました。単結晶X線構造解析という方法によって、物質を構成している原子の配列を確認できます。
それでは、その物質を構成する原子の配列を、詳しく見ていきましょう。
ここでは、白抜き、褐色、紫色の球が、それぞれ水素、炭素、ヨウ素原子を表しています。
そして、黄色、緑色の球が、それぞれ硫黄(S)、セレン(Se)原子です。さらに、硫黄(S)とセレン(Se)の中間的な原子は、黄色と緑色で半分ずつ塗られています。
ところでなぜ、中間的な性質の原子が、急に生成したのでしょうか。
そこでまず、原子から構成されている分子1つの場合を、平面で順に考えてみましょう。
このような形の分子の場合には、硫黄(S)原子とセレン(Se)原子の位置は、分子の向きによって2パターン考えられます。次にこの分子が、綺麗に2つ重なった場合はどうでしょうか。
この分子2つが重なる方法は、図のように4パターンあります。
ただし実際の物質は、これら分子が無数に重なっているため、硫黄(S)原子とセレン(Se)原子の位置も無秩序にパッキングされているはずです。
したがって、硫黄(S)原子とセレン(Se)原子の位置の組み合わせも、無数に存在すると考えられます。
しかし解析の結果、これら硫黄(S)またはセレン(Se)の位置にある原子は、いずれも硫黄(S)とセレン(Se)の中間的な性質を示していました。
そのため、これらの分子はあたかも秩序があるかのように、パッキングされていることになります。
●仮想的な原子による今後の展開
X線による解析の結果からも、硫黄でもセレンでもない原子が、存在していることが示されました。
さらに、構成原子が変わった結果、原子の周りを取り囲んでいる電子の特徴も変わっているそうです。
電子は1個当たりおよそ10のマイナス30乗キログラムという質量を持っていて、電子がそれぞれの物質の性質を決めていることが、これまでに知られています。
その一方で、研究グループが合成した仮想的な原子からなる物質では、電子ではなく、質量のない粒子が物質の性質を決めていることが明らかになりました。
どうやら質量ゼロの特殊な粒子は、この物質中を光速に近いスピードで走り回っているようです。
質量がないこの特殊な粒子は、非常に身軽に動き回れるため、この性質を半導体デバイスに応用できるかもしれません。
すなわち、光速で動き回る質量ゼロの粒子を用いて、超高速かつ超低消費電力のコンピューターが、実現できる可能性があるそうです。また、遠赤外通信などにも使えそうな物質だと、内藤教授は語っています。
遠赤外通信は将来性や有望性が指摘されているものの、適した物質がなかったため実現していませんでしたが、今回の物質が役立つ可能性があるようです。
以上のように、周期表にない変わった原子が発見されただけでなく、既存の物質には見られなかった画期的な特徴も確認できました。
周期表にない仮想的な原子の、今後の展開が気になりますね。