探査機ニューホライズンズが太陽系深淵で新発見!カイパーベルトは想像以上に大きいと判明
どうも!宇宙ヤバイch中の人のキャベチです。
今回は「太陽系深淵のカイパーベルトの新事実」というテーマで動画をお送りします。
太陽系の深淵領域の探査において現役で大活躍している探査機「ニューホライズンズ」は、「カイパーベルト」という天体の高密度領域が理論予想よりも遥かに遠くまで続いている可能性を示しました。
本動画ではまずニューホライズンズの功績を簡単におさらいし、その後カイパーベルトにおける新発見について解説していきます。
●ニューホライズンズの軌跡
ニューホライズンズはNASAによって2006年に打ち上げられた、人類初の太陽系外縁天体の探査を行う無人探査機です。
打ち上げ時の対地速度は16km/sと非常に速く、そのスピードのままわずか9時間で月軌道を通過し、13ヵ月後に木星に到達しました。
これらはそれぞれ史上最短での到達記録となります。
そんな異次元の速度を誇るニューホライズンズですが、木星でスイングバイをして、さらに約4km/sも速度を上昇させ、冥王星へと向かいました。
○冥王星の探査
2015年7月14日、ニューホライズンズは冥王星をフライバイし、冥王星の地形や組成、大気、衛星などに関する新たな大発見を私たちにいくつももたらしてくれました。
有名な実写画像をいくつか紹介します。
これは冥王星外観の画像ですが、これまでとは比にならないほど詳細な姿が浮かび上がりました。
画像中央部にハート側の模様がありますが、これはトンボー地域と呼ばれる地形です。
トンボー地域の西側の部分、ハートの左半分には、スプートニク平原と呼ばれる氷原が広がっています。
幅1000kmほどで、窒素や炭素、一酸化炭素、メタンなどの氷に覆われているそうです。
こちらは、日没を捉えた画像です。
地平線に広がる氷原とボワっとした大気とが相まってとても神秘的です。
冥王星から約18000kmの位置から撮影されました。
そしてこちらは、ニューホライズンズが冥王星を通り過ぎて振り返ったときに撮影したものです。
冥王星の奥に太陽が存在する位置関係になります。全体をぼんやりと包む青い大気が美しいです。
さらにニューホライズンズは、冥王星最大の衛星カロンの姿も鮮明に捉えています。
北極部分が褐色なのが特徴的です。
○アロコスの探査
冥王星の探査を終えた探査機ニューホライズンズはその後さらに深い宇宙にある「アロコス」という天体に接近し、その姿を直接観測することに成功しました。
ニューホライズンズ接近時のアロコスの太陽からの距離は43.4天文単位でした。
これは直接写真を撮った天体としては、地球や太陽からの最遠記録となります。
(1天文単位=地球と太陽の平均距離≒1.5億km)
そしてこちらが実際に撮影された画像です。
まるで雪だるまのような、不思議な形をしています。
長径は31km程度で、直径19kmと14kmの2つの小天体がぶつかりこのような形を作ったと考えられています。
そしてさらにニューホライズンズが去り際に撮影した映像から、アロコスは意外と薄っぺらい見た目をしていることがわかりました。
なので雪だるま型、というより実はパンケーキ型と言えるでしょう。
地球から遥か遠い宇宙の中の天体の詳細な情報がわかるのは、本当にロマンがあります。
●カイパーベルトの探査と新発見
太陽系において、現状最果ての惑星である海王星より外側には、「エッジワース・カイパーベルト」と呼ばれる、穴の開いた円盤状に天体が高密度で分布する領域が存在することが知られています。
ニューホライズンズが探査を行った冥王星とアロコスも、このカイパーベルトに存在する天体の一つです。
これまでにカイパーベルトを訪れた探査機には、ニューホライズンズの他にもパイオニアやボイジャーが挙げられますが、ニューホライズンズには唯一、彗星から放出されたり、天体同士が衝突することで形成される太陽系内の微粒子である「惑星間塵」の個数・速度・質量を検出する機器「ダストカウンター」が搭載されています。
そんなダストカウンターにより、カイパーベルト領域の惑星間塵の密度を測定していたところ、なんとカイパーベルトは理論的な予想よりも遥かに遠くまで続いている可能性が高いことが判明しました。
一般的な理論モデルによると、カイパーベルトの外縁は、地球や太陽の位置から約50天文単位離れた場所にあると予想されていました。
よってカイパーベルトを横断するニューホライズンズが検知できる惑星間塵の密度も、50天文単位地点を超えたあたりから徐々に下がっていくと予想されていました。
しかし太陽から45~55天文単位地点におけるニューホライズンズの3年間の探査の結果、50天文単位地点通過後も変わらずに高密度の惑星間塵が存在していることが判明しました。
具体的には42天文単位を超えたあたりから、標準的なモデルの予想より多い状況が続いています。
現時点での計測結果から新たに推測すると、カイパーベルトは実に太陽から80天文単位以遠まで続いている可能性や、あるいは既知のベルトの外側に2つ目のベルトが存在する可能性すらあるとのことです。
○なぜ高密度領域が予想より広いのか?
カイパーベルトが理論予想よりも大幅に遠くまで続いている理由として、いくつかの説が提唱されています。
まず、太陽から来る放射線の圧力などの要因によって、カイパーベルトの内側で作られたダストが50天文単位を超えて押し出されている説があります。
ただし研究チームによると、この可能性は低いとのことです。
また、短命な氷の粒子がカイパーベルト内に数多く存在している説も挙げられています。
このような粒子は、カイパーベルト内の天体同士の衝突によって形成されると考えられています。
このような粒子はカイパーベルト内に留まるだけで、太陽系の内側の領域に入ってこれないため、これまで観測されず、カイパーベルトの性質を予想するモデルにも考慮されていない可能性があります。
ニューホライズンズはボイジャー探査機のように、太陽から100天文単位を超えて活動を継続できる可能性があります。
カイパーベルトの真の外縁の発見など、太陽系の外縁部における常識が覆るような新発見がこれからももたらされることが期待されています。