「CB-Fコンセプト」の元ネタ CB750Fとはどんなバイクだったのか!?
ホンダが先日発表した「CB-Fコンセプト」。本来は大阪・東京モーターサイクルショー2020でワールドプレミアとしてお披露目されるはずだったコンセプトモデルである。CB誕生60周年を機にその歴史を振り返りつつ、Hondaを代表するスポーツモデルであるCBの次世代のあるべき姿を提案したものだという。今回はCBの中でもとりわけFシリーズについての話をしたい。
直4スーパースポーツの礎となった元祖ナナハン
Hondaの公道用市販車にCBの名が初めて登場したのは1959年発売のベンリィCB92スーパースポーツからだ。その翌年デビューしたCB72は本格的な250ccスポーツモデルとして人気を博し、多くの派生モデルを通じてホンダ=CBの知名度は高まっていった。
▲DREAM CB750FOUR(1969年)
そして、世界にCBの名を知らしめたのは1969年登場のドリームCB750FOURだろう。世界初となる直4エンジン搭載の量産大型バイクで「ナナハン」の代名詞になった。当時の最高速度記録200km/hオーバーを達成するなど日本製バイクの優秀性を世界に認めさせ、現在につながる直4スーパースポーツの礎となったモデルと言っていいだろう。
CB750FOURが火付け役となり他の国産メーカーからもナナハンが続々登場。特にライバルと見なされたのが1972年にカワサキが投入した750RS、通称Z2(ゼッツー)でエンジンはDOHC(ダブルオーバーヘッドカム)化され最高出力でCBを凌駕。Z2は主に北米向けの輸出モデルだった900RS(Z1)を当時の国内自主規制に対応してスケールダウンしたモデルで、年代は前後するもののスズキGS750(GS1000)やヤマハXJ750(XJ900)なども同様の流れだった。
年間セールスは1万台以上と怪物級
▲CB750F(1979年)
高性能化・大排気量化が進むライバルに対する巻き返しを図ったHondaが79年に投入したのがCB750Fである。伝統の空冷直4エンジンはDOHC4バルブに最新化され、前後ディスクブレーキに当時Hondaが好んだコムスターホイールを採用。セパハンにバックステップなどスポーティで最新感のあるイメージでまとめられ、スクエアかつ流麗なフォルムはその後のCBシリーズのデザインの原点となった。CB750Fは最盛期には年間でなんと1万台以上も売れる人気を誇るなど、セールス面でも怪物級のナナハンだった。
今回のCB-Fコンセプトもこの時代のCB750Fがモチーフになっている。
根底に流れるレーシングスピリット
▲CB750F(1981年)
ちなみにCB750Fのエンジンの生い立ちだが、元々は元祖ナナハンのCB750FOURをベースに開発された耐久レーサーRCB1000用の空冷DOHC4バルブエンジンがベースで、これを公道市販車用に最適化して搭載した輸出用ニューモデルのCB900Fが欧米で大ヒット。それを国内用(一部欧米向け)にスケールダウンしたのがCB750Fである。
▲CB750F(1981年)
車体は900Fベースなので大柄かつ剛性的にも余裕のある設計で最終的に1100Fまでラインナップを拡大している。レースでも大活躍しAMAスーパーバイク選手権やデイトナ100マイル優勝などで一躍有名になったフレディ・スペンサーが駆ったシルバーにブルーラインのCB750Fは、後に「スペンサーカラー」と呼ばれCBシリーズを代表するレプリカカラーとして何度もリバイバルされることに。今回のCB-Fコンセプトのカラーがまさにそれだ。
▲CB-Fコンセプト
ちなみに1992年に復活したCB750(CBX750ベースのRC42)にも「CB750・スペシャルエディション」として同カラーが設定されたことがある。というように、CBは常にレースと公道市販車との間を行ったり来たりしながら進化してきた。その後V4エンジンのVFシリーズやCBRへと引き継がれていくが、根底に流れるのはレーシングスピリットなのだ。
▲CB750・スペシャルエディション
ナナハンらしい威厳に満ちていた
自分でも昔、CB750Fに乗っていたことがあるが、高回転までよく回るスムーズな出力特性や大柄な車体とフロント18インチ(初期型は19インチ)による威風堂々とした乗り味、上体が起きた目線の高さがなんとも気持ち良かった。そして、上手く操れるかはライダーの腕次第。今でこそ750ccはミドルクラス扱いだが、当時はこれぞナナハンと思える威厳と華に満ちた存在だった。世代にもよるだろうが、僕らの時代のCBと言えばやはり「F」なのだ。その意味でもCB-Fコンセプトにはどうしても期待してしまうのだ。
※原文より筆者自身が加筆修正しています。