漸減続ける実日数…入院患者の在院日数をさぐる(2019年時点最新版)
一度の治療で済むような軽度の、あるいは通院による治療で済む程度の病症ならまだしも、手術などが必要な状態にまで悪化していたり、絶え間ない健康管理、投薬が必要な場合などには、入院を余儀なくされる。この入院日数も医療技術の進歩とともに、同じ病症でも昔と比べて今は随分と減っているとの話がある。今回は厚生労働省が定点観測的に実施している「患者調査」(※)の最新版公開資料を基に、入院していた人の平均入院(在院)日数の動向を確認する。
次に示すのは調査対象年の9月1日から30日の1か月の間に退院した人における、平均的な在院日数の推移。病症や対象となった退院患者の年齢などは一切区分せず、単純に退院した人全体の平均値。
一般診療所ではややぶれが生じているが、おおよそ在院日数は減少の動きを示している。この30年間で大体3割ほど減少した形となる。もっとも人口構成比やそれに連なる入院患者における人口構成比で、長期入院が必要となる高齢者の比率が増加していることから、(高齢者に限った平均在院日数が減少しても)今後は全体としての平均値の減り方は緩やかになると思われる。
また一般診療所よりも病院の方が、在院日数は長い。これは長期入院が必要となる重度の病症は、一般診療所では治療がしにくいのがおおよその理由となる。
これを年齢階層別に見たのが次以降のグラフ。まずは病院。
34歳までの若年層は、その層で発症しうる病気やケガにおける治療に必要な日数の短縮がほぼ上限に達しているようで、今世紀に入ってからは日数はほぼ横ばい。一方、35歳以上は直近に至るまで短縮の一途をたどっている。1984年から30年ほどで、ほぼ半分にまで期間は短縮されている。長期入院は患者の心身、そして経済面への負担となることから、同じ治療効果が期待できるのであれば、在院日数は短い方がよい。
続いて一般診療所。
上記説明の通り、病院と比べて重度の患者の長期治療体制を整えることが難しいため、病院よりも一般診療所の在院日数は短めとなっている。短縮化は病院同様。
なお2017年において前回調査比で14歳以下の値が増加しているが、詳細データの限りでは(グラフ化は略)、「精神および行動の障害」の病症分類での大幅な増加が確認できる。具体的には「統合失調症、統合失調症型障害および妄想性障害」「気分[感情]障害(躁うつ病を含む)」などが該当する。
もっとも精神科の医療施設が増加していることや、この方面での社会一般の理解が深まり通院・入院措置を必要とするものだとの認識が、対象者やその家族に増えてきた実情も併せ考えると、単純に14歳以下において「精神および行動の障害」の病症比率が増加していると判断するよりは、認識率が高まっていると解釈した方が妥当かもしれない。
長期入院の場合は短期の一時退院が許されることもあるが、原則は入院したら退院まで病院の外で長期間の行動をすることはかなわず、院内のみで行動を制限されることになる。昔と異なり現在ではインターネットの利用許可をする医療施設も増えているため、退屈しのぎの手段は随分と増えたが、それでも行動の束縛著しい在院そのものの長期化を望む人は多くない。
さらなる医療技術の進歩による、在院期間の一層の圧縮化を願いたいものだ。
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※患者調査
直近分は2017年10月17日から19日のうち、病院毎に指定した1日(診療所は10月17日・18日・20日のうち指定した1日)において、各状況を確認したもの。歯科診療所(いわゆる歯医者さん)は外来のみの調査。患者数は調査日当日の該当人数(抽出調査のため統計値は推計)、退院患者(の在院日数)は同年9月に退院した患者の平均値。なお2011年分は震災の影響で宮城県の石巻医療圏、気仙沼医療圏および福島県が未調査のため、それらの地域の統計値は未反映。
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