聞こえてきたグレッグ・ノーマンの怒声、首を傾げたくなる残念な現状
マスターズの心地よい余韻に浸っていた矢先、新ツアー実現の野望に燃えるグレッグ・ノーマンが声を荒げているという話が英国から飛び込んできた。
英テレグラフ紙によれば、ノーマンは「マスターズに敬意を表して、大会が終わるのを待っていた。世の中に出回っている雑音とは正反対に、すでに複数のPGAツアー・プレーヤーが契約書にサインした」と同紙に語ったという。その記事を何度も読んだ上で、私は少々首を傾げている。
同紙によれば、ノーマンは、フィル・ミケルソンの発言が公表されて大騒動と化したことは、ミケルソンへのインタビューを行なったゴルフライターとPGAツアーによって「計算されていた」とも語ったそうだ。
【これまでの経緯】
ノーマンがCEOを務めるサウジアラビアのリブ・ゴルフ・インベストメンツは、年間8試合からなる「リブ・ゴルフ・インビテーショナル・シリーズ」を今年6月から開始すること、初戦は6月9日からロンドンのセンチュリオンGCで開催することも、今年3月に発表済みだ。
残りの7試合も「名門揃い」で、米国内ではパンプキンリッジGC(オレゴン州)やトランプ・ナショナルGC(ニュージャージー州)、ジ・インターナショナル(マサチューセッツ州)などが舞台になるとされている。
賞金総額は255ミリオン(2億5500万ドル)。1試合の賞金総額は2000万ドル。チーム戦のトップ3には、さらに500万ドルが分配される。7試合終了後、個人戦のトップ3には、さらなる3000万ドルが分配される。8試合目の最終戦は10月28日からで、チーム戦のみ、総額5000万ドルが授けられる予定だという。
今年序盤は、PGAツアーの大勢のスター選手がノーマンの新ツアーへ移籍するのではないかと噂され、推測による「移籍予定者リスト」が上がるほどで、PGAツアーのジェイ・モナハン会長は「あっちの試合に出た選手には即座に出場停止処分を科す。メンバーシップ剥奪もありうる」と激しく警戒していた。
だが、移籍が噂されていたブライソン・デシャンボーやダスティン・ジョンソンといった選手たちは、その後、次々に移籍を否定する声明を出し、そもそもPGAツアーに忠誠を誓っていたローリー・マキロイが「ノーマンのツアーへ、一体、誰が行くんだ?(誰も行かないだろう)」と語気を強める場面もあった。
【ノーマンの怒りの矛先?】
マスターズ終了から2日後の12日(米国時間)に英テレグラフ紙が報じた記事は、こんな内容だった。ノーマンは、選手たちの姿勢や流れが一変した原因として、ミケルソン発言が大問題と化した騒動を指摘。昨年11月にミケルソンにインタビューを行なった米国人ゴルフライターとPGAツアーは「ミケルソンの発言を公表すれば、何がどうなるかをすべて計算した上で公表したことは疑いようもない。彼らは意図的に騒動を起こした」と同紙に語ったことが明かされていた。
同紙によれば、この件に関してPGAツアーはノーコメント、ミケルソン発言を公表したゴルフライターは「私はPGAツアーの操り人形ではない」として、ノーマンが主張した内容を否定したという。
ノーマンは「サインした」という選手たちの実名をテレグラフ紙には明かさず、「メジャー・チャンピオンもいる」と示唆するにとどめたそうだが、テレグラフ紙は4名の選手の名前を挙げており、少々驚かされた。
とはいえ、真偽のほどは今は本人たちにしかわからず、ノーマンが怒りを向けている矛先も、ノーマンの推測に基づく一方的な主張ゆえ、その真偽のほども、まったくの不明だ。
「リブ・ゴルフ・インビテーショナル・シリーズ」が6月から開始予定であり、開催コースや莫大な賞金の準備も整えられていることは、ノーマンによって発表されてはいるが、それ以外は「曖昧」「不明」のオンパレードだ。
その中で、憶測や怒声が飛び交うこの混沌、殺伐とした現状を喜ぶゴルフファンは、果たして、いるのだろうか。