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新型コロナの補助金事業の不正事案が続出 性善説は通じない日本 闇バイトなどの犯罪行為の加速も懸念

多田文明詐欺・悪徳商法に詳しいジャーナリスト
(写真:アフロ)

次々に新型コロナウイルス関連の補助金絡みの不正が発覚してきており、もはや日本は、性善説が通用しない国であることを痛感させられます。

近畿日本ツーリストが請け負った新型コロナワクチン接種業務における過大請求が発覚しました。同社は記者会見にて、過去3年間に全国の自治体から請け負った事業を調査した結果、最大で約16億円もの過大請求をしていた可能性があると発表しています。

【独自・速報】“詐欺”疑いで強制捜査 近畿日本ツーリストの新型コロナワクチン接種業務『過大請求』 全国各地で発覚…社長会見で「最大16億円」と言及 大阪府警(関西テレビ)

報道によると「再委託する段階で、請け負った人数より少なく発注した上、中には近畿日本ツーリストの幹部社員らが再委託先にデータの改ざんを依頼し、自治体に対して実際の勤務実績において虚偽の報告を行った」ケースも明らかになっています。

約16億円もの金額で、全国規模で行われている点からかんがみて、組織的な指示が強く疑われます。すでに警察から詐欺容疑も視野に同社の支店などが家宅捜索を受けています。

氷山の一角である可能性

新型コロナ事業における補助金は、国民一人一人が必死の思いで稼いで納めたお金です。それを過大請求するなど、過去に同社を利用して旅行をした人たちの税金もあるでしょうから、そうした顧客の信頼を裏切る行為といわざるをえません。その自覚がなかったとすれば、残念でなりません。

ヤフーコメントにて「このような事案は、近畿日本ツーリストだけのことであると願いたいところですが、これだけの金額の過大請求ができてしまっていることを考えると、これが氷山の一角である可能性もあります」と書き込みましたが、こう思うのには、新型コロナの補助金事業の実態について、知人の看護師から次のようなことを聞いていたからです。

4か月ほど勤務して、1回も電話を取らずの実態も

「4か月ほど(新型コロナの)相談センターで働いていましたが、1回も電話を取ることはありませんでした。こんな無駄な税金の使い方があるでしょうか。私のところには、多い時で500人ほどが働いていましたが、電話はほとんど鳴らず。夕方以降6時間で10本くらいの入電件数という事も多かったです。確かに昨年の7〜9月は入電件数が多くて大変だったようですが、今年の1月位からはすっかり減っていました。あまりに暇なので、みんな勉強していましたね」

確かに知人の言うように税金の無駄遣いという側面も考えられるかもしれませんが、急にクラスターが発生して新型コロナの感染が広がることもありえます。となれば、人員を減らすことが容易にできない事情もあったかもしれません。ただ、一つ言えることは、本当に数百人規模の人員が長期間必要だったのかについての検証は、今後のためには必要ということです。

そう思っている矢先に、約16億円の過大請求の報道が飛び込んできました。しかも一流企業が不正に補助金を得ていた事態を知り、驚きコメントした次第です。

見えづらいところに不正ははびこる

新型コロナの補助金事業の運営実態は、私たちの目には見えません。こうした見えづらいところに、不正行為は、はびこるものです。それだけに、どのような運営がなされていたのかについて、しっかりとした全国の自治体による点検、調査が必要になります。

その後も続々、新型コロナの不正申請の実態が明らかになってきています。

東京都は、新型コロナウイルスの無料PCR検査事業において、11事業者が検査数を水増しするなどして補助金を不正に申請していたとして、約183億円の交付を取り消し約17億円の返還を求めています。

無料PCR、補助金を不正に申請 11事業者が183億円―東京都(時事通信社)

記事によると、不正をした事業者は虚偽の検査実績を都に報告し、なかには検査数を実際の8~9倍に水増ししたケースもあったということで、本当にひどい話です。

大阪でも、新型コロナの無料検査に関して不正申請が発覚し、不適正と判断された額は約42億8000万円にも上っています。今後、残る355事業者の調査を始めますので、まだまだ金額が膨らむ恐れがあります。

【速報】コロナ無料検査で補助金の不正申請 調査した15のうち7事業者の総計42億円を不交付 大阪・吉村知事ら「1つしかしていないのに抗原とPCR両方したことになっている」(MBSニュース)

吉村洋文知事による会見では「抗原検査とPCR検査の一つしかしていないのに、2つしたことになっている」などという手口もあったということです。

さらに、兵庫でも新型コロナウイルスの無料検査場で運営業者が、無承認の検査キットを使って補助金を不正に申請しており「薬事承認を受けていない検査キットを延べ約4500人に使用し、補助金約450万円を不正に申請した」との報道も出てきています。

無料検査場で『無承認の検査キット』不正申請が発覚…兵庫県が110事業者を全調査へ (MBSニュース)

不正ノウハウの共有の可能性も

続々と不正の方法が明らかになるにつれて、これだけ不正が蔓延しているとなると、何かしらの不正のノウハウが共有されていた可能性も強まってきます。

というのも、持続化給付金詐欺では、その不正の絵図をかいた指示役から指示を受けた勧誘役が名義を貸してくれる人物を募り、不正が広がっていきました。また、雇用調整助成金の不正受給でも、悪質コンサルタント業者が、経営に困っている企業経営者に声をかけて不正を指南する実態もあったからです。

補助金は私たちの血税であるとともに、新型コロナウイルスの蔓延により、多くの方が亡くなりました。その命を救うための大事なお金です。いわば命にかかわるお金を不正に得ようとするなど、本当に許すことができません。

闇バイトの増加など、社会情勢への不安が加速する恐れも

今、犯罪グループによる詐欺事件が多く起きています。その多くがSNS上に載る闇バイトへの募集や、悪い知人からの声掛けにより、未成年を始めとする若者が、お金に困った状況のなか、犯罪行為に手を染めています。そして詐欺だけでなく、強盗事件まで起こしています。

今回の新型コロナ事業の補助金の不正においても、同じような構図に思えてきます。新型コロナで企業の経営に行き詰まり、お金に困った企業が少しでも利益を上げようと、不正な行為に手を染める。

お金に困って闇バイトに手を染めてしまう若者と、どこに違いがあるのでしょうか。

何より命にかかわる新型コロナの補助金を、バレなければこっそりと不正に得ようとする。より悪質性を感じてしまいます。そうした行為をする大人たちの姿を見て、子供たちはどう思うでしょうか。

「お金に困れば、少々の悪事はしてもいいんだ」

そう思う若者も出てくることにつながるのではないのか。そのことを非常に懸念しています。

確かに今回のような不正に手を染めるのは、一部の企業であるとは思います。しかし、そうした姿を数多くの大人たちが見せてしまっている現状があります。それ自体が、若者が闇バイトなどの犯罪に手を染める遠因にもなってしまっていると感じざるをえないのです。

若者は大人たちの行動をみています。そしてそれをマネします。それゆえに、見えないから不正を行うのではなく、見えないところだからこそ、法令を守って行動することが必要なはずです。

どうして多くの大人たちは、社会で正しく生きることを、身をもって教えてくれないのでしょうか。

闇バイトに手を染めて、若者が軽い気持ちで名義を貸して持続化給付金詐欺に手を染める。それは決して若者だけの問題ではないと思っています。それを防ぐためにも、不正を行わない姿を企業が身をもって見せてほしいと思います。

これが続々と発覚する、新型コロナの補助金の不正事案に対する、私の強い思いです。

詐欺・悪徳商法に詳しいジャーナリスト

2001年~02年まで、誘われたらついていく雑誌連載を担当。潜入は100ヶ所以上。20年の取材経験から、あらゆる詐欺・悪質商法の実態に精通。「ついていったらこうなった」(彩図社)は番組化し、特番で第8弾まで放送。多数のテレビ番組に出演している。 旧統一教会の元信者だった経験をもとに、教団の問題だけでなく世の中で行われる騙しの手口をいち早く見抜き、被害防止のための講演、講座も行う。2017年~2018年に消費者庁「若者の消費者被害の心理的要因からの分析に係る検討会」の委員を務める。近著に『信じる者は、ダマされる。~元統一教会信者だから書けた「マインドコントロール」の手口』(清談社Publico)

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