豊田真由子衆院議員の暴言・暴行問題をきっかけに、あらためて議員秘書のあり方や課題を考える。
「違うだろっ!」「このハゲーーっ!」
先日、豊田真由子衆院議員による元政策秘書への暴言・暴行問題が報じられました。この国会議員と政策秘書との激しいやり取りに驚いた人は非常に多かったと思います。また、都議選前というタイミングもあって、連日この暴言・暴行現場を録音した音声データの内容は繰り返しメディアでも取り上げられ注目を集めました。
本来、政策秘書とは政策立案のスペシャリストとして、議員の法案づくりなどをサポートする任務を担うのが役割です。今回の暴言・暴行問題では豊田真由子衆院議員個人の異常性ばかりに着目する報道ばかりが目立ちますが、あらためて議員秘書のあり方や課題を考える必要があるのではないでしょうか。
議員秘書はとても不安定な職業
国会議員の秘書には、公設秘書と私設秘書の二種類があります。
公設秘書は3人(政策秘書、第一秘書、第二秘書)まで公費で雇うことができます。このうち政策秘書は第一、第二秘書より上位に位置づけられる存在です。今回、豊田真由子衆院議員に暴言・暴行を受けたのは公設秘書にあたる政策秘書の立場にある人でした。ちなみに政策秘書になるには資格が必要になります。
政策秘書は国会改革の一環として1993年の国会法改正で導入されました。今年6月1日の時点で、衆議院457人(議員定数475人)、参議院231人(議員定数242人)の両院計688人の政策秘書が働いています。
給料は年齢やキャリア、あるいは政策秘書か第一、第二秘書かによって変わりますが、世間の同じ年齢の平均収入よりは高いようです。公設秘書といっても身分保障はなく、実に不安定な職業だといえます。
まず、公設秘書は国家公務員特別職ですが、国家公務員共済年金保険に加入することはできず厚生年金保険に加入します。健康保険については国会議員秘書健康保険組合に加入します。
雇用保険に関しては公務員と同じで入っていません。そもそも公務員に雇用保険がないのは、身分が安定していて、失業リスクがほとんどないからです。しかし、秘書は議員が落選したら失業ということで、非常に失業のリスクが高い職業ですが失職したからといって失業保険はありません。
公設秘書は民間の悪いところと、失業即無収入という公務員の悪いところを、合わせた存在だといえます。このように、法的に曖昧な地位に置かれているのが公設秘書の現状です。
公設秘書と私設秘書では社会保険が異なる
それでは私設秘書はどうでしょうか。
私設秘書はとくに法律で定められているわけではなく、国会議員の私費により雇用されている秘書となります。私設秘書の人数には制限はなく、勤務形態はそれぞれの国会議員事務所の事情によって様々なようです。
なお、国会議員の事務所は法人登記をしておらず法人には該当しませんが、サービス業や農業・漁業など一部の例外を除いた5人以上が常に働いている個人事業者は社会保険への加入が義務となります。そのため、該当する国会議員の事務所に在籍している私設秘書は社会保険に加入しているところが多いようです。しかし、自分で国民年金保険や国民健康保険に加入している場合もあります。また、収入は公設秘書より低いですが、失業リスクが高いのは同様です。
また労働基準法41条2号に「機密の事務を取り扱う者」には、労働時間や休日に関する規定を適用しない、とあります。議員秘書は「機密の事務を取り扱う者」に該当するとされ、労働条件は、それぞれの議員の裁量にまかされているのが現状のようです。(※参考:衆議院議員 あだち康史 Official Website)
私は以前に議員も不安定な職業であることを指摘していますが、議員秘書のあり方や課題についてもあらためて考える必要があるのではないでしょうか。
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