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アルゼンチン人コーチが語る「浦和レッズ、迷走していますね」

林壮一ノンフィクション作家/ジェイ・ビー・シー(株)広報部所属
9節のレッズ戦で4ゴールを叩き込んだ前田直輝は浦和市出身(写真:西村尚己/アフロスポーツ)

 実兄のピチは、あのディエゴ・マラドーナと共にワールドユース東京大会(1979年)で世界一となった右ウイング。息子は、栃木SC所属のエスクデロ競飛王。

 自身は、元アルゼンチンユース代表&ビーチサッカーアルゼンチン代表であるセルヒオ・エスクデロ。

 昨年末から、川越市のフットサル場で自らスクールを始め、この程、埼玉県のジュニアユース、トリコロールFCのコーチとなった彼が、名古屋グランパスに大敗を喫した浦和レッズについて語った。

撮影:著者
撮影:著者

 9節の名古屋戦もボロ負けでしたね。レオナルドは得点力があるし、エヴェルトンやトーマス・デンも頑張っています。でも、どういうサッカーを目指しているのか、正直、見えません……。パスサッカーなのか、サイド攻撃を多用するのか、走り勝つサッカーなのか、何も伝わって来ないです。選手たちも迷っているんじゃないでしょうか?

 柏木陽介がゲームメイクする際には、3人目の動きがありましたが、今はほとんどありません。関根貴大が入ればサイドからの攻撃が可能になりますが、中途半端な使われ方でした。

 

 槙野智章、武藤雄樹がベンチスタート。5日のルヴァンカップグループステージに出た宇賀神友弥は疲れが残っていたのかもしれませんし、興梠慎三もケガが癒えていないとしても、柏木や阿部勇樹がベンチ外なのは理解できません。

 勝てない、結果が出ないときにチームを奮い立たせたり、悪い流れを断ち切るのは、経験のある選手なんです。勝てないことがチームの雰囲気を悪くします。阿部のようなワールドカップで闘った選手がいれば、若手は彼の背から無数のものを学ぶ筈ですよ。

 僕は正直、監督の起用に疑問を感じます。浦和レッズはJリーグの中で5万人の観客を集めることの出来るビッグクラブです。だからこそ、優勝争いが求められます。敢えて厳しいことを言いますが、ビッグクラブであるなら、ジーコ、ネルシーニョ、長谷川健太といった経験のある指揮官が必要です。

 浦和はビッグクラブですから、ジュニア、ジュニアユース、ユースからトップチームに結びつくような一貫指導をしなきゃいけない。長期的なプランで育成しなければ。そうやって育てた選手はクラブの宝になるでしょう。原口元気とか山田直輝とか関根貴大みたいな選手を、もっともっと作らなきゃいけない。

 8日にレッズから4得点したグランパスの前田直輝は、皮肉なことに浦和市出身の選手ですね。北浦和サッカー少年団からヴェルディのジュニアに入団したんですよね。ああいう逸材を他のクラブに持っていかれてしまっている点も、今のレッズの迷走に繋がっています。いい素材を自ら発掘して一人前にする力が足りないんじゃないかな。若い選手をスカウトする係の人は、何をしていたのでしょうか?

 外国人選手はいいのですが、名古屋戦は目を覆いたくなるゲームでした。

 浦和レッズは初期の頃に僕が在籍したチームです。僕だけでなく、兄も息子も、あの赤いユニフォームを着ました。引退後、僕はレッズ・ジュニアユースのコーチをしていましたから、思い入れがあるんです。

 反省点を徹底的に炙り出して、改善に向かうことを心から祈ります。

ノンフィクション作家/ジェイ・ビー・シー(株)広報部所属

1969年生まれ。ジュニアライト級でボクシングのプロテストに合格するも、左肘のケガで挫折。週刊誌記者を経て、ノンフィクションライターに。1996年に渡米し、アメリカの公立高校で教壇に立つなど教育者としても活動。2014年、東京大学大学院情報学環教育部修了。著書に『マイノリティーの拳』『アメリカ下層教育現場』『アメリカ問題児再生教室』(全て光文社電子書籍)『神様のリング』『世の中への扉 進め! サムライブルー』、『ほめて伸ばすコーチング』(全て講談社)などがある。

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