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竹島に関する内閣府の世論調査をグラフ化してみる(2014年)

不破雷蔵「グラフ化してみる」「さぐる」ジャーナブロガー 検証・解説者
↑ 竹島の位置(外務省ページから抜粋)

竹島そのものの認知度95%、「日本固有の領土」は77%

内閣府は2014年12月25日付で、竹島に関する世論調査の結果(概況)を発表した。今調査は2014年11月6日から16日にかけて、全国20歳以上の日本国籍を有する人3000人に対し、調査員による個別面接聴取方式で実施されたもの。有効回答数は1799人。

まずは竹島そのものの認知度だが、これは95.1%と高め。一方でその竹島に関する諸問題への認知度は案外と低めで、もっとも高い値を示した「竹島は(歴史的にも国際法上も明らかに)我が国国有の領土である」ですら、竹島を知っている人のうち77.0%。調査対象母集団全体比では73.2%でしかない。

↑ 「竹島」という島の存在を知っているか
↑ 「竹島」という島の存在を知っているか
↑ 竹島に関して知っていたこと(竹島そのものを知っていた人限定、複数回答)
↑ 竹島に関して知っていたこと(竹島そのものを知っていた人限定、複数回答)

ある意味一番肝心な「竹島は(歴史的にも国際法上も明らかに)我が国国有の領土である」の値が前回調査分から大きく伸びているが、これは前回調査では「竹島は歴史的にも国際法上も明らかに我が国国有の領土である」と詳しい説明がなされていたのに対し、今年は単に「竹島は我が国国有の領土である」とのみ尋ねているのが一因。

つまり「歴史的」「国際法上」との言葉が判断を鈍らせたとも解釈できる。シンプルで分かりやすい説明の方が、認識はされやすいのかもしれない。とはいえ、竹島を知っている人でも2割強、全体では1/4強が、「竹島は我が国国有の領土である」ことを知らないことには違いない。

「竹島には現在も韓国が警備隊員などを常駐させるなどして不法占拠を続けている」は63.7%。前回とほとんど変わりない。今件は竹島そのものを知っている人に限定しているので、調査対象母集団全体では63.7%×95.1%で60.6%ということになる。報道のされ方も一因だが、「我が国は韓国側が竹島に関する何らかの措置を行う度に、韓国に対して抗議をしている」は54.6%と5割程度の認識。また、地理的・歴史的背景などを知っている人も少ない。

これらの結果を見るに及び、竹島問題については、今まで以上に多種多様な方面から、積極的な啓蒙活動と周知への努力が必要であることが分かる。

テレビが重要なカギ

「竹島」そのものを知っている人に、どのような経路で認知したのかを聞いたところ、もっとも多いルートは「テレビ・ラジオ」だった。これが96.3%。次いで「新聞」が65.6%。いわゆる4マス、しかも他の情報の取得時に合わせて、「ながら」形式で知ることができるメディアの強さが再確認できる。

↑ 「竹島」の認知経路(複数回答、知っている人限定)
↑ 「竹島」の認知経路(複数回答、知っている人限定)

逆に書籍のような「他の記事に合わせてついでに」との機会が少ないメディア、意図的にアクセスしないと目を通す機会の少ないインターネット経由はごく少数となっている。元々関心度が高くないこともあり、自発的な情報取得が行われにくいのが現状のようだ。

そのような状況をそれとなく認識しているからか、「今後の啓蒙に求められる手立て」においても、テレビや新聞に対する期待は大きい。

↑ 「竹島」への関心を高めるためにどのような取り組みが必要と思うか(複数回答)
↑ 「竹島」への関心を高めるためにどのような取り組みが必要と思うか(複数回答)

「テレビ番組や新聞を利用した詳細な情報提供」を期待する声は3/4を超えている。見方を変えると、現状の広報・放送量では啓蒙としてまだ足りない、さらに質・量共に必要であるとの認識が強いことになる。

興味深いのは展覧会の開催を求める声が3割を超えていること。認知経由としての「講演会・研修会・シンポジウム」は2.6%しかなかったが、資料をしっかりと集められた上で一望できる、(多分に公的な)状況の説明・情報の展覧会への需要が大きいことが分かる。

需要の大きさといえば「見易さ・分かりやすさを重視したウェブサイトの開設」の期待も高く、33.4%。インターネット経由で認知した人が1割を切っているだけに、適切で分かりやすく、ハードルが低いタイプの専用サイト(こちらも多分に公的なもの)が開設されることを望む声は強いようだ。

なお前回調査分と比較すると「テレビ・ラジオCMの放送」が大きく伸びているが、これは前回調査では「テレビCMの放送」で、ラジオが抜けていたため。見方を変えると、ラジオCMの需要が多分に存在するとも解釈できる。

竹島問題に関心がある人は3/4割超、無関心派も啓蒙不足が原因か

竹島に関する問題に関心があるか否かを聞いたところ、強い関心を持つ人は26.3%、どちらかといえば関心がある人は40.6%となり、合わせて66.9%が「関心派」との結果が出た。

↑ 「竹島」について関心があるか
↑ 「竹島」について関心があるか

逆にどちらかといえば関心が無い人は21.1%、強く関心が無い人は9.6%となり、合わせて30.7%が「無関心派」に属する。前回調査と比べ、いくぶん関心が薄れているようにも見える。

「関心派」の具体的内容としては、「我が国の竹島領有の正当性」を挙げる人がもっとも多く、72.7%。次いで「歴史的経緯」や「我が国の政府や地方自治体の対応・取組状況」が続く。

↑ 「竹島」への関心内容(複数回答、関心がある派限定)
↑ 「竹島」への関心内容(複数回答、関心がある派限定)

見方を変えれば同問題について広報・啓蒙・公知を行う場合、これらの要件に重点を置いて情報を配信することで、多くの需要に応えることができることになる。

一方、「無関心派」が関心を示さない理由として挙げたのは「自分の生活にあまり影響が無い」で、64.1%。次いで「竹島に関して知る機会や考える機会が無かった」が35.7%と続いている。

↑ 「竹島」に関心が無い理由(複数回答、関心が無い派限定)
↑ 「竹島」に関心が無い理由(複数回答、関心が無い派限定)

竹島問題は国レベルでの外交・内政問題で、一人一人の立ち位置から見れば、直接生活には関係の無い範ちゅうの話との認識も仕方がないという考え方もある。ただしこれは周辺海域の施政権にも関わる問題となり、対応次第では同島以外の問題にも連鎖反応が生じるリスクも小さくない。

画像

要は「竹島一島だけの問題で、自分の日常生活には影響が無い」と回答者が考えているに過ぎない、見方を変えれば回答者の認識・情報が不足していることになる。この観点では第2位の回答「竹島に関して知る機会や考える機会が無かった」も近しいものとなる。

第3位以降の「内容が難しい」「紛争や武力衝突など負のイメージを連想する」は、個々の心境・性質の側面が強く、仕方のない面もある。しかし第1位・第2位の理由は、多分に啓蒙・情報公知不足によるところが大きい。今調査の調査要目にある「(調査目的として)竹島に関する国民の意識を調査し、今後の施策の参考とする」を誠実に実行することを期待したい。特に前回調査分と比べ「自分の生活にあまり影響がない」とする意見が増えている点には、その実情について大いに啓蒙することが求められよう。

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「グラフ化してみる」「さぐる」ジャーナブロガー 検証・解説者

ニュースサイト「ガベージニュース」管理人。3級ファイナンシャル・プランニング技能士(国家資格)。経済・社会情勢分野を中心に、官公庁発表情報をはじめ多彩な情報を多視点から俯瞰、グラフ化、さらには複数要件を組み合わせ・照らし合わせ、社会の鼓動を聴ける解説を行っています。過去の経歴を元に、軍事や歴史、携帯電話を中心としたデジタル系にも領域を広げることもあります。

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