混沌とするゴルフ界。「このツアーを去る日が待ちきれない」ガルシアも「元世界一」2人もノーマン初戦へ
ルールを重んじるゴルフのプロでありながら、ルール委員に「このツアー(PGAツアー)を去る日が待ちきれない」などとPGAツアーの大会で怒声を上げたばかりのセルジオ・ガルシアが、その言葉を裏付けるかのように、グレッグ・ノーマン率いる「リブ・ゴルフ・インビテーショナル・シリーズ」の初戦にエントリーしていることがわかった。
6月9日から11日の3日間、ロンドンのセンチュリオンGCで開催予定の初戦には、元世界ランキング1位のマーチン・カイマーもエントリーしていることが、英国紙テレグラフによって報じられた。カイマーは2010年全米プロ、2014年全米オープンを制し、メジャー2勝、PGAツアー通算3勝、世界12勝を誇る実力者だが、近年の成績は振るわず、現在の世界ランキングは191位だ。
すでにノーマンはロンドン大会に「世界ランキングのトップ50のうちの15名がエントリーしている。元世界一が2人いる」と語っていたが、その「元世界一の2人」は、エントリーしていることを自ら明かしたリー・ウエストウッドとカイマーの2人を指していたと考えられる。
スペイン出身のガルシア、ドイツ出身のカイマー、英国出身のウエストウッドは、いずれもPGAツアー(米ツアー)とDPワールドツアー(欧州ツアー)の双方のメンバーシップを有している。
米国側に目をやれば、ノーマンのツアーの初戦となるロンドン大会にPGAツアーのメンバーとして最初にエントリーしたのはロバート・ガリガス。そして、自身の発言が災いし、姿を潜めているフィル・ミケルソンもエントリー。ミケルソンに関しては、ノーマンのツアーの全試合に出場する契約をすでに交わし、前払い金も受け取っているという報道もある。
そして、ロンドン大会にエントリーした選手たちは、いずれも自身が所属するPGAツアーやDPワールドツアーにロンドン大会への出場許可を申請中とされているが、今、事態がより深刻で切羽詰まっているのは、欧州のDPワールドツアー側の状況だ。
PGAツアーもDPワールドツアーも自分たちのツアーのテリトリー内でノーマンが新たな大会を開催し、そこに自分たちのツアーの選手が出ることを認めることは、したくないし、できないはずである。
例えるなら、見たくもない「どんちゃん騒ぎ」を他人が他人の庭で開くのなら見て見ぬふりもできるが、その不愉快な喧噪が自分の庭の一角で開かれ、しかも自分の大切な家族の一員が「参加する」と言われたら、決して認めたくないと思うだろうし、認めないだろう。
PGAツアーのジェイ・モナハン会長は、かねてからノーマンの新ツアーを激しく警戒してきたが、その初戦となるロンドン大会に関しては、その開催場所が米国外ゆえに、出場を希望しているPGAツアーの選手たちに出場許可を出すのではないかと、米メディアは見ている。
しかし、DPワールドツアーのキース・ペリー会長は、こともあろうに自分たちの本拠地である英国ロンドンで開催されるノーマンのツアーの初戦にエントリーした欧州選手たちを決して許さないのではないかと見られている。だからこそ、事態は深刻なのだ。ペリー会長がガルシア、カイマー、ウエストウッドらのDPワールドツアーのメンバーシップに何らかのペナルティを科す可能性はきわめて高いと言わざるを得ない。
そして、米国オレゴン州ポートランドのパンプキンリッジで開催予定のノーマンのツアーの第2戦(7月1日~3日)の際は、今度はPGAツアーのモナハン会長が出場許可を申請するPGAツアーの選手に対して厳罰を科すと考えられる。
米メディアの一部からは、これまで何度もルール委員やギャラリーに対して悪態をついてはゴルフ界を騒がせ、今回もルール委員に向かって「このツアーを去る日が待ちきれない」「あと数週間でアナタたちを相手にしなくてすむようになる」などと怒声を上げたガルシアは「ノーマンのツアーが連れ去ってくれたら、そのほうがありがたい」などという論調で感情的に綴った記事まで発信されている。
もはや、ゴルフ界の混沌ぶりは激化するばかりだ。