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大阪場所で11勝 豪ノ山の出足の強さとその素顔とは 師匠の元大関・豪栄道も太鼓判

飯塚さきスポーツライター/相撲ライター
5月場所後の新入幕を狙う豪ノ山(写真:筆者撮影)

大阪場所で十両の土俵を沸かせた力士の一人、豪ノ山。元大関・朝乃山をはじめ、幕内から番付を下げてきた逸ノ城、栃ノ心ら実力者がひしめくなか、得意の突き押しと前へ出る馬力を武器に11勝を挙げた。デビューから丸2年、新十両から約1年。若き逸材に初インタビューを行った。師匠である武隈親方(元大関・豪栄道)のコメントと共に紹介する。

11勝の快挙も「満足はしていない」

――大阪府寝屋川市出身でご当所だった大阪場所では、初日から白星スタート。3日目からも連勝街道をひた走る活躍でした。振り返ってみていかがですか。

「そうですね、まず白星が出れば気持ち的に楽なんで、初日に勝てたのはよかったです。ただ、2日目で自分のよくないところが出て負けてしまったので、それを意識して3日目以降に修正できたかなと思います。足も出ていたので、今場所は自分の相撲を取れているなと感じていました」

――目指している自分の相撲とはどんなものですか。

「まわしを取らずに前に出る押し相撲です。それを徹底していけばいいと親方にも言っていただいているので、それを極めていきたいなと思っています」

――印象に残っている取組はありますか。

「負けている相撲は全部、組んだり差したり、自分の相撲じゃないというか、親方にその形じゃだめだぞと言われている形で負けているので、もっと我慢していればもっと勝てたんじゃないかなと思います。よかったのは欧翔馬関戦。いままで全然勝てなくて苦手だったんですけど、前に出て自分の相撲が取れたので、そこが結構大きかったかなと思います。逸ノ城関と対戦できたのもいい経験でしたし、前に押していけたので自信になりました」

――15日間を振り返って、どんなふうに総括しますか。

「負けた相撲はよくない相撲が出ていて、例えば狼雅関にも前は勝ったのに今回負けたので、全体として満足はしていないです。もっともっと我慢して自分の相撲が取れればと思いました」

力士が大好きで角界入りの夢をかなえた

――関取がお相撲を始めたきっかけはなんだったんですか。

「小さい頃から体が大きかったので、親が何かスポーツをやらせたくて、いろいろ行くなかで自分が『来週も行きたい』って言ったのが相撲だったみたいです。幼稚園の年長くらいだったと思います。小学生になるともう大相撲も力士も大好きになっていて、境川部屋によく遊びに行かせてもらっていました。将来はお相撲さんになるのがずっと夢やったんで、いまこうしてなんとか相撲できているのがうれしいです」

――あこがれの人はいますか。

「境川部屋の力士が好きで、よく見ていたのは親方と豊響関。2人の走る感じの相撲がめっちゃ好きでした。自分はまだまだ全然です。あと、2つ上の貴景勝関(兵庫県出身)は、小学生の頃から稽古に行ったりして面倒を見てもらっていました。貴景勝関に追いつきたくて同じ埼玉栄(高校)に行ったりして、ずっと目指しています。貴景勝関みたいに、まわしを取らせない、徹底的な押し相撲を目標としています」

――埼玉栄高校、中央大学を経て、2年前の大阪場所で三段目付出デビュー。一時は首のケガなどもありましたが、この2年間を振り返っていかがでしたか。

「コロナ禍でデビューして、巡業に参加したのも最近初めて。首のケガをしたときに、親方からの助言で休場を選択させてもらって、きちんと治療して復活できたのは大きかったです。その後の場所で幕下優勝できました。本当にいい環境でやらせてもらっているので、強くならないといけないですね」

――巡業は、参加してみていかがでしたか。

「九州場所終わりから初めての参加でしたが、いろんな力士と相撲が取れて、幕内力士がぶつかりで胸を出してくれて、本当にいい経験でした」

稽古場でも真面目に取り組む姿が印象的だった(写真:筆者撮影)
稽古場でも真面目に取り組む姿が印象的だった(写真:筆者撮影)

――先場所はご当地で、お客さんからの声援も戻りました。コロナ禍でデビューした関取にとって、徐々に日常に戻りつつある土俵はうれしかったのでは。

「はい、豪ノ山って言ってもらったり、本名を叫ばれたり(笑)、小さい頃に観客として見ていた土俵に自分が立っているのは感慨深いものがありましたね。地元の友達は、相撲なんて興味ないはずなのに、自分が出ているからと見てくれたり連絡くれたりするので、続けていてよかったなって思います」

――すごく励みになりますね。来場所以降の目標は。

「しっかり自分の押し相撲を徹底して取って、まずは幕内に上がるのが目標です。来場所は十両の上のほうでやらせてもらえるので、二桁勝って幕内を確実に決められたらなと思います」

師匠・武隈親方からのコメント

豪ノ山の一番の魅力は馬力。押す力があります。自分が稽古場でいつもアドバイスしているのは、まわしを絶対取らないこと。負ける相撲って全部四つに組まれて負けているので、基本的には押しと突きの2つを大事にしています。昔の全盛期の出島さんみたいな出足、根こそぎもっていくスタイルが似合っているかなと思いますね。

普段は、穏やかな性格です。だいぶ相撲界の厳しさは身についてきたと思います。関取に上がったばかりの頃は、十両力士に気後れする部分や甘さもあったけど、それがなくなってきたから番付も上がってきたんじゃないですかね。場慣れとか、15日間のペース配分がうまくできるようになってきたのかなとも思います。

場所前は調子がよかったので、10番くらい勝つかなとは思っていました。ここでほっとせずに、また来場所大勝ちして早く幕内に入ってほしいですね。我慢強く、気持ちの強さを持った力士になってほしい。気持ちも徐々に鍛えられて強くなっていくもんやと思います。課題は右の半身。それをなくせばもっと白星がついてくると思うし、稽古場で徐々に直していけば、これからまた楽しみですね。

スポーツライター/相撲ライター

1989(平成元)年生まれ、さいたま市出身。早稲田大学国際教養学部卒業。ベースボール・マガジン社に勤務後、2018年に独立。フリーのスポーツライター・相撲ライターとして『相撲』(同社)、『Number Web』(文藝春秋)などで執筆中。2019年ラグビーワールドカップでは、アメリカ代表チーム通訳として1カ月間帯同した。著書に『日本で力士になるということ 外国出身力士の魂』、構成・インタビューを担当した横綱・照ノ富士の著書『奈落の底から見上げた明日』。

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