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9月8日の15時に市場で何が起きたのか

久保田博幸金融アナリスト
(写真:Natsuki Sakai/アフロ)

9月8日の日経平均は上海総合指数が上昇していたにも関わらず、下げ幅を拡大させ日経平均の引けは433円安となり、7か月ぶりの安値をつけた。昨年末の引け値を下回り、年初からの上昇分を打ち消した格好となった。外為市場ではドル円も一時119円を割り込むなど円高も進行していた。

ところがこの日の東京市場の引け後に相場は急変する。CMEの日経平均先物は17400円割れから急反発し、あっさりと18000円台を回復したのである。ドル円も同様に上昇し、120円台を回復していた。まさにV字回復となった。また、同じタイミングで米株の先物も上昇していた。

この相場変動はどのような説明が可能なのか。8日には日経平均やドル円にかなりの売り圧力が掛かっていたことは確かである。上海総合指数の動きとも乖離しつつあったこともそれを示していた。

日経平均先物は8月25日のナイトセッションで17160円まで下落後、中国の利下げ等もあってチャイナリスクがやや後退し、買い戻しが入り28日に日経平均は19000円台を回復した。ところがFRBの早期利上げも意識されて再び上値が重くなり、日経平均は再度下落基調となった。

あらためて東京株式市場の地合いの悪化もあり、日経平均は17160円という目先の安値も意識されてショートポジションが積み上がっていた可能性がある。9日の日経新聞が伝えていたような仕組み債などが絡んでの売りが入っていた可能性もあろう。

しかし、8日の15時過ぎに地合は急変する。その要因が実は見当たらない。通常はこれほどの相場変化が生じるには、何かしらのヘッドラインニュースが影響する場合が多い。ところが相場にインパクトを与えるようなニュースはこのタイミングでは流れていなかった。国内の大手損保会社が英国の損保会社を買収との記事があり、それを見越した円売りドル買いが入ったとの観測もあったようだが、後講釈のようにもみえる。

国内市場から海外市場に移る東京時間の15時というタイミングで何が起きていたのか。動きから見ると何かしらの手口が入っていた可能性がある。日経平均先物などのショートの積み上がり方、上海株の上昇受けての米株の上昇まで見越した仕掛けが入っていたのかもしれない。東京市場が引けてからの動きであり、GPIFや日銀による買い支えも考えづらい。タイミングからみると海外ヘッジファンドなどが積み上がったショートをみて買い仕掛けをしてきた可能性がある。2012年11月のアベノミクスの登場時にも、欧州危機により円買いと日本株売りのポジションが積み上がっていたところにヘッジファンドは大量の買い仕掛けを行っていた。今回も安倍自民党総裁が無投票で再選され、三本の矢を強調していた。アベノミクス第二弾に期待したわけではないかもしれないが、タイミングとして仕掛けやすいものであったのかもしれない。

9日の日経平均は1000円以上の上昇となった。しかし、これで日経平均が底打ちしたとはまだ言い切れない。今回の相場変動の背景にはチャイナリスクとともにFRBの利上げ観測もある。世界銀行のチーフエコノミストが、世界経済が一段と安定するまで、FRBは利上げを見送るべきとの考えを示したことも8日の米株の上昇要因のひとつとなったが、来週のFOMCでの利上げ決定の可能性は残る。このため、相場の変動はまだ続くとみておく必要があろう。

金融アナリスト

フリーの金融アナリスト。1996年に債券市場のホームページの草分けとなった「債券ディーリングルーム」を開設。幸田真音さんのベストセラー小説『日本国債』の登場人物のモデルともなった。日本国債や日銀の金融政策の動向分析などが専門。主な著書として「日本国債先物入門」パンローリング 、「債券の基本とカラクリがよーくわかる本」秀和システム、「債券と国債のしくみがわかる本」技術評論社など多数。

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