匿名精子ドナーの父親とついに対面! ドナー開示の法律改正で実父を知る権利を得たドイツ人女性の思い
匿名の精子ドナーにより出生したドイツ人女性サラ・Pさん(22歳)が、このほど「実の父親」と対面した。今年2月ドナー開示の裁判で勝訴した彼女の夢「自分のアイデンティティーを知りたい」がついに実現した。
サラさんが、匿名の精子ドナーにより生まれたと知ったのは、4年前の大学受験を目指していた時のことだった。
試験の準備で追われていたサラさんは、実の父親が他にいる事実を母親から明かされた。
今まで父親と思っていた男性は生殖不能であるため、1990年代前半にエッセンにある生殖医療センターで精子を提供してもらい、母親はサラさんを妊娠したという。
晴天の霹靂とはまさにこのことで、サラさんは、頭の中が真っ白になった。父親、母親、そして子供というごく当たり前の家族の構図が一瞬にして崩れた瞬間だった。
だが、悲しみにくれていたのはサラさんだけではなかった。生まれてはじめて育ての父親の泣いている姿に遭遇したサラさんは、「実の父親でないのに、なぜか今まで以上に彼との距離が近くなった気がした」と告白している。
サラさんは母親の証言をもとに、自分の出自を知りたいと思い、実の父親探しを始めた。
ところが、エッセンのドナーセンターでサラさんの母親を担当した教授は、当時の記録はすでにないと回答。それでも、実の父親を知る術はあるはずと、弁護士に依頼してドナー開示の裁判を起こしたのだ。
裁判を起こした当時はすでに、サラさんはドイツメディアで大きな波紋を投げかけていた。匿名精子ドナーで生まれた子供がメディアに登場し、自分の思いを訴えたのは、前代未聞だったからだ。
国内では情報開示に賛否両論の議論が飛び交い、サラさんは話題の人となった。
裁判は、一度敗訴になったものの、ノルトライン・ウェストファーレン州のハム上級裁判所へ訴えを持ち込んだことが転機となった。そして今年2月、同裁判所は、サラさんの訴えを認める判決「匿名精子ドナーの情報を明らかにすること」を命じた。
「子供の人権尊重のほうが精子提供者の匿名性より重要である。子供の基本形成にも結びつくため、実の父親を知る権利がある」
実の父親とされる男性は、サラさんが今年シュテルンTV報道番組に出演したのを見て、名乗り出た。精子提供IDナンバー261のこの男性は、サラさんが突き止めた提供者のナンバーと一致。男性は、学費を捻出するために、8年間にわたり精子提供をしたと話している。
DNA鑑定後、この男性は99、9%サラさんの父親であることが判明し、親子と確認された。
そして、5月末、夢だった父親との対面が叶ったサラさんは「とっても幸せ」と感想を述べている。
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