朝日新聞の「WHOは『布マスクどんな状況でも勧めない』」記事は誤解生むのでは? 案内は医療従事者向け
朝日新聞が4月2日に公開した「布マスクは有効? WHOは「どんな状況でも勧めない」」との記事が物議をかもしています。
具体的にはタイトルでは「どんな状況でも勧めない」とあるのに対し、記事末では専門家が「他人にうつさないという目的を考えれば、『つけない』という選択肢はない」と話しておわっているためです。
おそらく記事を書いた人と見出しをつけた人が別々のためこのようなタイトルになっているのだと思われますが、そもそもの話として見出しになっているWHOの案内は一般人に向けたものではありません。
WHOの案内は専門家や医療従事者向け
WHOが「布マスクはどんな状況でも勧めない」と案内しているのは、以下のページです。
ただ、概要に書いてあるようにこの案内は「公衆衛生および感染予防および管理(IPC)の専門家、医療管理者、医療従事者、および地域の医療従事者を対象」としています。
つまり私たちのような一般人向けのものではありません。これをもって「布マスクはどんな状況でも勧めない」と一般論のように取り上げるのは不適切ではないでしょうか。
布マスクの感染率が高い論文は医療用マスクとの比較
この「布マスクは効果がない」論を補強するものとして、ネット上では医療用マスクと布マスクの効果を比較した医学論文がよく取り上げられています。
この論文はベトナムの病院において、医療従事者を勤務中はつねに医療用マスクをつけるグループ・同布マスクのグループ・マスクのつけ外し自由の3つのグループにわけ、呼吸器疾患・インフルエンザ・ウイルス性呼吸器感染症にどれだけ感染したかを調べたものです。
その結果、つねに布マスクをつけていたグループの感染率が有意に高いことがわかったとまとめられています。
また、マスクのつけ外し自由のグループ内で医療用マスクのみをつける人、布マスクのみをつける人にわけて比較したところ、やはり布マスクのみをつけるグループの感染率が高かったとのことです。
この結果をもって「布マスクは効果がない」とされているのですが、この論文は医療従事者における医療用マスクと布マスクの効果を調べたものであって、布マスクとマスクをまったくつけない人を調べたものではありません。
ちなみにマスクのつけ外し自由のグループでは、そもそもマスクの着用率が非常に高かったとのことです。
WHOタイ「具合が悪い場合は、布か紙のマスクを着用してください」
このほか「布マスクはどんな状況でも勧めない」の反論として、WHOタイが2020年3月26日に発表したレポートもよく引き合いに出されています。
WHOタイのレポートでは「公衆への勧告と助言」として「具合が悪い場合は、布か紙のマスクを着用してください」と案内されています。
他人にうつさないために、布マスクをつけましょう
さまざまな情報が流れており混乱しそうですが、簡単にまとめるとこうです。
- WHOが布マスクを勧めないのは医療従事者
- 医療用マスクと比較して布マスクの感染リスクは高い
- 布マスクはきちんと洗浄・乾燥しないと汚染される
- 最近のWHOレポートでは具合が悪い人に布・紙マスクを勧めている
- 布マスクは手についたウイルスが口や鼻に触れるのを防げる
- 布マスクは他人にうつさない効果を期待できる
というわけで布マスクの効果は医療用マスクと比較すると低くなりますが、他人にうつさないためにも布マスクをつけましょう!
4月3日12時16分追記
布マスクの効果について本文に書いていないとの指摘があったため、朝日新聞の記事から紹介しておきます(簡略化された内容は上段で紹介した記事にも掲載されています)。
このほか朝日新聞は布マスクの作り方も案内しています。
なお、この記事の本意は「布マスクをつけましょう(布マスク効果なしの記事に誘導されて感染者が布マスクなしで出歩くのは勘弁して欲しい)」であり、安倍政権による布マスク2枚配布の政策を擁護するものではありません。
布マスク配布発表時の筆者の反応は以下です。
ようは「マスクじゃなくてお金配れ」と批判しています。こちらからは以上です。