JXも東燃ゼネも東芝もシャープも、統合することで本当に事業再構築できるのか?
11月下旬、JXホールディングスと東燃ゼネラル石油が経営統合の交渉に入った、というニュースが流れたと思ったら、今度は東芝、富士通、VAIOがパソコン事業の統合を目指すというニュースが入ってきました。さらに東芝は白物家電の事業を分離させ、シャープと事業統合するというニュースも出た。こんなに経営統合、事業統合して、本当に効果があるのでしょうか。
そもそもJXホールディングスも、もともとは新日本石油と新日鉱ホールディングス。東燃ゼネラルも、東燃とゼネラルが合併して誕生した会社です。統合した会社が、また別の統合してできた会社と統合するというケースです。このように、企業がまるごと合併して統合するケースもあれば、家電メーカーのように、ある事業が分離独立したうえで他メーカーの事業と統合に至るケースもあります。
企業の組織再編には、いろいろな目的があり、その目的に合わせて多様な種類がありますが、『統合』のケースでは、現場にいなければわからない、注意すべきことがあります。
それは、統合することで、本当に正しく事業再構築ができるのか? ということです。重複する店舗や、設備、販路などを整理し、事業効率化をはかることはそれほど難しくはありません。なぜなら、整理し再編する対象が「モノ」だからです。しかし対象が「ヒト」である場合はとてもデリケートな要素が含まれています。
財務、経理、人事といった管理部門は当然のことながら、営業や開発、製造部門においても重複するポジションがあれば、当然に整理・削減対象となります。事業統合が発表されれば、当然に現場は戦々恐々とすることでしょう。
さて、ここでぜひ注目してもらいたいのが、誰が人員整理「される」のかではなく、誰が人員整理「する」のか、です。外部の専門コンサルタントが介入し、粛々と執行するのならともかく、内部で行うのであれば、「管理」と名の付く組織や人が人員整理「する」のだと捉えて間違いありません。
つまり「管理部門」か「管理者」だということです。
しかし、前述したとおり、大抵の場合、重複する組織は「管理部門」であり、重複するポジションは「管理者」です。整理する側と整理される側が同じになるケースが非常に多く、内部主導で統合を進めると、事業再構築は単なる”お題目”と化します。
結局は社内で立場の弱い非正規社員であったり、管理部門に「口」では勝てない実直な工場長や店長、現場のリーダークラスなどが整理対象となってしまいます。ホワイトカラーよりもブルーカラーと呼ばれる人たちのほうが多く人員整理され、お客様と一番近いところで向き合っている生産や販売の現場から人が消えていきます。
もちろん、重複する管理部門や管理者たちも整理対象にはなります。
誰がどう見ても「名ばかり管理職」で、退職勧奨されて仕方がないだろうという人たちがその対象です。しかし、そういう方々は他社と事業統合する前から整理対象であったはずで、ここをハッキリさせる必要があります。
というか、事業統合しても「名ばかり管理職」の方のポジションは重複しようがありません。まさに”名ばかり”だからです。
統合を機に、整理しなければならない組織や人は、一見機能してそうに見えて、正しく機能していない組織や人なのです。社内でうまく立ち回り、忙しそうに仕事をこなしているように見せている人。長時間の会議だの、不必要な資料作成などを他者に強いる組織や人は、まさにドンピシャです。しかし、そういう人ほど要領がいいわけですから整理対象にならず、統合後も生き残ります。そしてこのような「一見機能してそうに見えて機能していない組織」「声高に改革だ、イノベーションだと言っている割にはいるだけで邪魔な管理者」の組織内密度が高まれば高まるほど、組織の荒廃は進んでいきます。
特に、東芝は深刻でしょう。利益を水増しして公表していたわけですから、見かけよりもはるかに組織が荒廃しているにも関わらず、抜本的な組織再編を先送りし続けてきたからです。JXと東燃ゼネラルも、統合を繰り返しているため、組織内に老廃物が溜まっていないか注意すべきです。
事業統合することで一時的な株価は上がるかもしれません。しかし組織の在り方をすべてリセットするぐらいの覚悟で取り組まない限り、中長期的な視点で正しい事業の再構築をすることはできないと私は思います。