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高齢者の犯罪被害状況を探る(2014年)

不破雷蔵グラフ化・さぐる ジャーナブロガー 検証・解説者/FP  
↑ 高齢者数の増加と共に、犯罪被害件数も増えているとの話もあるが……

数は減少、比率は増加…高齢者が被害者の犯罪

社会の高齢化に伴い、体力も判断力も劣る高齢者が被害者となる犯罪事案も増加し、これもまた社会問題化しているとの話がある。その話の真相も合わせ数字的状況を、内閣府の「高齢社会白書」などを基に確認していく。

まずは高齢者(今件では65歳以上と定義)が刑法犯罪の被害者として認知された件数の推移を確認する。高齢者だけでなくその他の世代も含めた刑法犯罪認知件数そのものが、戦後最大を記録したのは2002年。高齢者を対象とした件数もその年が最大値(22.5万件)となる。それ以降は「件数」は減少の一途をたどっているが、全認知件数比を算出するとむしろ増加傾向にある。

↑ 高齢者の刑法犯被害認知件数(万件)(高齢社会白書(2014年版))
↑ 高齢者の刑法犯被害認知件数(万件)(高齢社会白書(2014年版))

つまり一部で言われている「高齢者による犯罪以外は増加中」という話は、件数の観点では間違い、全体数に占める比率の点では正解となる。

2009年には高齢者における認知件数・比率共に多少ながら減った。しかし2010年以降は件数が減る一方で比率は増加、そして直近の2013年では件数も増加。これが比率を大きく底上げ(前年比で1.0%ポイント増加)する形となった。

2013年における、全被害認知件数に占める高齢者の割合は13.1%に達している。つまり認知されている刑法犯による被害者全体の7.6人に1人は高齢者との計算になる。全人口比における高齢者比率が増加しているのが主要因で、注視すべき状況には違いない。

振り込め詐欺の動向

高齢者が受ける犯罪被害としてもっとも多く知られているのが、いわゆる「振り込め詐欺」。これは今世紀に入ってから大きな社会問題化しており、関係当局では2008年に入り本腰を上げて対策に取り組んだ結果、2009年以降は大きく減少することとなった。

↑ 振り込め詐欺の認知件数・被害総額の推移(高齢社会白書(2014年版))
↑ 振り込め詐欺の認知件数・被害総額の推移(高齢社会白書(2014年版))

ただしグラフの注記にもある通り、「警察官などを装ってキャッシュカードを直接受け取る手口のオレオレ詐欺」をはじめ、官公庁職員や金融関係者を装ったタイプの手法など、容疑者側も手を変え品を変えているのが確認できる。また未公開株などの有価証券や外国通貨等の取引名目の詐欺も増加中。白書側でもこれらの一部には、従来の振り込め詐欺グループが手法を変える形で関与していると推測している。

昨今では件数そのものは減退しているものの、金額がそれに反して増加していること、社会情勢に即時対応する形での詐欺が増えているのが特徴。世の中に何か変化があった、不特定多数が見聞きするような事案が生じたら、それに関連する詐欺(直接相対することなく金銭を搾取する、この類のものは特殊詐欺と呼ばれている)が登場すると考えて、まず間違いない。このあたりの事情は対高齢者に限らず、また媒介が物理的なものですら限らない(例えばインターネット上の詐欺)。

団塊世代の高齢化に伴い、退職金などの受領を受けて金融資産をいちどきに多分に所有するようになった高齢者人口の増加により、金銭に絡んだ刑法犯罪、特に振り込め詐欺の類による高齢者の被害が増加していくことは、ほぼ間違いない。

このような事例の場合、仮に容疑者側が捕まったとしても、搾取された金銭が戻ってくることはあまり無い。それにより、多くの高齢者にとって数少ない命綱が絶たれることになる。本人はもちろん、周囲に高齢者がいる人は、十分以上に注意し、配慮を払ってほしいものだ。

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グラフ化・さぐる ジャーナブロガー 検証・解説者/FP  

ニュースサイト「ガベージニュース」管理人。3級ファイナンシャル・プランニング技能士(国家資格)。経済・社会情勢分野を中心に、官公庁発表情報をはじめ多彩な情報を多視点から俯瞰、グラフ化、さらには複数要件を組み合わせ・照らし合わせ、社会の鼓動を聴ける解説を行っています。過去の経歴を元に、軍事や歴史、携帯電話を中心としたデジタル系にも領域を広げることもあります。

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