コロナ禍以降、初の本格的ダブル流行 増加する「肺炎」
インフルエンザと新型コロナの感染者数が増加し続けています。定点医療機関あたりの感染者数が1人を超えるとインフルエンザは流行期とされるため、これまで定義上のダブル流行は存在していたのですが、今回ほど本格的にダブル流行するのはコロナ禍以来初めてのことです。医療現場では、再び「肺炎」を発症する方が増えています。
現場はほぼ「警報」レベル
現在、新型コロナの変異ウイルス「JN.1」が猛威を振るっていますが、インフルエンザも流行がおさまらないままリバウンドが始まりました。実質的にダブル流行の状態となっています。
定点医療機関あたりの感染者数は、新型コロナ16.15人、インフルエンザ22.62人とかなりの数にのぼっています(図1)。
定点医療機関というのは、全国の代表的な約5,000の内科・小児科の医療機関のことで、1週間あたり何人感染者が記録されたかを報告しています。30人を超えると、現場は相当大変というイメージです。
定点医療機関あたりのインフルエンザの感染者数は、1人超で「流行期入り」、10人超で「注意報」、30人超で「警報」と定義されています。新型コロナにはこうした分かりやすい目安はありませんが、インフルエンザと同じような感覚だと思います。
ですから、単純計算で定点医療機関あたり約39人の5類感染症と向き合っている計算になるので、現在は「警報」のような流行水準にあると理解していただいてよいでしょう。
再び目にするようになった肺炎
オミクロン株が主流になった頃から、新型コロナによる肺炎は鳴りを潜めるようになりました。その後、2023年5月に「5類感染症」へ移行し、「あのような肺炎に出合うことはもうあまりないかもしれない」と思っていました。
その後も、新型コロナで入院要請があっても、脱水や発熱で基礎疾患が悪化している高齢者が多く、肺炎で難渋するというのはピーク時ほど多くはありませんでした。
しかし、今回の波では、以前と異なる現象が見られています。それは、インフルエンザと新型コロナの両方で肺炎が増えているということです。コロナ禍初期に目にしたような、不気味なウイルス性肺炎を見る機会が増えてきたのです。
健康な人の胸部画像と比べると分かりますが、黒い肺の中に白いモヤモヤした綿菓子みたいなカゲが見えます(図2)。これがウイルス性肺炎です。
また、以前書いたように、一度よくなりつつあるウイルス感染症が細菌感染症などで再度ぶり返すというケースもしばしば見受けられます(3)。
まとめ
しばらく見なかったウイルス性肺炎の患者さんに遭遇する頻度が増えているというのは、気がかりなことです。
これほどウイルス性肺炎が多くなる時代がやって来るなら、下火になっている新型コロナやインフルエンザのワクチンの優先度は、もう少し高いと認識いただいたほうがよいかもしれません。
ダブル流行のピークがいつか、誰にも分からないため、個々の感染対策を継続ください。密な状況でのマスク着用、手洗いなどの手指衛生、加湿器を使って室内の湿度を40~60%に維持するといった対策が効果的です。
インフルエンザや新型コロナと思われる発熱などを経験した後、咳や息切れが長引く場合、医療機関を受診するようお願いします。
(参考)
(1) 新型コロナウイルス感染症に関する報道発表資料(発生状況等)2023年6月~(URL:https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/0000121431_00438.html)
(2) インフルエンザに関する報道発表資料 2023/2024シーズン(URL:https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/kenkou_iryou/kenkou/kekkaku-kansenshou01/houdou_00014.html)
(3) 新型コロナの入院が増加 「ぶり返し肺炎」に注意(URL:https://news.yahoo.co.jp/expert/articles/e3fa15d6fd6fa027cbd08de7236fbdb68c4be0ae)