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MLBが10年連続で年間三振数を更新した意味とは?

菊地慶剛スポーツライター/近畿大学・大阪国際大学非常勤講師
三振の連続試合数でMLB記録を塗り替えたアーロン・ジャッジ選手(写真:USA TODAY Sports/ロイター/アフロ)

 AP通信が28日に報じたところによれば、27日の公式戦全試合が終了して時点で、今シーズンのリーグ全体の三振数が3万9618個となり、年間三振数が10年連続でMLB記録を更新したという。

 改めて野球専門データ分析サイトの『BASEBALL REFERENCE』でデータを検証してみると、2008年に年間三振数が3万2884に達し、2004年に樹立されたMLB記録を塗り替えると、それ以降毎年増加の一途を辿り今シーズンは初めて3万9000を突破している。このまま推移すれば、シーズン終了後には4万に達する可能性も残されている。

 一方で今月19日には、ステロイド時代と言われた2000年に樹立された年間本塁打数のMLB記録を更新。本塁打が量産されている傾向にある。

 年間三振数と年間本塁打数──。まるで相反するような2つの記録が同時に更新されるという奇妙な現象が起こったわけだが、さらに他のデータを比較検証してみると、その理由が垣間見られる。

 まずこの10年間のリーグ全体のシーズン打率を見てみよう。2008年.264、2009年.262と、1993年から2割6分以上をキープしてきていたのだが、2010年以降は2割6分台を割り込み、.252~.257で推移している(今シーズンは.255)。年間三振数が年々増加していることからも、決して“打高投低”に変わってきているわけではない。

 だがその一方で長打率をチェックしてみると、2008年.415、2009年.418と推移した後、2010年以降は4割前後に低迷(.386~.405で推移。4割突破3回、4割未満3回)していたのだが、突如2016年に。417と飛躍的に上昇し、今シーズンはさらにステロイド時代並みの.427までアップしている。

 これらのデータから検証できることは、この10年間、三振数は毎年増え、打率は2割5分台に低迷しているにも関わらず、2016年から突如長打率が上昇し、本塁打が増え始めたということだ。それはつまり、今シーズンずっと問題視されてきた“飛ぶボール”をデータが証明していることに他ならない。

 本欄で何度か繰り返してきたが、データは決して嘘をつかない。これではロブ・マンフレッド=コミッショナーがMLB公式球に変化がないと主張し続けても、やはり説得力に欠けていると言わざるを得ない。今後も“飛ぶボール”は議論の余地があるだろう。

スポーツライター/近畿大学・大阪国際大学非常勤講師

1993年から米国を拠点にライター活動を開始。95年の野茂投手のドジャース入りで本格的なスポーツ取材を始め、20年以上に渡り米国の4大プロスポーツをはじめ様々な競技のスポーツ取材を経験する。また取材を通じて多くの一流アスリートと交流しながらスポーツが持つ魅力、可能性を認識し、社会におけるスポーツが果たすべき役割を研究テーマにする。2017年から日本に拠点を移し取材活動を続ける傍ら、非常勤講師として近畿大学で教壇に立ち大学アスリートを対象にスポーツについて論じる。在米中は取材や個人旅行で全50州に足を運び、各地事情にも精通している。

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