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再燃する「日韓の懸案」 佐渡金山の世界遺産登録と韓国の海洋調査 注目される「親日派」尹錫悦政権の対応

辺真一ジャーナリスト・コリア・レポート編集長
世界文化遺産に登録された長崎の通称「軍艦島」と称される「端島」(筆者撮影)

 「最悪の日韓関係」を「最良の日韓関係」に修復させた韓国の尹錫悦(ユン・ソクヨル)大統領は日本との関係をさらに発展させる意向だが、現実には日韓の前途には前進を妨げる様々な難関が横たわっている。その一つが「佐渡金山の世界遺産登録」問題である。

 新潟県の悲願である佐渡金山の世界遺産登録問題について文化庁は昨日(6日)、ユネスコの世界文化遺産諮問機関である国際記念物遺跡協議会」(イコモス)が4段階のうち「登録」に続く、2番目の「情報照会」を勧告したとの「吉報」を伝えていた。

 「情報照会」の勧告で地元の新潟、佐渡島では7月のユネスコ世界遺産委員会での登録への期待が高まっているようだが、一方、佐渡金山の世界遺産登録にクレームを付けている韓国では「情報照会」ではなく、「保留」(refer)という表現を使っていた。

 「保留」とは資料がそのまま保管されることで、通常は次の会議で裁可される可能性が高い。実際に昨年は「保留」の6件はすべて世界遺産登録委員会で登録が決議されている。問題は「保留」勧告の中身だ。

 韓国メディアによると、イコモスは推薦した佐渡金山の一部資産の範囲の修正と合わせて韓国が求めている「強制労働の歴史」を反映することを促していると言われている。

 韓国は「明治日本の産業革命遺産」の世界遺産登録の時から一貫して「韓国人が戦時中に徴用されていた場所が世界遺産に登録されるのは容認できない」との立場を取っているが、日本は強制連行そのものを認めていない。

 岸田政権が2年前に「佐渡金山」の登録時期を「1603~1867年」の江戸時代に限定し、世界遺産登録の推薦方針を発表した時も韓国のマスメディアは一斉に反発していた。

 例えば、「文在寅政権は反日を国内政治に利用している」と常日頃、批判的な論陣を掲げていた保守の「朝鮮日報」ですら「佐渡鉱山世界遺産推薦・・・『歴史戦争をやる』と突っかかってきた日本」との見出しを掲げ「日本政府は登録を推進する際の申請対象を1867年以前の遺跡に限定しているのは暗い歴史を覆い隠そうとするものである。これは『完全な歴史』を反映しなければならないとする世界文化遺産登録原則に反している」として「佐渡鉱山の世界遺産登録を認めてはならない。今後、ユネスコで日本の約束不履行の問題と軍艦島の世界遺産登録の再検討問題も併せて問題提起しなければならない」と反対していた。

 「親日」の尹錫悦(ユン・ソクヨル)政権は登録に前向きと伝えられているが、仮に日韓の間で調整が付かず、21か国で構成されている世界遺産委員会での投票で決着となれば、3分の2の委員(国)の支持が必要となる。

 尹政権の外交部は文前政権とは異なり登録阻止のためのロビーイング活動はしていないようだ。従って、日本に勝算があれば、採決に持ち込むことも十分に考えられる。しかし、この場合、どちらに軍配が上がったとしても、しこりを残すことは言うまでもない。

 もう一つは、竹島(韓国名:独島)周辺での海洋調査活動をめぐる確執である。

 日本政府は昨日(6日)、竹島南方の日本の排他的経済水域(EEZ)内で、韓国の調査船による海洋調査活動を確認したとして、鯰博行アジア大洋州局長が在日韓国大使館の次席公使を呼び、韓国側に抗議していた。

 韓国の国立海洋調査院所属の調査船がワイヤのようなものを海中に投入するなど事前の同意申請なく海洋調査を行ったことを問題視し、現場では海上保安庁の巡視船が無線で中止を求めたとも伝えられている。

 日本のメディアは伝えていないが、韓国の報道によると、韓国の外交部当局者は「独島は歴史的にも地理的にも国際法的にも明白に韓国固有の領土なので我が領有権に対する日本のいかなる主張も受け入れない」と外交ルートを通じ、日本の抗議を撥ねつけたようだ。

 これまで竹島周辺では日韓共に単独で海洋調査活動を行っているが、その都度、相手の活動に抗議し、時には対抗措置として同様の調査活動を行ってきた。韓国は2019年にはドローンを使って海洋調査を行ったこともあり、当然この時も日本は抗議していた。

 また、逆に2年前は日本のエネルギー開発大手の国際石油開発帝石会社(INPEX)が30年ぶりに島根県から北西に約130km離れた、水深約240mの地点の日本海で石油及び天然ガス探索、開発に乗り出すと発表すると、韓国は日本に韓国側のEEZを侵犯しているかどうかを確認するため座標の確認を要請していた。外務省は「民間の企業活動に関連した事案のため具体的な座標を提供できない」と拒否したうえで「韓国のEEZ内ではない」と回答していた。

 日韓の間は双方のEEZが重なっている「中間海域」が存在しているが、協定が締結されていないためEEZの海上境界は未だに確定されていない。従って、この「中間海域」を巡ってはこれまで何度もいざこざが起きていた。

 海上保安庁の測量船が2020年8月に長崎県沖の日本のEEZで調査をしていたところ、韓国公船から調査中止を要求される事件も起きている。また翌年の2021年1月にも同じ場所で海上保安庁の測量船が地質調査をしていたところ、韓国海洋警察庁の警備艇が現れ、無線で「ここは韓国の海域だ」として調査の中止を要求する事件も発生していた。

 日韓両国はかつて小泉政権下の2006年に竹島周辺海域での海洋調査実施を巡って海上保安庁と海洋警察隊が睨み合ったことがあった。

 事の発端は、韓国の海洋調査船が日本の抗議を押し切って竹島周辺海域を含む日本海海底地形の韓国名を新たに登録しようと独島周辺海域で調査を実施したことにある。

 海上保安庁は巡視船を派遣し、調査中止を要求したが、韓国が応じなかったため対抗上、最新のデータに基づく海図を作成する準備を進め、同年4月に「6月30日まで竹島周辺海域で調査を実施する」との「水路通報」を公表するに至った。

 ところが、韓国は周辺海域に非常警戒令を発令し、警備艇約20隻を集中配備し、「日本の調査船が韓国の主張するEEZに侵入すれば、調査船の拿捕も辞さない」と実力行使を仄めかしたのである。

 結局、この時の対立は外務次官協議を開き、日本政府は海洋調査を中止する代わりに韓国政府は国際会議で海底地形の韓国名表記を提案しないことで合意文が交わされ、海上での衝突という最悪の事態は避けられた。当時の官房長官だった故安倍晋三元首相は後に当時の状況について「銃撃戦が起きる寸前だった」と回顧していた。

 韓国では今週、慶尚北道浦項市の近海で「最大140億バレルのガスと原油の埋蔵量が発見された」との尹大統領の発表に沸き上がっていただけに竹島周辺海域や「中間線」での日韓の資源紛争がエスカレートすることは避けられそうにもない。

ジャーナリスト・コリア・レポート編集長

東京生まれ。明治学院大学英文科卒、新聞記者を経て1982年朝鮮問題専門誌「コリア・レポート」創刊。86年 評論家活動。98年ラジオ「アジアニュース」キャスター。03年 沖縄大学客員教授、海上保安庁政策アドバイザー(~15年3月)を歴任。外国人特派員協会、日本ペンクラブ会員。「もしも南北統一したら」(最新著)をはじめ「表裏の朝鮮半島」「韓国人と上手につきあう法」「韓国経済ハンドブック」「北朝鮮100の新常識」「金正恩の北朝鮮と日本」「世界が一目置く日本人」「大統領を殺す国 韓国」「在日の涙」「北朝鮮と日本人」(アントニオ猪木との共著)「真赤な韓国」(武藤正敏元駐韓日本大使との共著)など著書25冊

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