「チョコレートプラネット」が明かす最高の瞬間と、どん底での思い
「TT兄弟」「Mr.パーカーJr.」など次々と人気キャラクターを生み出すお笑いコンビ「チョコレートプラネット」。10月21日にはライブDVD「チョコンヌ2020」をリリースし、「Mr.Parka jr. feat. Dr.Turtleneck」名義での楽曲「Mr.Parka jr.」も配信が始まりました。まさに多岐に渡る活躍ぶりですが、ここまでの道のりは決して平坦なものではありませんでした。長田庄平さん(40)、松尾駿さん(38)ともに「つらかった」と語る2013年を振り返りました。
状況も、気持ちも、底
長田:これは本当にありがたいことですけど、今は休みが月に一日あるかないかくらいの感じで、仕事をさせてもらっています。
ただ、4月、5月と新型コロナで緊急事態宣言が出ていた時は、もちろん影響があって、仕事はほぼゼロになりました。
松尾:約1カ月半、ほとんど仕事をしてなかったので、その期間でデビューして仕事がなかった時の体に戻った感じもありましたね。久々に収録だとかロケに行かせていただくと、ドッと疲れが出るというか。慣れって恐ろしいものだなと痛感しました。
長田:これまでが忙しかったので、今回はまとまった休みなんだという感覚に切り替えて、とことんゆっくりする。そういう時間に充てたんですけど、これがずっと仕事がなかったら困りますし、本当につらい。それを味わったのが、2013年でした。これまでの芸人人生を振り返って、一番つらかった。状況も、気持ちも、底というか、そんな年でした。
松尾:11年からコント番組をやってたんですけど、一緒にやっていた「パンサー」、「ジャングルポケット」、横澤夏子とかがみんな売れていって、それに伴って番組も13年で終了したんです。そこで、なんか“取り残された感”が出てきたというか。
長田:実際、その時期から仕事が減って、給料もみるみる少なくなっていって。恐怖感、焦りというものは、相当ありました。
メディアでの仕事がなくなって、そこで、今まで以上に真剣に笑いと向き合ったというか。もう一回、イチからネタを作ってました。「キングオブコント」の決勝を目指して。ひたすらネタを作って、毎月新ネタライブをやって。
「『チョコプラ』は大丈夫」
松尾:正直、それまではノリでやってたんです。ノリでやって、ある程度、結果がついてきていた。お笑いのライブが試合だとしたら、ネタ合わせという練習をほぼせずに試合にのぞんでいました。
長田さんがネタを作って、それを少し合わせて、後は本番で、という感じだったんですけど、13年はそこをガチガチにやって、積み上げていきました。
やっぱり、そういう状況にあるということをもちろん周りも分かっていて「パンサー」の菅(良太郎)さんは、それこそ毎日のようにご飯に連れて行ってくださいました。
そこで「大丈夫。『チョコプラ』は大丈夫だから」と言ってくれて。それくらい、13年の自分たちはつらい状況に見えたんでしょうし、実際、つらい時期だったのは間違いないと今でも思います。
もちろん、先輩がそう言ってくださるのはありがたいし、うれしいことです。ただ、語弊を恐れずに言うと、それを言ってくださったからといって、毎月給料が入るわけでもないし、直接的に仕事が増えるわけではない。
だから、それをもって「大丈夫」ということではないけれども、こんなありがたいことを言ってくれてる人と、早く一緒に仕事がしたい。「パンサー」とまた一緒にテレビに出たい。その思いは、強いモチベーションになって背中を押してくれました。
…あ、すみません、正確に言うと「パンサー」の菅さんと向井君とは早く一緒に仕事したいなと。尾形さんとは、別に、そこまで(笑)。
「シソンヌ」の存在
長田:でも、本当にその年は「とにかくヤバい」とは思ってましたね。毎月ライブをやっていったのも、それで何がどうなるものかは分からないけれども、とにかくやらないわけにはいかない。不安しかなかったですね。
結果として、14年の「キングオブコント」では決勝に進むことができました。13年から翌年の「キングオブコント」決勝。ここの印象が、一番強いです。
しかも、決勝の最終決戦で残ったのが僕らと「シソンヌ」だったんです。このうちのどちらかが優勝する。そこに2組で並んだ。これから先も、あの瞬間を超える心の震えはないと思います。
「シソンヌ」は同期で、僕らと同じようにずっとコントをやっているし、すごく距離感が近いコンビだったんです。自分でいうのもナニですけど、昔から切磋琢磨しつつ、今にいたるまでユニットでライブ「チョコンヌ」をやったりもしてきています。
コント日本一を決める大会で、最後にその2組が残った。これは奇跡中の奇跡で、僕らだけが頑張ってもできないシチュエーションですしね。それが起こったことに心が震えました。
松尾:「シソンヌ」のじろう君とは一緒に住んでいた時期もありますし、やっぱり思うところはありましたね。僕がすごく覚えてるのは、2組ともネタも終えて、さぁ結果発表となる直前にCMにいった時でした。
「ダウンタウン」の松本さんがいて、僕らがいて、「シソンヌ」がいて、浜田さんがいる。その並びで画面に映りながら、CMにいったんです。その瞬間、なんとも言えない思いがこみ上げてきました。
今でも、その画面は頭に焼き付いてますし、これから先も一生消えることはないと思うんですけど、それでもまだ足りないので、その瞬間の写真をプリントしたTシャツを作って、ずっと着てたいくらいです(笑)。
長田:メチャクチャいいライバル。…なんかこう、「シソンヌ」が売れるのは本気でうれしいけど、本気で悔しい。それがいいライバルということなんですかね。この感覚は、これから先も、一生あると思います。
そんな思いにも支えられて、なんとかここまでやってこられました。テレビで僕らの番組を持ちたいという思いはずっとあるんですけど、お笑い以外でもいろいろなことをやってみたいなと。その一つが「グッドデザイン賞」をとるということです。
コントでも、僕は小道具を作っているので、その経験を生かしつつ、なんとか実用的なものを作ってみたいなと思いまして。
実はこの夏も、エレベーターのボタンなどを直接指で触らなくても押せる木製の“ノータッチリング”で「グッドデザイン賞」に応募してたんです。
審査はいくつか通過したものの、あと一歩のところで今回はダメでして。来年はさらに傾向と対策を学んで、賞をとりたいなと。もしとれたら、今までとは全く違うオファーも来るだろうし、それも結果、面白さに繋がるだろうなと思いまして。
松尾:僕はIKKOさんのモノマネをやるようになって、周りの方から「足がきれいだね」と言われることが増えたんです。なので、何とか男性部門を作ってもらって、いつの日か「クラリーノ美脚大賞」をとりたいなと(笑)。
でもね、IKKOさんのモノマネをするようになって、皆さんから注目をされ、もちろんこちらが感謝するばかりなのに、逆にIKKOさんがすごく感謝してくださって。
どこまでもありがたいばかりですし、恩返しになるかどうかは分かりませんけど、ずっとモノマネをやる。それは続けていきたいと思っています。
ただ、IKKOさんって“名言ぽいことを言おうとすると、よく分からなくなる”という法則がありまして(笑)。
この前も「松尾ちゃんが影武者になってやってくれているから、若い人たちにも私のことを知ってもらえてうれしいの。ホント、影武者に感謝!」と言ってくださったんですけど…、その文脈での“影武者”の使い方に違和感を覚えまして…。
長田:そこはなんとなく汲み取って、染みときなさい(笑)。
(撮影・中西正男)
■チョコレートプラネット
1980年1月28日生まれで京都府出身の長田庄平と、82年8月18日生まれで神奈川県出身の松尾駿が2006年にコンビ結成。東京NSC11期生。08年、14年、18年と「キングオブコント」で決勝に進出。松尾がIKKO、長田が和泉元彌のモノマネで注目を集め「TT兄弟」「Mr.パーカーJr.」など人気キャラクターを次々に生み出す。同期の「シソンヌ」とのライブを収めたDVD「チョコンヌ2020」を10月21日に発売。また「Mr.Parka jr. feat. Dr.Turtleneck」名義で楽曲「Mr.Parka jr.」も同日から配信を開始。