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文春が仕切る告発会見の威力 第2弾 木原副長官妻の取調官が警察庁長官発表に反論-全文-(前半)

石川慶子危機管理/広報コンサルタント
筆者撮影(週刊文春 8月10日号)

事態収束を急いだ公式コメントがダメージを深めた

7月28日、木原官房副長官の妻の元夫安田種雄氏の不審死について2018年の再調査で取調べを行った元捜査官佐藤誠氏が、露木警察庁長官の「事件性なし」発表に対する反論告発会見を行いました。長官の公式発表に対する現場からの反論であること、実名であること、殺人の捜査官が直接説明すること、しかも文春がこの告発記者会見を仕切っていること、あらゆる面で衝撃的な記者会見でした。この記者会見でも、安田種雄氏遺族会見と同様にフリーランスのYouTuberが存在感を示しました。また、佐藤誠氏自身も最初に知ったのは文春ではなくYouTubeだったとのこと。こんな時代になったんだなとつくづく感じ入りました。

組織におけるリスクマネジメントの観点からもこの会見が意味することは大きいと感じます。筆者は2点着目しました。佐藤誠氏は、反論告発会見を開いた動機について、「遺族に再捜査すると伝えたら、通常必ず遺族に結果を伝えるのに、それをしないままいきなり記者会見で事件性なし、と発表したことへの強い怒り」だと説明しました。露木長官は会見でコメントすることで事態収束を急いだのだろうと思いますが、現場のルールを確認しなかったために(あるいは知っていて権力で無理やり押さえつけたため)現場捜査官による告発会見を招いてしまいました。2つ目は、文春の新しい砲撃スタイルが明確になったということ。先の安田種雄氏ご遺族の会見を仕切ったのは、頼まれたからやたまたまではなかった。文春はメディアとしての役割だけではなく、いや、その立場を超え、世論構築のためにあらゆることをする、記者会見を積極的に活用していく新たな手段に踏み出したということです。組織・個人はこの新たな文春砲に対応していかなければならない時代になったのです。どう対応していけばいいのでしょうか。警察庁長官への衝撃的な反論記者会見について、多少編集して前半と後半に分けて全文掲載します。

■動画解説 リスクマネジメントジャーナル(日本リスクマネジャー&コンサルタント協会)

トップの嘘にカチンときたから全部話す

タカハシ:今回、佐藤誠さんの記者会見ということで進行役を務めさせていただきます「週刊文春」のタカハシと申します。本日はどうぞよろしくお願いいたします。会見に先立ちまして本日の注意事項をご説明します。会見時間は13時から14時を予定しております。事前に配付したリリースにもございますとおり、佐藤さんの撮影は首から下でお願いいたします。

まず、簡単に佐藤さんのプロフィールをご紹介します。佐藤さんは1959年5月生まれ。1983年に警視庁に入庁しまして、そこから2004年に捜査一課に配属されました。2022年に警視庁を退職されています。木原誠二官房副長官妻の元夫怪死事件におきましては、木原副長官の妻であるX子さんの取り調べを担当されています。では、初めに佐藤さんのほうからコメントをお願いしたいと思います。

佐藤(誠):初めにこの場にいる経緯を話させていただきます。初めてこの事件の記事を知ったのが「文春」じゃないんですよ。YouTubeを見てて、確か佐藤章さんの配信。佐藤章さんが言ってんの見て、ええっと思ったんですよ。佐藤章さんがいろいろ解説してたんですけども、要はこの記事は何か警察の資料がないと書けないということを言ってて、俺もそのとおりだと思ったんですよ。さすが元新聞記者だなと思っていろいろ興味深くずっと見て、そうだよなと。

俺がびっくりしたっていうか、驚愕したのはあまりにもめくれ過ぎってことなんです、これは。本当に現職警察官がそんなこと言ったのかということでちょっとびっくりしたんですよ。そしてYouTubeでいろんな方がやり始めたんで。百田さんだとか、横田由美子さんですかね、YouTubeが好きなんで見てたんですよ。すごいよく知ってんなと思って。それも驚愕ですよね。X子さんのことよくしゃべってるし、こっちのほうが本当そんなことあったの、みたいな感じでだんだん知るようになって。いや、こんなの関わったら大変だなと思ってたんですよ。そしたら、当時住んでた隣の人から電話があって、「あんた何かしたの?週刊誌の人が来てるよ」と言われて。こりゃ「文春」かなと思って。一応名刺置いてったって言うんで。それで電話して、それがきっかけなんですよ。そのきっかけで電話したら取材させてくださいということを言ってきたんで、こっちもちょっと会って話をしたいなと思ったんです。探りを入れるっていうか、どっからこの情報が流れたのかってのを知りたかったんですよ。

本当に警察官がこんなことしゃべったのっていうことをちょっと聞きたくて、初めは教えられませんっていう話だったから、それで2回、3回と電話がきて、おい、ちょっと勘弁してくれよというようなやりとりがずっと続いたんですよ。

そうしたところ、ちょうどその何日ぐらいだろう、警察庁長官の会見がありまして、「この事件を事件性がない」とか「自殺」とか言ってるんでそれでかちんときたんですよ。かちんとくるっていうのは別に頭きたわけじゃないですけど、被害者に対して火に油を注ぐようなことを言ってるなという感じで思えてきたんですよ。現場の警察官はどうでもいいんですけど、被害者がちょっとかわいそうだなと思って。じゃあ、取材もうやっちゃっていいよということで文春に載ってるとおり、あの経緯ですよ。

別に正義感とか、そういう話じゃないんですよ、これは。そん時そう思っちゃったんですよ、もういいよと。ちょっと頭きちゃって。うそ言ってる。かちんときちゃっただけなんですよ。それがきっかけで。最終的にはもうどうせやるからには全部話すしか手がないんだろうなってふうに思っちゃったんですよ。だから、それがここにこういるっていう理由ですよ。

私、調べ官だったんで証拠品であるとか、各供述だとか全部集中するんでそれを吟味してたんですよ。正式な発表では適正な捜査で証拠品を基にしたら自殺だと言っているけど、そんな証拠品は存在しないんですよ、もう存在しないの、これは、これ、もう断言します。だから、事件なんですよ、あれは。大体出てくんのはもう怪しい証拠品ばかりで。それでやっぱりああいうことを言うと被害者が悲しんでんのに余計悲しくなっちゃうじゃないかみたいな気持ちになっちゃったんですよ。

じゃあ、警察退職したら何でもかんでも話していいのかと、そっちのがこええじゃねえかと。そんな警察官がいたら余計怖いんじゃないのと思う人もいるかもしんないんですけど、やっぱそういうふうに思っちゃったんですよ。やばいことはやばいことなのかもしれないけどここで言うしかねえな、そういうふうに思っちゃったんで。これ、別に何が目的とかじゃなくてそういうふうに思っちゃっただけであって。これが経緯なんですよ。

のりっていうか、勢いというか、かちんときちゃって、実際本当にないんですから、証拠が。自殺を認定する証拠がもう全く記憶にないんですよ。じゃあ、持って来てもらおうじゃないかと。証拠品を持って来て、俺が納得して、安田さんが納得したら済むことじゃないすか、それでけりがつくわけですよ、それをやってくれっちゅう話なんですよ。これは断言しますけど、事件性はありですから、これ。誰が見ても、あれを見て事件性がないという警察官は多分いないと思うんですよ、刑事は。

ただ、じゃあ、何で大塚警察がああだったのかっちゅうとそれはちょっと俺のほうから分かんないすけど、言えないですけど、やっぱりちょっとミスっちゃったのかなっていうような感覚は受けますよ。普通刑事が行けば大体あれはちょっと自殺には見えないすもんね、そんな経緯です。よろしいでしょうか。

終わり方が異常だった

タカハシ:これから質疑応答に移りますけれども、一連の報道に出てくる匿名の人物については個人の特定につながるようなご発言というものは控えてくださいますようにどうかお願いします。では、挙手の上、お名前とご所属を最初にお願いいたします。

ササノ:徳間書店のササノといいます。X子さんに前科があったのかどうか。

佐藤(誠):いや。

ササノ:シンナーの話、聞いてるんですけども。

佐藤(誠):それは当時若いころの友達が一緒にやったっていうようなことを言って、それはメモで見て、実際やったかどうか分かんないですよ。前科で調べたわけじゃないですけどそういう話があって、それで調べ室で若いころはやんちゃやってたの、シンナーとか吸ったんじゃないのっていうぐらいの感覚ですよね、目撃報があったっちゅう話じゃないす。前科なんかないと思います。

ササノ:もう一つあって、事件直後にX子さんの尿検って取ったんですか。

佐藤(誠):いや、結局俺が要請したのはポリグラフ、あとDNA、そういう基本的なことですよ。

ササノ:大塚署が尿検取ったようですが。

佐藤(誠):いや、取ってないです。実際もう令状持ってったら、じゃあ、出しますっていう話でしたから。だから、もし出さなければ執行するよというかたちで行ったんですよ。でも、やっぱそれ持っていくと大体の人はやってくれんですよね、どうせ取られんだったら、じゃあ、自分でやりますみたいな、そんなかたちだったと記憶してます。

篠原:佐藤さんの好きなYouTube発信しております篠原常一郎と申します。1つだけお聞きします。いろいろこのX子さんの取り調べを担当されたということですが同時にやっぱり、これ、チームで捜査をされてるわけですから短い期間でもいろんな情報を目にされたと思います。それで、これ、非常に肝心なところだと思いますけれどもこの捜査チームが当たった人々とか、そういう中にこれは間違いなく被疑者だと思えるような方、これ、佐藤さん個人の意見でよろしいんですがそういう方あったでしょうか。

佐藤(誠):あくまでも個人ですね。確定じゃないすよ。やっぱ調べ官やると見立てするんですよ、流れ、見立て、筋をいろんなもん見て。週刊誌にもあるとおり、あれはどうやったって女じゃできない、これ、分かりますよね。

できない、無理です。今まで、だって、殺し屋じゃないんだから。それで、あと、やっぱりナイフを使うと必ず手にやっぱ傷が付くんですよ、今まで。こうやればここに付くし、それもない。だからX子さんはちょっと違うんじゃないかなと、単なる俺の見立てですよ。でも、やっぱ初めは容疑者として、容疑者じゃない重要参考人として一番かなとは思ってたけど、心の中ではちょっと違うんじゃないかなと。

あと、他にはYって出てくるじゃないすか。あれ、ちょっと時間的に無理なんすよ、ええ、無理です。それと、あといましたっけ、登場人物。

篠原:Zっています。

佐藤(誠):それは分かんないんですよ、ただ俺の見立てなんですよ。ただ、今、名前ちょっと出せないすもんね、もう状況的にね。

篠原:でも、名前出さないってことは要するにちょっと引っ掛かってる中にはいそうだということですか。

佐藤(誠):そうです、だから、他にあれですもんね。だから分かんないすよ、結果は。もしかしたらX子さんかもしんないんすけど。俺の感覚的には、うん? って感じですよね。

篠原:そこまでもう感触あるんだったらこれが、捜査が途中で打ち切られるのどうしようもないすね。

佐藤(誠):どうしようも、あとでまた途中でちょっと終わり方が異常だったんですよ、普通の終わり方じゃないんですよ。今まで殺し何件かやってます、何十件もっとかな、100件近くはやってるんですけど終わり方が、こんな終わり方がないんですよ。

望月:すみません。Arc Timesキャスターの望月と申します。「文春」さんのベースをお聞かせいただきたいんですけど、まずその事件後の12時間後にYさんとX子さんの2ショット写真。居酒屋の。これをどう受け止めてるかということと。それからYさん、30回にわたる聴取の途中からいろいろお話を始めて、部屋に忍び込むとそこには遺体があり、X子の背中には血が飛びついている。Yは血が付いてるから脱げと服を着替えさせ、朝方になったら警察に電話し、朝起きたら死んでいましたと言おうとアドバイスをしたと、こういったところまで具体的に供述をしていたのかということと、それからX子さんの取り調べの中で初めに座らせたりして、その後にYさんに任せたという証言ありましたね。

佐藤(誠):あります。

望月:実際遺体を発見したお父さま、こないだ遺族も会見してましたけれど、お父さまのお話ですともうそのYさんなる人はいなかったし、X子さんとも確かその時会ってなかったというお話をしてます。それとやっぱりX子さんの発言というのはYさんに頼んだと言いつつ、遺体発見の現場にはYさんがいなかったり、数々その現場の状況とX子さんの話していたことと矛盾がこの記事を読んでても出てくるんですけれど。

佐藤(誠):真実はあのとおりでいたんですよ、Yは。カーテンの後ろに隠れてたんですよ、これは。それは突然来ちゃったっていうのは突然なんですよ、だからトラブルなんですよ。取り調べで、彼女は死んだ後呼んだんじゃなくてまだ生きてる時にYを呼んだ。種雄くんとけんかになっちゃったんで呼んだっていう言い訳をしたわけですよ。だって、死んだって言えないじゃないすか。でも、呼んだことは認めてるわけですよ。だけども、じゃあ、何で呼んだ、けんかになってんのに自分は寝ちゃったんだと、ちょっとおかしいじゃないすか、それであの部分があるんですよ。だから、実際は死んだ後に呼んでるはずなんですけど、でも俺の調べではそれ、言えないじゃないすか。あれをまだ生きてた時に呼んで、けんかになっちゃったんだよと。

望月:そうすると生きている時に呼んで、なぜその後死んでたかってことに関してXさんはどういうふうに説明してるんですか。

佐藤(誠):そこ、もう、だから後は知りませんですよ。後はだからもう言ったとおり、Yさんに任せてましたと。

望月:だって、Yさんはいなかったわけですね、現場にお父さまが遺体を発見した現場でもカーテンから逃げていなくなってるわけですよね。

佐藤(誠):いや、その前の話ですよ。だから、要は作り話なんですよ、全てが。だから作り話っていうか、そう言わざるを得ないじゃないすか、X子さんにしてみれば。でも、実際Yさんはいたんですよ、隠れてたんですから。それで隙を見て逃げたと。だから、X子さんの供述はでたらめなんですよ。そういう話でそういう話になっちゃったと。ただ、呼んだってこと認めちゃったから、あとは作り話にするしかないじゃないすか。

望月:そうすると、佐藤さんとしてはYさんの証言、初めはお話しされてなかったと思います。20回ぐらいの聴取の途中から具体的に話をした。

佐藤(誠):俺が宮崎まで行ったのは2回ぐらいですよね。Yさんの調べは違う人がやってたんで。ただ、調べの前にちょっと感触取りたかったんですよ、本当のこと言ってるかどうかっちゅうことを。だから、うそなのかな、本当なのかなっていうこと、ちょっと態度を見たかったんでそれで同行した。もう調べはほぼ終わってたんすよ。

望月:じゃあ、Yさんの証言には恐らく真実の方向性高いというふうに見てるんだと思いますが、そのYさんの証言っていうのは種雄さんに言われて刺せというから刺しちゃったというところから彼女はYさんを自宅に呼んだという理解でいいですか。

佐藤(誠):供述は、です。ただ、私の指紋が付いちゃったとか言ってるじゃないすか。だって、家にあるもの自分の指紋付いたって何の矛盾もないじゃないすか。その言葉にちょっと供述内容は本当かなと思ったんです。だって、指紋が付いちゃったかもしれないってことは、自分の家にある指紋なんか全然証拠になんないわけですよ。そこでやっぱりおびき寄せるためなのかなみたいなちょっと聞いてて。それ、分かんないですよ。でも、Yがそう言ってんですから。

望月:指紋が付いちゃった、つまりそのナイフに付いちゃったというとこまでお話ししてんですね。

佐藤(誠):ナイフに指紋付いた、そういうふうに言ったと。それで、Yはガムテープみたいのを剥がしたわけですよ。ガムテープ剥がす時にどっかで付けばいいなっていう感覚だったかもしれないすけど、そこ、分かんないすよ、単なる想像ですから。

望月:それがあまりにも考え抜かれてるので、Zなる者が関与してるかもしれないっていう見立てをしてる。

佐藤(誠):それはあくまで俺の見立てですから。

望月:Zさんはしかしながら任意同行を拒否されてますよね。じゃあ、これは元刑事さんだということで本来なら積極的に捜査に協力してもいい状況だと思うんですけど、これをどういうふうに受け止めてるか。

佐藤(誠):Zさんはあくまでも俺の頭の中なんで。その人が犯人かどうか、今後の捜査をやらないと。単なる俺のその時の見立てだけなんすよ。言っちゃうと大変な騒ぎになるじゃないすか。Zさんの話はもうあのとおりだと思うんです。だから、あんまり出したくはなかったんですよ、ただ話がちょっと出さないと、じゃあ、X子さんは犯人じゃないなら他に誰なのって話になっちゃうじゃないすか。そこがやっぱりちょっといろいろあったんです、頭ん中でもぐるぐる。やっぱ自分の見立てはその人ですよ。それは週刊誌に書いてあるとおりです。

望月:拒否されてること自体がちょっと、任意同行拒否してること自体は警察の、刑事の感覚としては。

佐藤(誠):いや、任意同行拒否してるか全然俺、分かんないんですよ。要はなぜかっていうともう調べやってたんで他のとこで何が起きてるかってのはあまり気にしないんですよ。どうですかね、ちょっとよく分かんないすね。

一番大事なのは遺族への報告

ナカムラ:フジテレビのナカムラと申します。遺族の方、真相を求めてると思うんですけども。どのような条件が整えば再捜査が始まるというお考えですか。

佐藤(誠):あくまでも個人的な意見ですよ。もう長官がああいうふうに言っちゃってるじゃないすか、そうなるとちょっと難しいのかなと、これ、個人ですよ、もう覆んないんじゃないかなと、いや、それ、分かんないですよ、どう決めるか。でも、やっぱり警察庁のトップがそう自殺って認定しちゃってるからどうなんでしょうかね。

ナカムラ:再捜査を求められてると思うんですけど。

佐藤(誠):そらもうそうですよね。だって、本来であれば殺人事件はホシも捕まえることも大事なんですけども、一番大事なのは遺族班なんですよ、被害者班。だから、初めに何をしなきゃいけないって遺族の方の対策が一番難しいんですよ、捜査が始まってまずやります。だって、大塚の女刑事って出て来るじゃないすか、あの人はどうなるか分からないけども始まりますよと言ってるわけですよ、どうなるか分かんないっちゅうことは証拠が見つかって起訴できるかどうかも分からないと、もしかしたら自殺かもしれないと。いろんなパターンがあるけどやってみますって言ってるわけだから、やっぱり被害者の方に捜査が始まって一応終了するには被害者の方に結果を伝えなきゃいけないんですよ。

例えば一生懸命やったけども証拠が見つかんなかったけども申し訳ございませんとか、捜査を尽くしたけどこれは自殺でしたとか、その結果を教えなきゃいけない。本来であればその18年の何月ですか、10月ごろ、もし終わったとすればね。だから、さっき異常な終わり方つったのはそれがないんですよ。それで5年たって今ごろになって自殺だって言われたって、火に油注ぐようなもんじゃないすか、全然結果を教えられてないんだから。

突然5年たってこれは事件性がないと、自殺なんだと言われれば怒っちゃいますよね、だって、今までほっぽっといたわけですから。それで、俺の見立てとしてはそんな事件性がないっていう証拠なんかないわけですから、証拠も供述も、例えば遺書が出てくるとか、そういう証拠があればもう自殺になるんですけど、そういうのないんですよ、そんなもん。遺族が納得するわけないじゃないすか。だから、遺族の方はやっぱ再捜査でお願いしますって言うに決まってますよね。

自殺の証拠は何一つない

ナカムラ:あの場の長官の発言は非常に責任のある重い発言だったと思います。

佐藤(誠):けなすつもりはありませんよ。ただ、個人的にはそんなもんないのにあるかのように言ってるじゃないすか、そう思いませんか。だって、証拠は俺が一番知ってんすよ、証拠全部見てんですよ。だけど、自殺の証拠がないんですから。自殺と認定する証拠ってのは遺書とか、その自殺してんのを見た人がいるとか、そういうのがあれば捜査やらないじゃないすか、遺書が出てくれば。だから、何を基に言ってるのかなと思ったんですよ。重いっていうか、もうちょっと被害者のことを考えてもらいたいなっていう気持ちのほうが大きいですよね。

オガタ:すみません。フリーランスのオガタといいます。佐藤さんに伺いたいんですけれども今回のXさんが木原副長官の、当時の自民党の情報局長の夫人でなければ捜査の方法は違ったと思うか。それと週刊誌の記事も、「週刊文春」さんの記事にも出てくるんですけれどもその中で俺が手を回しておいたとか、ドライブレコーダーの中にそういう発言とか、国会の会期までにその捜査を終わらせろとか、そういったことは刑事にはしゃべるなということがドライブレコーダーの映像に残ってるわけですけれども、それらはまずその国会会期中という話は議員の不逮捕特権ってのは議員に認められたもので親族は関係ないと思うんですよ。その乱用に当たらないのか、また、その証拠の隠滅とか、犯人隠避、またはその教唆に当たると佐藤さん個人は木原氏の行動について思うのかどうかを聞かせていただきたいんですが。

佐藤(誠):要は一番は国会っていうのは、要は当時10月10日ぐらいから確か始めたと思うんですよ、日付的には。それでその後半に国会が始まるっていう話だったんですよ、何国会、臨時国会ですか。

オガタ:臨時国会です。

佐藤(誠):臨時国会ですね、それが27とか、8だったんですよ。一応それが始まっちゃうとちっちゃい子でも面倒見れないじゃないすか、一応木原さんが面倒見ててくれたから。結局任意同行なわけですよ、そうするとやっぱり初め行った時、1回目断られたわけですよ、子どもがいるっていうことで。ただ、それを俺の個人的な感覚ですよ、これはもう来ないなと思ったんすよ、二度と。

だって、任同ですからいろいろ理由付けて今日は行けません、子どもの面倒がありますって言われれば来ないことも自由なんですよ、任意同行だから、令状持ってないすから。俺はもうこれ、駄目かなと思ったんすよ、もう二度と来ないかなと思ったんですよ、いろいろ理由を付けて、それもありなんですよ、引っ張って行けないですから。

あと、スムーズにいったのは当時幹事長の二階さん。俺が聞いた話ですよ、幹部から。二階さんがちゃんと警察の捜査には協力しなさいと、ちゃんと出頭しなきゃ駄目だよと言ってくれたから明日から大丈夫だよと聞いたんですよ。だから、それでスムーズに行ったってのは事実ですよね。だから、二階さんが結局けじめってか筋を通してくれたという感覚でいるんですよ。だから、当時は相当感謝したすよね、楽だったから、翌日からは。これ、本当に。二階さん大物じゃないすか。ちゃんと筋を通してくれて警察に協力してくださいって言ったからスムーズに行ったんだ、今でもそういうふうにしか思えないですよね。あと、何ですか。何だったつったっけ。

オガタ:議員特権とか、議員の不逮捕特権とか、犯人隠避の教唆とか、証拠隠滅の教唆とか、木原さんの行動がそういうのに当たると捜査官として思うかどうか。

佐藤(誠):犯人隠避ってのは親族には適用されないんですよ。例えば妻の罪を夫が隠すとか、そういうのは当たらないんで、だから、結局そこ当たんないんじゃないすかね。例えばタクシーの中の出来事だって、もしかしたら励ましてるだけかもしんないすよね。だって、こう疲れてきてるわけですからそれをがんばれよと、俺が何とかしてやるってのは逆にこう後ろで手を回す、俺が手を回してやるからとか、はったりかもしれないじゃないすか、妻を勇気づけるための。実際そんなことやってるかどうかも知らないし、それはそれで夫がX子さんを励ましてるというふうにも取れるじゃないすか。

ただ、俺、びっくりしたのは初めて言うんですけど、そのタクシーの中でYさんの名前が出たことなんですよ、Yさんの名前が。Yさんの名前なんてそのX子さんが本当に言ってるのかな、共有してんのかなみたいな感じで、そこでびっくりしたんです。

オガタ:それはどういう会話だったんですか。

佐藤(誠):そん中で名前が出たんですよ、Yさんの名前が。もう内容は覚えてないすよ。もう2人でYさんは共有してんだなと。そんなことX子さんが言うかなってのほうがびっくりしたすよ。

オガタ:最初に聞いた木原さんの夫人だということがなければ、今まで100回以上捜査やってこんなことなかったとおっしゃいましたけど、この捜査の方向は変わったと思いますか。

佐藤(誠):実質やっぱやりにくかったのは確かです。別にそれは木原さんがいるから勝手にできないじゃないすか。それはやっぱり礼儀みたいなあって、そこら辺の兄ちゃんだとか、そこら辺の不良だったらいくらでも引っ張れるじゃないすか。任意つったって来いつってやれますよ。だけど、やっぱそうはいかないから。ただ、そこで苦労したんじゃないすか、初め特命が入ってる時は、それでちょっと無理かなっていうことでサツイチ(警視庁捜査一課殺人犯捜査第一係)を入れたわけですから。

オガタ:最後に一点だけ短く。記事の中で包丁の柄の所に両面テープはぐるぐる巻きになっていて、それが怪しいと思ったと。それがどういう構造で誰の指紋を取って、どういうふうに使えんのかってのがいまひとつよく分からなかったんですけど、その見立てを教えていただけますか。

佐藤(誠):見立ては、要はそんなもんに両面テープ巻く人間はいないじゃないすか、普通は。だけど、巻いてあったんですよ。これはわれわれが、Yがそういうふうになってましたよと言ってるわけですよ。それは種雄くんが覚醒剤で錯乱(さくらん)でやったんじゃないかと、だけども実際Yはこっちから何も向けないのにそういう話をするわけですよ、別にそんな話をする必要はないわけですよ。でも、巻いてあったと。だから、結局どういうふうに巻いてたかってのはそれだけで宮崎行ってますからね、巻いた形がどうしても不自然だと。何の目的なのか。このナイフがポイントになるのかなっていろいろ考えたんですよ。だから、実際に巻いてある状況が大体もう剥がして持ってっちゃってますからちょっとそこら辺は推理というか。さっきも言ったとおり、X子さんが指紋を付いたって、家にあるもんだから全然不思議じゃないんですよ、ところが「私の指紋が付いちゃった」と。そう言えば剥がすじゃないすか、Yが。でも、私の指紋付いたっていうことは剥がしてほしいという意味なんですよ、多分。だって自分の家にあるナイフに自分の指紋が付いたところで何ら不思議じゃないですから、それは種雄くんのナイフだとしても触る可能性だってあるじゃないすか。それをわざわざ「指紋が付いちゃった」ちょっとおかしくないすか。

後半へ続く

https://bst-byline.yahoo.co.jp/article/update/00361608

<参考サイト>

【アーカイブ動画】「木原事件」を巡り実名告発 警視庁捜査一課殺人犯捜査第一係 元警部補・佐藤誠氏 記者会見(週刊文春電子版)

https://bunshun.jp/denshiban/articles/b6537

危機管理/広報コンサルタント

東京都生まれ。東京女子大学卒。国会職員として勤務後、劇場映画やテレビ番組の制作を経て広報PR会社へ。二人目の出産を機に2001年独立し、危機管理に強い広報プロフェッショナルとして活動開始。リーダー対象にリスクマネジメントの観点から戦略的かつ実践的なメディアトレーニングプログラムを提供。リスクマネジメントをテーマにした研究にも取り組み定期的に学会発表も行っている。2015年、外見リスクマネジメントを提唱。有限会社シン取締役社長。日本リスクマネジャー&コンサルタント協会副理事長。社会構想大学院大学教授

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