全ての面が期待以上。楽天・オコエの走攻守
将来的にはシーズン最多三塁打の日本記録更新なるか
素材型の高卒ルーキー。
楽天・オコエについて入団時は誰もがそう思っていた。しかし、高卒新人野手としては球団初の開幕1軍をつかみ取り、代走起用された2戦目でプロ初盗塁を記録。4月14日に1度抹消されたものの5月29日の再昇格後は31日にプロ初安打を含む2安打を放ち、翌日には初の長打で初の打点を挙げ、翌週には初の三塁打に加え初の猛打賞と大活躍。高卒新人の猛打賞は17年ぶりという快挙だった。そして18日のDeNA戦ではレフトスタンドへ初アーチを描く。ちなみに4月に抹消された時点での打撃成績は四球、二飛、空三振、一ゴロ、三飛、二飛、三ゴロ、空三振だった。外野に打球を飛ばせなかった高卒ルーキーが1ヶ月強でまるで別人のように成長。6月12日の広島戦以降は全試合で1番・センターを任されている。
バットでの成長著しいオコエだが最大の魅力はその脚力。高校時代、下級生の頃はそれほど騒がれるような選手ではなかったが、春季大会決勝で見せたワンプレーが一躍その名を全国に知らしめた。投手の足元を抜ける痛烈な打球を放つと勢いよく一塁ベースを蹴り二塁に到達。規格外の”センター前二塁打”がスカウトの視線を釘付けにした。プロ初の長打となった6月1日、阪神戦の二塁打もセンター右への当たりで二塁を陥れたもの。右中間、左中間を破らなくても常に長打が狙うことが可能だ。
そんな自慢の走力が最も威力を発揮するのは三塁打を放った時。ベースを蹴る度に加速する走塁は圧巻で、プロ最高レベルの脚力が叩き出したタイムは11秒を切る。
これまでのシーズン最多三塁打記録は1951年に金田正泰(阪神)が樹立した18本。65年も前の記録だが2位以下も50年代、40年代の年号が並ぶ。13本の同率5位には13人が並んでいるがこの内3人は40年代で5人が50年代。近代野球と呼べるのは1997年の松井稼頭央(西武)、2003年の村松(ダイエー)、2009年の鉄平(楽天)、2014年の西川(日本ハム)だけだ。
今季のオコエは75打数で三塁打は2本。年間フル出場したとして550打数に換算しても約15本だから記録更新には少し足りない。だが、打数に占める三塁打の割合ではなく、安打数における三塁打の割合と考えると話は変わる。今季放った15安打の内訳は単打が9本、二塁打が3本、三塁打が2本、本塁打が1本。年間150安打を打てる主力へと成長すれば三塁打数も単純に10倍して20本。本人はトリプルスリーを目標に掲げているが、その前に60年以上破られていなかったプロ野球記録を塗り替えるかもしれない。しかもまだまだ本格的に木製バットを握って1年足らずの高卒ルーキー。成長曲線の描き方次第では二度と破られないような金字塔を打ち立てる可能性すらある。
守備力はすでにゴールデングラブ級
ドラフト前から走塁だけでなく守備もプロの1軍で十分通用すると評価されていた。実際、ここまで評判通り25試合、55度の守備機会で無失策。守備率100%だ。しかも守備の優秀さを示すデータはこれだけではない。守備率がどれだけ失策をしなかったか、という正確性を表すのに対しどれだけアウトに関与したか、という守備範囲を示すのがRF(レンジファクター)という指標。追いつけるか追いつけないか際どい打球にチャレンジし落球してしまった場合、記録員の判断によって失策となることも安打となることもあるが、RFはアウトにしたかどうかという客観的な事実のみから判断される(本稿では守備イニングではなく試合数で計算した簡易版を使用)。外野手は2.0以上あれば優秀というのが目安となる。オコエの数値は2.20。これがどれほど凄いのか。今季規定試合数(チーム試合数×2/3)に到達している外野手でオコエを上回るのは広島・丸だけ。しかも数値は2.25だから全く遜色ない。ちなみに昨季ゴールデングラブ賞を受賞した6人の簡易RFは
パリーグ
柳田(ソフトバンク) 2.19
秋山(西武) 2.43
清田(ロッテ) 1.87
セリーグ
福留(阪神) 1.74
丸(広島) 1.95
大島(中日) 2.04
オコエの守備はすでにゴールデングラブ級だ。昨夏、日本で開催されたU-18ベースボールワールドカップでも好守でチームを救い、最優秀守備賞を受賞した。世界が認めた守備力をプロの舞台でも遺憾なく発揮している。