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井上尚弥、中谷潤人の未来のライバル、バム・ロドリゲスが寺地拳四朗らと対戦したゲバラと防衛戦

三浦勝夫ボクシング・ビート米国通信員
エストラーダをボディーでKOしたバム・ロドリゲス(写真:Boxing News)

11月9日フィラデルフィア

 米国軽量級のエース、WBC世界スーパーフライ級王者ジェシー“バム”ロドリゲス(24歳)の次戦が内定した。ロドリゲス(20勝13KO無敗)は11月9日、米国ペンシルベニア州フィラデルフィアでWBC同級暫定王者ペドロ・ゲバラ(メキシコ)と防衛戦を行う運びになった。同日はフィラデルフィアが地元のIBF世界ウェルター級王者ジャロン・エニス(米=32勝29KO無敗1無効試合)の防衛戦がメインイベントで予定される。

 世界的に権威があるとされる「ザ・リング」のランキングでスーパーフライ級のトップに位置し、パウンド・フォー・パウンド(PFP)ランキングで現在5位を占めるロドリゲスは、このWBC世界スーパーフライ級王座を獲得し2度防衛後、クラスをフライ級へ落とし2階級制覇に成功。同級で2団体統一王者に就くと、スーパーフライ級へUターン。今年6月、この階級の第一人者だったフアン・フランシスコ・エストラーダ(メキシコ)とのダウン応酬の激戦を7回KO勝ちで制して2度目の王座に君臨。ダイナミックなフィナーレでファンを魅了し、スターの座を不動にした。

 日本の帝拳ジムと契約するロドリゲスは将来、日本のリングで勇姿を披露する可能性が高い。プロキャリアを同じ108ポンドリミットのライトフライ級でスタートさせた井上尚弥(大橋=スーパーバンタム級4団体統一王者)、現在クラスが一つ上の中谷潤人(M.T=WBC世界バンタム級王者)との対決がすでにファンの関心を惹き付けている。

次はロマゴンを迎える?

 ロドリゲスには同じく帝拳ジムと契約を結ぶ“ロマゴン”こと4階級制覇王者ローマン・ゴンサレス(ニカラグア)との一戦が話題に上がっていたが、今回はゲバラが抜てきされた。ロマゴンは“バム”がエストラーダに挑戦する前、スパーリングパートナーを務めてサポートした。お互いに手の内を知っている同士のビッグマッチは興行的な面から日本で開催されるのではないかと推測される。もちろん7月に2年半ぶりに復帰して快勝したロマゴンの実力も侮れないが、もしバムがファンをエキサイトさせる印象的な勝利を飾れば今後、バムvs.日本人という刺激的なカードが続々と実現に向かうのではないだろうか。

ロドリゲスと師匠のロバート・ガルシア・トレーナー(写真:BoxingScene.com)
ロドリゲスと師匠のロバート・ガルシア・トレーナー(写真:BoxingScene.com)

 サウスポーのボクサーファイター、ロドリゲスの長所は自由自在なアングル取りだと思われる。相手を側面から打ち崩す術に優れている。百戦錬磨のエストラーダもフライ級で2団体統一戦を戦った曲者サニー・エドワーズ(英)もそれでやられた。その多彩なスキルに手数、スピード、パワーが加味される。アゴの骨折に耐え抜いて勝利を引き寄せた根性も見逃せない。井上がスーパーバンタム級に留まる間にバンタム級を越えてロドリゲスが挑戦することになれば、井上vs.中谷と並んで現状では軽量級最高の垂涎カードとなるだろう。

「ミスをしたら終わりだ」(ゲバラ)

 そんな強敵に挑むゲバラ(42勝22KO4敗1分=35歳)は当然ながら不利の予想が立つ。それでも5月、敵地の豪州でアンドリュー・マロニーを2-1判定で攻略して暫定王者に就いた勢いを持続してアップセットを目指す。

 すでにゲバラはメキシコシティ郊外のヒキピルコでキャンプを敢行している。同地では現在ライト級で4団体とも1位にランクされるウィリアム・セペダ(メキシコ)、IBF世界フライ級新王者アンヘル・アヤラ(メキシコ)らが調整中。そこで汗をかくゲバラは「バムはサウスポーで若い。でも私は老け込んでいるとは思っていない。彼と同じぐらいの歳で、クオリティも高い選手とスパーリングを重ねている。やっと大きなチャンスが訪れた。それでも緊張感をキープしながら同時にリラックスして臨める。長年、待ち望んでいた夢。でもミスを犯したら、それまでだ」と境地を吐露する。

ペドロ・ゲバラvs.アンドリュー・マロニー(写真:Mikey Williams/Top Rank)
ペドロ・ゲバラvs.アンドリュー・マロニー(写真:Mikey Williams/Top Rank)

 元WBC世界ライトフライ級王者ゲバラは2014年に八重樫東(大橋)をボディー打ちで倒して戴冠。2度防衛後、木村悠(帝拳)に2-1判定負けで無冠に。17年、王座を継承した寺地拳四朗(BMB)に挑んだが2-0判定負けでベルト奪回ならず。その後10連勝して元WBC世界スーパーフライ級王者カルロス・クアドラス(メキシコ)と同級暫定王座を争い3-0判定負け。だがクアドラスが負傷で返上した王座をマロニーとの決定戦で獲得した。

 さしずめゲバラは今、ロドリゲスを向こうに回して、井上尚弥と対戦を前にした相手のような心境だろう。モンスター同様、ロドリゲスは勝ち方、パフォーマンスが問われる試合。本場の軽量級の隆盛はしばらく彼の双肩にかかっていると言っても過言ではない。

ボクシング・ビート米国通信員

岩手県奥州市出身。近所にアマチュアの名将、佐々木達彦氏が住んでいたためボクシングの魅力と凄さにハマる。上京後、学生時代から外国人の草サッカーチーム「スペインクラブ」でプレー。81年メキシコへ渡り現地レポートをボクシング・ビートの前身ワールドボクシングへ寄稿。90年代に入り拠点を米国カリフォルニアへ移し、フロイド・メイウェザー、ロイ・ジョーンズなどを取材。メジャーリーグもペドロ・マルティネス、アルバート・プホルスら主にラテン系選手をスポーツ紙向けにインタビュー。好物はカツ丼。愛読書は佐伯泰英氏の現代もの。

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