増加傾向の小中学生のテレビゲーム時間と学力テストとの関係をさぐる

「ゲームは1日1時間」は有名だが、でも実際の平均は1時間半
子供達にとって魅力的な娯楽の一つが、スマホやゲーム機などによるテレビゲーム。その利用時間と、学力テストとの「相関」関係の実情を、文部科学省が2017年8月に発表した「全国学力・学習状況調査」(※)の最新版の公開値から確認する。
今調査の生活様式部分の結果によると、平日にテレビゲーム(パソコン(PC)や据え置き・携帯ゲーム機、従来型携帯、スマートフォンによるもの)を1時間以上遊ぶ人の割合は、小学生で55.1%、中学生で58.4%。この比率は年々増加しており、記録が確認できる2008年度以降では小学生は2013年度、中学生は2014年度で初めて過半数に達することとなった。直近年度では前年度比で小中学生共に増加している。


1日1時間以上遊ぶ人の割合、平均プレー時間共に漸増する傾向にある。中でも2014年度は小学生と中学生の順位が逆転している点でも注目に値する。今調査の調査項目には存在しないので断定はできないが、他の調査の結果などから勘案するに、スマートフォンの普及に伴い利用者・利用時間が大きく底上げされたようだ。
ちなみに「まったくしない」人の割合は、平均時間や1時間以上する人の割合で大きな変化が見られた2014年度以降、ほぼ横ばいに転じている。色々な意味で、2014年度は小中学生におけるゲームライフの転換点だったのだろう。

無論今件はあくまでも平日での話で、1割強の「まったくしない」人すべてがゲームそのものと無縁ではない。平日は禁止されているが土日には許可をもらえる事例もあるだろう。
因果関係では無いが、ゲーム時間が長い人は試験の正当率が低い
ゲームにかかわる技術進化や関連機器の普及のような環境の変化と共に、ゲームで遊ぶ時間が長くなる、遊ぶ人が増えるのは世の中の流れであり、押しとどめるのは難しい。しかしそれと共に保護者の立場にある人は、「遊び過ぎて勉強しないのでは」と気にすることだろう。
次に示すのは、平日にテレビゲームをする時間区分別に、学力テストの平均正答率を示したもの。グラフタイトルにもある通り、あくまでも相関関係を示したものだが、非常にきれいな形で「長く遊んでいる子供ほど、正答率が低くなる」結果が出ている。


朝食関連の話でよく話題に上る「朝食をしっかりと食べるとテストの成績が良くなる」ではなく「朝食をしっかりと食べるような、規則正しい生活をしている子供は、必然的に勉強にも規則的に取り組むようになるので、テストでは良い成績を取る傾向が出る」のように、今件もまた、あくまでも相関関係を表したにすぎず、因果関係を証明したわけでは無い(生真面目さやスケジュール感覚といった交絡因子が勉強への注力やその成果による成績の良し悪しと、ゲームをする時間の双方に作用しているものと考えられる)。つまり「ゲームのし過ぎはテストの成績を悪くする」との証明にはならない。
しかしながら平日で1日4時間以上もゲームで遊んでいれば、その他の行動時間は圧迫されるのは必然。それが睡眠の時間か、勉強の時間かまでは個々の事情によるが、いずれにせよ勉学にとってマイナスとなることは容易に想像ができる。
最終的には保護者の、あるいは保護者と子供との間の話し合いなどで決めることではあるが、平日における「ゲームで遊ぶ時間」については、検討が必要となるかもしれない。
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※全国学力・学習状況調査
2017年4月18日、国公立及び私立の小中学校に対し悉皆調査方式(標本調査ではなく全体を調べる)で行われたもので、実施学校数は小学校が1万9645校、中学校が9982校。教科調査(学力テスト)は国語A・Bと算数(数学)A・Bが実施されている。なお直近年度となる2016年度は熊本地震により、熊本県の全校や宮崎県、大分県の一部の学校で同一期日での調査実施が見送られている。
(注)本文中の各グラフは特記事項の無い限り、記述されている資料を基に筆者が作成したものです。