アメリカでも進む新聞離れの実態
情報取得手段の多様化などから新聞の購読者数・発行部数は減少を続けている。似たような状況はアメリカ合衆国でも起きているのだろうか。同国の民間調査機関Pew Research Centerが2015年4月に発表した、メディア関連の調査報告書「State of the News Media 2015」から、その実情を確認していく。
次のグラフはアメリカにおける世代別に「昨日、日刊の新聞(有料で紙版と同様の内容を持つ電子版も含む)を読んだか」との問いに「はい」と答えた人の割合を示したもの。これは実質的に常時購読しているか否かを尋ねていることになる。
若年層ほど新聞を読まず、歳を経るにつれて購読率が高まるのはアメリカでも同様の話。そして年々購読率が減少していくのも変わらない。
有料電子版が含まれているとしても、ニュースの取得の場としてポータルサイトのニュースダイジェスト版の配信に加え、ソーシャルメディアが闊歩するようになり、そちらの閲読で用を済ましてしまう事例が増えたことも小さからぬ要因と考えられる。
やや該当期間は狭いものとなるが、世帯年収別の動向も似たようなもの。
高年収ほど新聞購読率が高く、低年収ほど低い。そしてどの属性もほぼ一様に購読率は低下している。「金銭的にツラくなりつつあるので、新聞購読率が次第に下がるのでは」との発想も、高年収層でも大きな下落を示していることから、正しい解釈とは言い難い。また概して世帯所得と世帯主年齢の高低は連動する傾向があるので、先の世代別と年収別が似たような結果を示すのも当然ではある。
なお年収と大よそ連動性のある学歴でも、「高学歴ほど高い購読率」「年代の経過と共に全体的に減少」の傾向を示している(ただし世帯主年齢と学歴との連動性は無い)。要は高学歴か高年齢ならば高年収の可能性が高く、同時に日刊新聞を読んでいる可能性が高いことになる。
日本では一部調査結果において、高齢層の新聞の購読率が上昇しているとの結果も出ている。しかし高齢層がニュース取得元として使用しやすい従来型メディアのうち、特にテレビの進歩発展が著しいことから、じきに今件アメリカと同じように、新聞購読率は全世代での減少を示していくと考えられる。実際そのような動きを見せる調査結果もある。
新聞の閲読率減退はニュース、さらには情報そのものの需要の低迷を意味しない。選択肢が増えたために分散が行われ、さらにより便利な媒体にシフトする人が増えているだけの話。もっとも新聞にも長所は複数存在するため、このままゼロに近づくまで下落するのではなく、ある一定水準で下落傾向にストップがかかるのではないだろうか。
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