NY金14日:低調な米指標を受けて続伸、根強い利上げ先送り観測
COMEX金12月限 前日比14.40ドル高
始値 1,168.20ドル
高値 1,189.90ドル
安値 1,162.50ドル
終値 1,179.80ドル
米指標が総じて低調な内容になったことをを受けて、一段と利上げ先送り観測が強くなっていることが金相場を押し上げた。
アジア株の軟化でアジアタイムから押し目買い優勢の展開になっていたが、欧州タイムには利食い売りが膨らんで前日比マイナスとなる場面も見られるなど、方向性を欠いた。ただ、ニューヨークタイムに入ると米指標が景気減速と低インフレを示唆する内容になったことで、早期利上げは難しいとの見方が再確認されたことが、ドル安連動でドル建て金相場を押し上げた。
米指標で特に注目を集めたのは、9月の生産者物価指数(PPI)が前月比-0.5%と大きくマイナスに落ち込んだことである。市場予測も-0.2%と低インフレ環境を想定していたが、それを大きく上回るマイナス幅を受けて、景気減速懸念のみならず低インフレ環境が利上げ着手を阻害する可能性が警戒されている。
加えて、9月米小売売上高は前月比+0.1%となり、市場予測の+0.2%を下回っている。自動車・同部品は+1.7%と堅調な状態が続いているが、それ以外の消費支出は抑制する動きが目立つ。ガソリンスタンドが-3.2%と大きく落ち込んでいるために見掛けの数値程には悪くないとの見方もあるが、少なくとも早期利上げ期待を高めることに寄与するような内容ではなかった。
リッチモンド連銀のラッカー総裁は、米雇用統計発表前後で自身の考えが余り変っていないと発言しているが、マーケットではなお利上げ着手に向けての確信が得られない状況が続いている。金市場に関しては、PGM市場とは違って新規の投機買いが膨らんでいることも確認されており、なお戻りを試す動きが優勢になっている。
基調としては金価格が改めて本格的な上昇トレンドを形成する必要性は乏しい。金融当局者の大半はなお年内利上げを支持する発言を行うなど、あくまでも利上げ着手の方向に変化は生じていないためだ。ただ、世界経済の減速が米経済の減速も促すカプリング傾向が強まる中、米金融政策環境は不確実性を増しており、金相場を売り込む動きは仕切り直しを迫られることになる。改めて値下がりするには当局者発言や経済統計などから利上げへの信認を高めていくことが要求されており、雇用統計発表から既に2週間が経過しようとしているが、現時点では米金融正常化プロセスに対する信認回復は実現していない。