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地球は175年間で最も暑い7月を記録した、とアメリカ気象機関

森さやかNHK WORLD 気象アンカー、気象予報士
(提供:イメージマート)

「地球はますます暑くなり、どこにいても誰にとっても危険になっている」

国連のグテレス事務総長がそう警告した通り、異常な暑さが地球を覆っています。今年6月までの13か月間、地球の平均気温が連続して各月の観測史上最高を更新しました。

先月7月については、分析機関によって若干の違いがありますが、NOAA(アメリカ海洋大気庁)は観測史上1位だったとし、ヨーロッパのコペルニクス気候変動サービスは観測史上2位だったと報告しています。

順位に違いがありますが、NOAAの計算では、先月の気温は昨年の7月よりも0.03度高く、コペルニクス気候変動サービスによれば0.04度低く、つまりその違いは非常に小さくて、統計誤差の範囲内とのことです。

観測史上もっとも暑い1日

先月はどのような月だったのでしょうか。特筆すべきは、過去最も暑い日が記録されたことです。

7月22日の世界平均気温は17.15度で、観測史上最高であるばかりか、過去10万年の間でも到達したことがないレベルだった可能性が指摘されています。

また地域別の気温は次の通りでした。

•アジア: 日本、中国、バーレーンで観測史上最も暑い7月を記録。インドの夜間の最低気温は史上最高となりました。

•ヨーロッパ: ギリシャ、ハンガリー、スロベニア、クロアチア、ブルガリアなどで記録的な暑さとなりました。スペイン・バルセロナにある、世界気象機関が「100年観測所」と認定した長きにわたる記録を持つ観測所でも、40.0度の新記録が出たほどでした。

•北米: デスバレーでは月平均気温が42.5度に達し、月平均気温として世界記録の可能性が出ています。ラスベガスでは6月から8月までの43日間連続で気温が40.5度を超え、これも最長記録となりました。

植林に適した場所はどこ?

写真:イメージマート

ところで、地球温暖化の原因であるCO2を減らすために植林することは、一般に良いこととされています。しかし場所によっては逆効果になる可能性がある、という論文が今年3月に発表されました。

雪原や草原のように、明るい表面は多くの太陽光を宇宙に反射しますが、木の葉は色が濃いので、多くの太陽光を吸収して地球上にとどめます。

そのうえで、植林を行う際には、草原のような明るい表面を暗い色のものに置き換えることが多いため、これが地球を温めてしまう可能性があるというわけです。なるほど、これは意外な事実だと感じました。

では、どこで木を植えれば効果的なのでしょうか。米クラーク大学のナタリア・ハスラー博士らは、それが一目でわかるような地図を作りました。

それによれば、アマゾンや東南アジアなどの湿潤な熱帯地域は理想的な場所である一方、中央アジアやアフリカの乾燥地帯や北米大陸の大部分などは、逆に地球を温めてしまう可能性があるといいます。

異常な暑さが地球を覆う中、気候変動への対策がますます重要になっています。持続可能な未来を築くために、科学的なデータを基にした戦略的な行動が求められています。

**参考文献**

1) 世界気象機関 "July sets new temperature records"

2)Carbon Brief "Guest post: Mapping where tree-planting has the greatest climate benefit"

NHK WORLD 気象アンカー、気象予報士

NHK WORLD気象アンカー。南米アルゼンチン・ブエノスアイレスに生まれ、横浜で育つ。2011年より現職。英語で世界の天気を伝える気象予報士。日本気象学会、日本気象予報士会、日本航空機操縦士協会・航空気象委員会会員。著書に新刊『お天気ハンター、異常気象を追う』(文春新書)、『いま、この惑星で起きていること』(岩波ジュニア新書)、『竜巻のふしぎ』『天気のしくみ』(共立出版)がある。

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