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ChatGPTをうまく使えないダメ上司3つの特徴 この「3つの力」が足りない!

横山信弘経営コラムニスト
ChatGPTは使えないな……(写真:アフロ)

AIの急速な進化により、ビジネスの現場でもChatGPTをはじめとする生成AIの活用が広がっている。

しかし、そのいっぽうでうまく使いこなせずに悩む上司も少なくない。それどころか「ChatGPTで調べたけど間違いが多い」「まだまだ使えない」と勘違いのレッテルを貼る声もよく耳にする。

なぜChatGPTをうまく使いこなせないのか? なぜChatGPTぐらい使えないと、ダメな上司と言われてしまうのか?

今回は、ChatGPTをうまく使えないダメ上司の特徴と、必要な3つの力について解説する。部下になめられない、馬鹿にされないためにも最低限のスキルや知識は身につけておこう。経営者や管理職の方はもちろん、若手社員の方々も、ぜひ最後まで読んでもらいたい。

■質問力が低い

ChatGPTをうまく使いこなせない上司の第一の特徴は、質問力の低さだ。

多くの上司が、検索能力と生成能力を勘違いしている。たとえばGoogleは検索キーワードに基づいて最適なページを探し出すことに特化しているが、ChatGPTは生成AIだ。質問に対してデータベースから情報を検索するのではなく、回答を「生成」するツールだ。そのため必ずしも質問に適した答えにたどり着けるとは限らない。

また、質問力の低い上司は「どんな質問でも一発で答えが出る」と期待してしまう。だから部下に対しても次のようになる。

「この前の商談はどうだった? うまくいきそうか?」

と質問して、

「この前の商談とは、どの商談でしょうか?」

と返されると、

「おいおい。今力を入れなくちゃならない商談といったら一つしかないだろう。イチイチ言わなくちゃわからないのか?」

と難癖をつける。自分の質問力が低いことを棚に上げて、部下のせいにするのだ。ChatGPTに対しても同じ。

「『建設業界の未来について教えてください』って指示したら、まったく参考にならない答えが返ってきた。ChatGPTなんて、まだまだ使えないな」

こんなレッテルを貼ってしまう。

具体的で明確な質問を心がけることも大事だが、何よりも重要なのは必要に応じて複数回の対話を重ねることだ。部下と「問い」を重ねて対話できない上司は、このようなクセがある。

■仮説力が低い

二つ目の特徴は、仮説力の低さである。ChatGPTは人間の代わりに考えてくれるツールではない。むしろ人間が立てた仮説を検証したり、その仮説からアイデアを膨らませたりするのに適したツールだ。

仮説力の低い上司は、ChatGPTに丸投げしてしまいがちだ。「新規事業のアイデアを出して」と言っても、具体的で実現可能なアイデアは出てこないだろう。まずは自分で仮説を立て、それをChatGPTに投げかけることが重要だ。

たとえば、

「あなたはビジネスモデル構築のプロフェッショナルです。当社の強みである配送網を活用した新規事業として、生鮮食品の即日配送サービスは実現可能でしょうか? 当社の歴史、事業、組織体制と、この5年間のデータも記載します。そのうえで考えられる課題と解決策を教えてください」

このような指示をすることで、より深い洞察を得られる可能性がある(あくまでも可能性だ)。そしてChatGPTが出した考察に基づいて、

「書き忘れましたが、●●のスキルを持っていない社員がほとんどです。その場合、どのような課題がありますか?」

「当社のお客様の事業規模と主な業種、その数をリストに記載しました。このリストを確認したうえで考えられる課題とその解決策を教えてください」

このように質問や指示を繰り返す。そうすることで仮説の精度はアップしていくだろう。自分の頭で考えた仮説をChatGPTに投げかけ、そこから新たなアイデアを得るという使い方が効果的だ。

■検証力が低い

三つ目の特徴は、検証力の低さである。

生成AIには「ハルシネーション」と呼ばれる現象がある。ハルシネーションとは、AIが実際には存在しない情報を創作してしまうことを指す。そのため得られた回答を鵜呑みにせず、必ず検証する姿勢が重要だ。

検証力の低い上司は、ChatGPTの回答をそのまま鵜呑みにする。「AIが言っているんだから間違いない」と思い込んでしまうのだ。これは非常に危険だ。ChatGPTの回答はあくまでも参考情報の一つとして捉え、他の情報源と照らし合わせて検証しなければならない。

前述した通り、生成AIは「検索」ではなく「生成」するツールだ。どの情報源をもとにして生成しているのかも分かりづらい。

仮説力と検証力はセット。検証力をアップしたければ、まずは仮説の精度を上げる努力をしよう。

■ChatGPTを使いこなすためのポイント

ここまではChatGPTをうまく使えないダメ上司3つの特徴を見てきた。では、どうすればChatGPTを効果的に活用できるのか。

まずは質問力。質問力を高めるためには、具体的で明確な質問を心がけるべきだ。

曖昧な質問ではなく、「いつ」「誰が」「何を」「どこで」「どのように」「どのぐらい」といった4W2Hの疑問詞を使って質問を繰り返そう。これは部下育成するときも必要な心掛けだ。

次に仮説力。仮説力を高めるためには、日頃から情報収集と思考のトレーニングを欠かさないことだ。

仮説を立てる拠り所はいつも「ファクト」でなければならない。一次情報となるデータをどこから収集するのか。そしてそのデータに基づいて誰の意見(二次情報)を聞くべきか。日々、一次情報と二次情報を使い分けながら、常に「こうなるのではないか」という仮説を立てる習慣をつけよう。

最後に検証力。検証力を高めるためには、批判的思考(クリティカルシンキング)を養うことだ。

ChatGPTの回答はもちろんのこと、ネットで検索した情報でさえも鵜呑みにせず、「本当にそうなのか?」「他の可能性はないのか?」と常に疑問を持つ姿勢を大切にしよう。

ChatGPTは非常に強力なツールだ。使えば使うほど、質問力、仮説力、検証力を磨くことができる。しかしこれら3つの基礎力がないままだと、素晴らしい恩恵を得ることは難しいだろう。部下のマネジメントにも苦労するはずだから、日々の能力開発(リスキリング)に力を入れることを強くお勧めする。

経営コラムニスト

企業の現場に入り、目標を「絶対達成」させるコンサルタント。最低でも目標を達成させる「予材管理」の理論を体系的に整理し、仕組みを構築した考案者として知られる。12年間で1000回以上の関連セミナーや講演、書籍やコラムを通じ「予材管理」の普及に力を注いできた。NTTドコモ、ソフトバンク、サントリーなどの大企業から中小企業にいたるまで、200社以上を支援した実績を持つ。最大のメディアは「メルマガ草創花伝」。4万人超の企業経営者、管理者が購読する。「絶対達成マインドのつくり方」「絶対達成バイブル」など「絶対達成」シリーズの著者であり、著書の多くは、中国、韓国、台湾で翻訳版が発売されている。

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