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年末繁忙期に「休み方改革」で5日間休む若手社員 ワンオペ上司たちの悲鳴とは?

横山信弘経営コラムニスト
(提供:イメージマート)

「子どもの初めてのクリスマスですから、家族と過ごしたいんです」

12月に入り、このような上司からの要請を断る若手社員が増えている。

「休み方改革って言うじゃないですか。課長も、もっと休んだらどうですか?」

政府主導の「休み方改革」が普及し、職場の繁忙期に休みを取る若手と、それを止められない上司との間で軋轢が生まれている。

とくにワンオペ(一人作業)を強いられる上司の悲鳴が聞こえてくる。年末年始の休暇取得について、上司と部下との間でどのようなバランスをとるべきなのか。現場を任されているマネジャーはぜひ最後まで読んでもらいたい。

■休み方改革のメリット・デメリット

休み方改革とは、休暇が同時期に集中している状態を見直し、休みの分散化や有給休暇の取得促進など、働く人が休暇を取りやすい環境を作る取り組みだ。2019年4月の労働基準法改正により、年10日以上の有給休暇が付与される労働者に対して、年5日は有給休暇を取得することが義務化された。

休み方改革のメリットは、労働者の心身の健康を保ち、適度なリフレッシュで業務効率を上げられることだ。

しかしデメリットもある。職場のオペレーションを考えず、個別事情で休まれてしまうケースもあるからだ。とくに年末の繁忙期に休みを取られると、特に小売業、運送業、飲食業などの現場マネジャーは苦労する。

ある電機メーカーの生産管理課長は、昨年末、頭を抱える事態に遭った。年末の在庫一斉棚卸し、取引先への納期調整など、年間で最も神経を使う時期を迎えたときに、入社2年目の部下が5日間の休暇を申請したのである。

「5日間の取得義務がありますから」

と部下は言うのだ。課長は

「何も、年末に取ることはないだろう。1月や2月に取得しても間に合う」

こう伝えたが、部下はかなり渋ったという。交渉の末「5日間」ではなく「3日間」に減らしてもらったが、それでも年末の繁忙期に部下がいないのはキツイ。

この課長は自分の業務に加えて、部下が担当していた製造ラインの品質管理や部品発注までカバーしなければならなかった。

■年末の繁忙期に休みをとられるとなぜ問題か?

運送業でも同様の問題が起きている。

ある小さな営業所の所長は通常の配送管理に加え、年末年始の配送量増加への対応、新年度の配送ルート見直しなど重要な業務を抱えていた。しかも中堅社員が辞めてしまい、若い部下と2人で現場を回している状況だ。だからこの若手までが休暇を取ると、事務作業をこなしながら配送に出なければならないことになる。しかし、

「親が、どうしても年末は一緒に過ごしたいと言っているので」

と言って譲らない。

「10年ぶりに中学時代の同窓会があって、その幹事もやってますから」

と、年末年始の5日間を休むと言う。

この部下は昨年も年末に休暇を取っている。このままでは、年末年始の繁忙期の「さばき方」をいつまで経っても覚えない。上司はそのことにも強い危機感を覚えるという。

■休み方改革もいいが職場のことも考えて休むべき?

病気などの突発的な事情で休むのならともかく、「休み方改革」の一環で繁忙期に休みを取る人は職場全体のオペレーションを確認すべきだ。

実務経験が乏しくても、リソース配分を考えた調整ぐらいは誰でもできる。それができていない部下がいれば指摘すればいい。繁忙期に休むかどうかは別にして、適切な調整はスキルなど必要のないことなのだから。

もちろん若者が傍若無人であるわけではなく、上司がキチンと啓蒙しないことも問題のひとつかもしれない。上司は

「常識的に分かるだろう」

といった思い込みはやめて、日ごろから腹を割って対話することだ。部下も、

「言われてみればそうですね。配慮が足りませんでした」

と素直に受け入れてくれるケースもある。

休み方改革は、健康的な職場環境を作るために欠かせない取り組みだ。だからこそ負担の大きい上司にこそ意識して活用してほしい制度だと筆者は考えている。ワンオペ上司が病気になったら組織が成り立たなくなることもあるのだから。

経営コラムニスト

企業の現場に入り、目標を「絶対達成」させるコンサルタント。最低でも目標を達成させる「予材管理」の理論を体系的に整理し、仕組みを構築した考案者として知られる。12年間で1000回以上の関連セミナーや講演、書籍やコラムを通じ「予材管理」の普及に力を注いできた。NTTドコモ、ソフトバンク、サントリーなどの大企業から中小企業にいたるまで、200社以上を支援した実績を持つ。最大のメディアは「メルマガ草創花伝」。4万人超の企業経営者、管理者が購読する。「絶対達成マインドのつくり方」「絶対達成バイブル」など「絶対達成」シリーズの著者であり、著書の多くは、中国、韓国、台湾で翻訳版が発売されている。

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