オホーツク海に一番近い駅「北浜駅」が今年で百周年の地元企画。
JR北海道の釧網(せんもう)本線(釧路-網走)の北浜駅はオホーツク海に一番近い駅として観光客に人気のスポットで、昭和の国鉄時代からテレビや旅行雑誌で紹介される有名な駅ですが、この北浜駅が今年めでたく百周年を迎えることとなりました。
これを記念して網走市と地元で鉄道を盛り上げるために活動しているMOTレール倶楽部が共同企画として北浜駅の駅名標をリニューアルし、昨日お披露目会が開催されました。
北浜駅が1984年に無人駅になった後、1986年からこの駅で喫茶室「停車場」を開いている藤江良一さんに、鉄道フォトライターの矢野直美さんから花束の贈呈。
花束贈呈、除幕式に続いて矢野直美さんと関係者の皆様方がテープカットです。
写真左からMOTレール倶楽部代表の石黒明さん、イラストレーターの鈴木周作さん、「北浜駅をイメージした楽曲」を作曲された上野利幸さんです。
イラストレーターの鈴木さんは札幌で活躍する水彩画家。30年ほど前に北浜駅のイラストを描いたことが会社員からイラストレーターに転身されるきっかけになられたとか。作曲家の上野さんは1980年代のテレビゲーム「オホーツクに消ゆ」の楽曲を作られた方で、今回、新しいBGMをお披露目されました。
昭和の時代の北浜駅
ところで、今回設置された北浜駅の駅名標に通行証と書かれた大きな貝殻が取り付けられているのにお気づきでしょうか?
北浜駅は1924年(大正13年)に開業し今年で百周年を迎えますが、昭和50年代になるとモータリゼーションの波に押され、ご多分に漏れず利用者が減り始めました。そこで、当時の駅長さんが、目の前の海岸にたくさん落ちていた北寄貝の貝殻で何かできないだろうかと考えて、手作りで作り始めたのが貝殻の「通行証」で、国鉄時代は旅行者に駅の記念きっぷセットを販売し、貝殻で作った通行証を差し上げることで増収を図っていたものです。
昭和の国鉄時代の北浜駅の駅名標と当時販売されていた記念きっぷ、そして貝殻の通行証です。
その後、駅は無人駅化されましたが、前出の藤江さんが駅舎を利用した喫茶室を40年近く継続して営業されていますので、北浜駅百周年の最大の功労者は藤江さんということになるかもしれません。
観光列車「流氷物語号」運転中
この北浜駅を通る釧網本線の網走-知床斜里間にはこの冬も観光列車「流氷物語号」が1日2往復運転されています。
この流氷物語号は乗車券だけで利用できる観光列車ということもあって、厳寒期の流氷観光の一つの目玉にもなっています。
この週末も網走駅では改札前にこんなに行列ができるほどの人気ですが、興味深いのは、2両編成の列車のうち、流氷が見える海側の座席が指定席になっているということ。指定席料金530円をお支払いいただくと、混みあう人気列車でも座席が確保できるという安心感があります。
そして、網走から知床斜里の往復行程のうち、往路の知床斜里行では北浜駅で10分間停車。復路の網走行では道の駅が併設されている浜小清水駅で20分間停車するなど、ちょっとした途中下車気分を味わえるダイヤ設定です。
また、流氷物語号の車内では今年も地元MOTレール倶楽部の皆様方がこの観光列車を盛り上げるために車内で観光案内や記念グッズなどの販売を行っています。
おもてなし感も満載の観光列車です。
この週末の気温は氷点下10度。
凍てつく旅路も地域の皆様方の温かいおもてなしと触れ合うことで、なんだかほっこりできる。そんな手作り観光列車が流氷物語号です。
流氷物語号は2月25日までの毎日と3月1~3日の運転です。
今年はすでに流氷が着岸してこの週末は車窓から流氷を眺めることができました。
経営が厳しいJR北海道が地域と一緒になって運営する観光列車「流氷物語号」と北浜駅を、ぜひ皆さまご声援いただければと思います。
北浜駅の開業は1924年11月15日です。
今回は冬の観光シーズンに合わせて網走市とMOTレール倶楽部が共同企画として駅名標を設置しましたが、本番の11月の百周年に向けて、JR北海道がどのような百周年企画や増収イベントを地域とともに打ち出してくるか、今から楽しみですね。
皆様方にもご注目いただき、釧網本線や北浜駅を一緒に盛り上げていけたらいいと考えます。
【参考」
※本文中に使用した写真は昭和の時代も含め、筆者の友人で札幌市在住の大熊一精氏の撮影、提供、およびMOTレール倶楽部の提供によるものです。