『のだめカンタービレ』出演の有澤樟太郎、スカウトされるため原宿で敢行した驚きの作戦とは⁉
ハイパープロジェクション演劇『ハイキュー‼』、ミュージカル『刀剣乱舞』など2.5次元の世界で活躍し、『GREASE』、『ジャージー・ボーイズ』、舞台『キングダム』といった話題作に次々と出演している有澤樟太郎さん。現在上演中のミュージカル『のだめカンタービレ』、次回作のミュージカル『ジョジョの奇妙な冒険 ファントムブラッド』と注目度抜群の作品が続きます。デビュー前には、東京・原宿、大阪・梅田でスカウト待ちをした過去も。稽古場での衝撃話を披露します。
―デビューからコンスタントに出演が続いていますね。
本当にいい状況が続いているとは思いますが、今が一番いい時期だとは思いたくはないです。今まで出演させていただいた作品は、すべて演出家・共演者・脚本家の方、カンパニーが素晴らしくて、財産に残るような作品ばかりです。毎回代表作ができていくようで、しっかり積み上げていきたいです。
―そして今回は『のだめカンタービレ』です。
聞いた瞬間に“峰龍太郎”役だな、と思いました。ドラマでは永山瑛太(当時・瑛太)さんが演じていて、金髪・派手・明るい、と自分の中でもイメージできる役柄で、すぐに「やりたい!」と手を挙げました。
『GREASE』で共演した三浦宏規さん、演出の上田一豪さんが今回も一緒で、いつも共演者、演出家の方たちとの出会いはとても大事にしているので、名前を聞いて安心しました。
宏規はふわふわして見えるけど、超優等生なのですべてを高いレベルでできるんです。努力もあるかもしれないけど、才能・センスが素晴らしくて、この仕事をするために生まれてきた人です。
―有澤さんはどんなタイプですか?
僕は“緩衝材”ですね(笑)。子供から年配の方まで、誰とでも仲良くなります。人の話を聞くのが好きだから、いろいろな人に話を聞きに行っちゃいます。
―舞台では声がよく通りますね。
学生時代は野球部に所属していて、とにかく「声を出せ!」と言われて、気合と声だけでやってきました。それでも声を潰すことがなかったので、今の発声は野球で培ったものだと思います。完全に体育会系なので、今回の課題は、文系である音大生役をどういうテンションで演じるかです。
―野球少年がこの世界に入ったきっかけは?
同じマンションに住んでいる方から薦められて、雑誌のオーディションを受けました。そうしたら中途半端なところで落ちてしまい、「悔しい」と火がついたんです。
特撮・テレビ・映画が好きだったので、どんどんオーディションを受けるようになりました。「原宿・竹下通りでキャリーバッグを持って歩くとスカウトされる」という話を聞いて、高校1年生の時に夜行バスで東京に出てきて原宿を歩きました(笑)。
―成果はありましたか?
怪しい読者モデルの誘いとか、ホストみたいな人に声をかけられて名刺をもらいました。1人で歩いているのに「お母さん、エステティシャンですよね?」という謎の声かけはされるし、大阪・梅田でも同じでした。結局、有益なものはありませんでしたね(笑)。
最終的に、自分はスカウトされるタイプではないと悟り、俳優養成所に入りました。考えてみれば自分は何も知らないし、一から学ぼうと思い直したんです。
高校3年生から1年続けたところで、今の事務所に「まだ事務所入りは確定ではないけど、合いそうな役のオーディションがあるので、どう評価されるのか見てみたい」と言われました。それが『ハイキュー‼』というバレーボールがテーマの作品。僕は、野球の他にバレーボールもやっていたし、背も高かった(現在184cm)ので「これしかない」と思って受けたら、それが決まってデビューになりました。
―苦労はありましたか?
始めた当時は、背が高いせいか大人っぽい役を演じることが多くて、「いるだけで存在感がある役」はかなり苦戦しましたね。それまではただの高校生だったので、人生経験がないことをハンデに感じて悩みました。
―『のだめ…』の現場はいかがですか?
上野樹里さん、竹中直人さん、なだぎ武さんは『のだめ…』の映像版キャスト。宏規に加え、内藤大希さん、竹内將人さんは『レ・ミゼラブル』でマリウス役を演じた3人で、ミュージカルがホーム。それぞれの主戦場、舞台と映像が融合する形で、新鮮な風が吹いています。
―上野樹里さんの印象は?
想像していた人とは違いました。もっと静かな人かと思ったら、好奇心旺盛でおしゃべり好きで、可愛らしい人ですね。
皆と仲良くなって「ホームパーティーしようよ!」と言ってくれるので、心を許してくれているのかなとうれしくなります。差し入れもたくさんしてくれて、ハンバーガーやチキンをいただきました。
そして“のだめ愛”が強い!説得力がスゴイし、感受性が豊か!皆の歌を聴いて「めちゃくちゃいい歌だ」と涙ぐんでいるんですよ。そんな方が座長なので、爆発力を秘めた素晴らしい作品になると思います。
―竹中さんはいかがですか?
あの方はヤバイです!パワーがすごくて面白すぎます。アドリブもバンバン入れるのに役とマッチしていて、カタコトの日本語が上手!竹中さんという今まで出会ったことのないタイプの方に出会えたことが本当に貴重です。
急にデコピンしたり、僕のサラダチキンのパックを勝手に僕のリュックに入れたり。皆でラーメンの話をしていたら近くでそっと聞いていて、2時間くらいしてからその話題の続きをしたりして(笑)、毎回ビックリします。
歌もお上手で声の迫力もすごい、ザ・演劇人。めっっっちゃ面白い方です!初めて見る人も、当時映像で見ていた人も、絶対笑いに包まれます。
―お二人は映像版とは違いますか?
最初に読み合わせをした時は、本物すぎてニヤけました。竹中さんは、動きから表情まで全身が面白すぎて、映像版以上だと思います。他のキャストも皆キャラクターが濃いです。
―有澤さんの“峰”はどうなりますか?
見た目が派手で、クラスに1人いたな…みたいなヤツです。実際に金髪にしようと思っています。中身は、僕も友達が多いタイプなので自分に近いかな。皆のことを親友だと思って「心を通わせられた!」と満足して(笑)、すぐ人のことを信用します。
演出の一豪さんからは、「野球部だ」とか「『キングダム』が残ってる」とか言われていまして、音大生になるべく頑張っています。
舞台では本物のオーケストラの方たちと一緒に演じるので、1人だけ素人が入っている感じに見えないように皆、毎日身体が痛くなるまで練習しています。僕はバイオリン担当ですけど、弾いているように見せるだけで大変です。
稽古場でプロの音を聴くとあんなに綺麗なのに、自分でやると「キーーーー」みたいなひどい音。かなりの不協和音になりますから、毎日その音を鳴らしながら練習しています。
―目指すところは?
『のだめ…』で有名なベートーベンの交響曲第7番で、「デー♪」というバイオリンから始まる最初の1音が、とてもカッコイイんですよ。その1音をきちんと出すだけでも相当練習しないといけないので、その音を出すことを目標にします。朝はロック、夜はクラシックを聴いて、モチベーションをコントロールしています。
―来年はミュージカル『ジョジョの奇妙な冒険 ファントムブラッド』で帝劇初主演も決まりました。
帝劇・ジョジョ・主演、に驚きました。ハードになると思いますし、皆さん原作愛が深いです。
体作りは徐々に始めています。舞台『キングダム』の時に筋トレをして10kg増量しましたが、公演後4kg落ちたんです。大きくできないと思っていたけどやればできたので、今回は『キングダム』以上に大きくしたいなと思います。食事、トレーニング、生活習慣をどれだけ変えられるかが勝負です。
―今後の目標は?
1作品ずつ、より充実した時間にすること。稽古も本番も集中して、いい人に出会いたいです。舞台は様々なジャンルがありますけど、最近は融合されている感じがしています。
例えば、歌舞伎俳優の尾上右近さんが出ているからミュージカル『ジャージー・ボーイズ』を観に来たとか、何かをきっかけに違うジャンルから観に来てくれる人が増えているように思います。『のだめ…』だと原作ファン、映像視聴がきっかけで舞台に足を運んでくれる方もいるでしょうから、舞台の良さを伝えていきたいです。
【編集後記】
舞台上でのハジけた演技、キャストがそろった取材会など、積極的に場を引っ張るイメージがありましたが、ゆっくりお話を聞くと、観察力に優れ、他人も自分も客観的に見ることができる落ち着いた方だと感じました。共演者・スタッフへの尊敬を素直に口にし、皆で一つの作品を作り上げようとする姿勢は野球部で培ったものでしょうか。有澤さん、グループに1人いてほしい人です。
■有澤樟太郎(ありさわ・しょうたろう)
1995年9月28日生まれ、兵庫県出身。2015年、ハイパープロジェクション演劇『ハイキュー‼』でデビュー。2016年、ミュージカル『刀剣乱舞~幕末天狼爆~』でミュージカル初出演。以降、『GREASE』、『ジャージー・ボーイズ』、舞台『キングダム』、舞台『セトウツミ』など話題作に出演。
ミュージカル『のだめカンタービレ』は東京・シアタークリエ(10/3~29)、長野・サントミューゼ(11/3~4)にて上演予定。ミュージカル『ジョジョの奇妙な冒険 ファントムブラッド』は東京・帝国劇場(2024/2/6~28)、北海道・札幌文化芸術劇場hitaru (3/26~30)、兵庫県立芸術文化センター KOBELCO大ホール(4/9~14)にて上演予定。
<配信情報> ミュージカル『のだめカンタービレ』ライブ配信決定。千秋楽10/29(日) 13:00 アーカイブあり。