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ACL浦和-全北戦 韓国メディアは「試合後、両チームに拍手」 浦和の応援が再びインパクト

(写真:YUTAKA/アフロスポーツ)

大事なところを持っていかれずに済んだ。ここ1年半の代表レベルでの日韓戦の結果は全勝、しかも合計スコアは「17-0」。しかし、このACL準決勝という「大一番」で敗れたなら――。

そんなことはどうでもよいくらいの熱戦だった。25日に行われたACL(アジア・チャンピオンズリーグ)セミファイナル浦和レッズ―全北現代モータース戦のことだ。

延長戦で1点ずつを奪い合い、最後はPKで勝敗が決したこの試合は、この試合としてのオリジナルの良さがあり、熱狂があった。

写真:YUTAKA/アフロスポーツ

韓国側も熱戦に心を打たれたようだった。

昨日の試合には、ソウルの2媒体から記者が派遣され、現地取材した。そのうちのひとつ「OSEN」はこう報じた。

「すべてを尽くした闘魂 全北、浦和の拍手を受けながらピッチを去る」

日本相手の敗戦。本来なら強い批判口調が出てもよさそうだが、そうはならなかった。

同媒体は全北が「3戦連続の延長戦だった」点、そして「最後には、体力的にピッチに立てる選手を送るしかなくなった」ことに触れ、記事をこう続けた。

「浦和の観衆たちはピッチを去る全北たちに握手を求め、すべてが立ち上がり拍手を贈った。自らが応援する浦和の選手のみならず、ピッチでベストを尽くした相手を激励した」

同媒体は、さらにこの日のキム・ジンスのコメントを紹介した。

「浦和の観衆の拍手を受けたキム・ジンスは『スタジアムの雰囲気が本当に良かった。多くの人達が訪ね、応援をしていた姿に驚いた。韓国もそうなってほしい』と言い、さらに『もちろん選手がより努力してこそ、スタジアムに訪れてくれるというもの。選手が責任を負わなければならない。最後に浦和のファンが拍手を贈ってくれたのは、両チームがベストを尽くした姿に対してのものだと思う』と答えた」

写真:つのだよしお/アフロ

これまでも、浦和レッズサポーターの姿は韓国に大きなインパクトを与えてきた。韓国への"初上陸"は2007年9月26日。ACL準々決勝第2レグで、このときも対戦相手は全北現代だった。当時の全北フロントスタッフは「前売りでアウェー席のチケットが4000枚売れた」とメディアに話した。同国ACL史上、ありえないほどのアウェーサポーターの数だった。さらにこの年のこの日は、韓国の旧盆と重なったため、浦和側には「かなり早めに国内の交通手段を抑えないと大変なことになる」とアドバイスしていたという。

その後9回(つまり計10回)韓国でのアウェーゲームを戦い、11回のホームゲームを戦った。

2017年のラウンド16、済州ユナイテッドによる「乱闘事件」といった出来事もあった。韓国の記者仲間と当時よく話したのは「初出場のクラブが浦和のホームの応援を見て驚いたのでは」ということだった。ずっと近くで見たことのない大声援を経験して、ストレスを感じ、ああいった出来事につながった。まあ今となれば「伝説」の一つだ。

韓国での試合が行われる際には、そのたびに「アウェージャック」といった報道が出る。一方で、韓国メディアが驚き、そしてはっきりと「スゴい」と認める点がある。

「多くの主婦やサラリーマンと思しき年齢層の人たちが、平日に休みを取ってまで海外を訪れ、応援している姿」。韓国では「サポーターは若い人たちがやるもの」というイメージもあるなか、幅広い年齢層が、そこまで熱心なのかと。

そして再び、2022年10月25日には「両チームに拍手」という姿が現地取材に訪れた記者の心に響いた。日本をライバル視する韓国のサッカー界。そのなかではっきりと相手の「スゴさ」と認めるもの、これもまた浦和レッズの応援なのだ。

吉崎エイジーニョ ニュースコラム&ノンフィクション。専門は「朝鮮半島地域研究」。よって時事問題からK-POP、スポーツまで幅広く書きます。大阪外大(現阪大外国語学部)地域文化学科朝鮮語専攻卒。20代より日韓両国の媒体で「日韓サッカーニュースコラム」を執筆。「どのジャンルよりも正面衝突する日韓関係」を見てきました。サッカー専門のつもりが人生ままならず。ペンネームはそのままでやっています。本名英治。「Yahoo! 個人」月間MVAを2度受賞。北九州市小倉北区出身。仕事ご依頼はXのDMまでお願いいたします。

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